全力で攻撃を出し終えたクウは、肩で息をしながらじっと床で横になるシャオを見ていた。
イリアによる夢の理の力か、思いっきり殴った影響か、シャオは倒れたまま動かない。
「ハァ――ハァ…!」
「終わった?」
「一先ずは」
タイミングを見計らってペルセが口を開くと、イリアが頷く。
ようやく戦いが終わった事に誰もが緊張を解くと、イリアと手を繋いでいた少女が駆け出した。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんっ!」
よほどシャオが心配なのか、少女は傍に駆け寄って身体に触れる。
その瞬間、少女の小さな手をシャオがパンと払った。
「触らないでよ…ボクを殺したくせに…」
「っ…!」
こんな状態でも冷たい態度で拒絶するシャオに、少女は身を震わせる。
少女の中で再び恐怖心が芽生えたのかその場に座り込む。だが、シャオは消そうとしない。いや、出来ないのだろう。既に夢の理はイリアが掌握しているのだから。
「あなた達も薄々感じている筈だ。これからどうすればいいか」
そのイリアが、二人のやりとりを見て突然そんな事を言い出した。
だが、三人はその言葉に黙って頷く。
これからどうすればいいか、理解出来ているから。
「いきなさい。二人が一番に望む方法を選びたいのだろう?」
「クウさん」
「分かってるよ」
イオンが声を掛けると、即座にクウは返事を返す。
そして、三人はシャオの傍で座り込む少女へと近づいた。
「そう、だよね…やっぱり、消えなきゃダメなんだよね…?」
「消える必要はないよ」
虚ろな瞳で譫言のように少女が呟くと、ペルセがやんわりと否定する。
同意するようにイオンも頷き、少女の肩に手を置いて話し出す。
「さっきも言った筈だよ。シャオはそんな事を望んでいない。そこにいるシャオは、君の罪悪感で作り出した幻影なんだ」
「げん、えい…?」
意味が分かってないのか、少女は目をパチクリさせる。クウも軽く頭に手を置くとポンポンと優しく叩く。
「早い話、このシャオはお前の思い過ごしだ。俺はお前の中にあるシャオの良心に助けられたんだからな。自責の念であるこいつの支配権の中で、確かに聞こえたよ――『助けて』って声がさ」
「たす、けて?」
呆然としながらも言葉を返す少女に、クウは大きく頷く。
心が壊れ、自分が何者か分からなかった時に助けを求めた声。あれは紛れも無くシャオの声だった。その際、レイアの姿も見た気がしたが…いや、そんな訳がないだろう。
それからイリアによって記憶を回復してくれた間に起きた事は、記憶を砕かれた影響かよく覚えていない。だけど、不思議とやり遂げた感が心にあるのだ。自分にとって良いと思う事をしたのだろう。
その事をクウが思い出していると、イリアも近づく。
「これが、この想いが偽物ならば。本物の想いは何処か? 答えは、この中に」
イリアが倒れているシャオへと手を伸ばすと、彼の姿が眩く光り始める。
「あっ…!」
少女が驚く間に、シャオから放たれた光が収束する。
すると、そこにいた筈のシャオは消えていて、代わりに小さな白い光が残っていた。その光を、イリアは右手でそっと掬い上げる。
「これはあなたが確かに取り入れた記憶の一部であり、自ら見る事を拒んで封印した思い出。シャオが刻んだ最後の記憶」
スッと手に持つ光を掲げるように、座り込む少女へと差し出す。
「本当にあなたを憎んで死んでしまったか、そうでないのか。これを見ればはっきりするでしょう」
この記憶は、言わば真実への鍵だ。そんな大事な記憶を差し出され、少女は身体を震わせて頭を抱えるように身を縮こませた。
「い…いや! 見たくないよ! だって、だって…お兄ちゃんが死んだんだよ! やくそく、やぶったから…! 言うこと、きかなかったから…わるい子だから…! だからぁ…!」
どれだけ説得しても、兄は恨んでいたのだと少女は頑なに信じて疑わない。それだけの事をやった罪の重荷と、自分を許せないと言う戒めからだろう。
そうして記憶から目を背ける少女の肩に、大きな手が乗っかった。
「――だったら、俺達も一緒に見てやる。それならいいだろ?」
「し、しょう…?」
温かな笑顔と優しさを向けるクウに、少女はポカンとしながら顔を上げる。
すると、イオンとペルセも同じように隣で少女に笑顔を向ける。
「一人じゃ怖い…でも、今は僕達が傍にいる」
「一緒なら平気。どんな気持ちだって分かち合える。だから、ね?」
「でも…でも…ッ」
一瞬だけ心が揺れ動くものの、少女は否定するように頭を強く振る。
しかし、クウは肩を掴み少女の顔を己へと向かい合わせる。そして、真剣な目をして少女に話しかける。
「怖いのは、誰でも一緒だ。でも、そ
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