古き傷痕と無数の鍵が残る荒野の世界――キーブレード墓場。
荒野の一角。吹き荒ぶ砂埃の中で、金と銀が混ざりあった一本の剣が突き刺さっている。異質さを感じる剣は、時折鼓動するように光り輝く。
そんな剣を、遠くからエンが腕を組んで眺めていた。
「ねぇ――まだχブレードにならないの? 心の扉は開いたのでしょう」
その時、背後から声が掛けられる。
振り返ると、苛立ちを露わにしているカルマが立っていた。
「予想以上にシルビアの抵抗が激しいんですよ。それでも、着々と融合は進んでいる」
「そう…で、どのくらい?」
「――まだ3分の1にも満たしていない」
更にカルマが問いかけると、第三者の男性の声が響く。
剣の刺さっていた場所に、若干銀が混じった金髪に白が斑に入った黒の外套を羽織った男性――アウルムがいた。疲れているのか顔には疲労の色が窺える。
「あら、人型になれるのね。で、あなたはアウルムの人格かしら?」
「融合はあくまでも均等な力で行う行為だ。そして契約はシルビアとの特殊な繋がり故に力を分け与える。邪魔になるものを取り除いたのはいいが…頑丈に心の扉を閉ざしている。多少時間がかかってしまうが、何時かは」
「待てないわ。折角全ての準備が整ったのに、これ以上待ってたら彼らが追いついてしまう。ねえ、どうにかしてシルビアの抵抗を排除できないの?」
説明を遮り、若干苛立ち交じりにカルマが問う。
だが、それも仕方ない。全てが手に入ったのはいいが、既に日にちも経っている。しかも偵察していたクォーツによれば、あちら側は削った戦力を取り戻す所か更なる力を手に入れ始めている。これ以上時間をかければ計画前に乗り込んでくる可能性がある。
しかし、計画を遅らせている本人であるアウルムは困ったように溜息を吐いた。
「それが出来ればそうしている。だが、こうも心を閉ざされては…」
「ふーん…」
打つ手なしとばかりにお手上げ状態のアウルムに、カルマが思考を巡らせる。
「アウルム、シルビアを表に出す事は出来る? 私が試してみるわ」
この申し出に、アウルムだけでなくエンも思わず視線を送る。
いつの間にかカルマは不敵な笑みを浮かべている。この表情に、アウルムは大きく頷いた。
「…面白い。ならばやってみろ」
直後、全身が光り輝き一瞬で少女の姿に変わる。表に出たシルビアは、アウルムと違い幾つもの光の輪で拘束されている。
更にアウルムと対極になっているのか、銀髪に金の色が染まっており、白い服も所々斑の黒に染まっている。
正に囚われた状態のシルビアは無表情のまま顔を俯かせている。そんな彼女に、カルマは真正面に立って話しかけた。
「ごきげんよう、シルビア。気分はどう?」
「…………」
「だんまり? いい加減に諦めなさい、楽になるわよ?」
全く身動ぎもしないシルビアの様子に、呆れたようにカルマが説得する。
すると、シルビアは僅かに口を開き出した。
「―――」
「ん?」
ボソボソとした呟きが聞こえ、不敵な笑みのままカルマが首を傾げる。
その時を狙ってシルビアは顔を上げると、目の前のカルマを睨みながら言い放った。
「――黙れ、仮面で皺くちゃの素肌隠してるいい歳したババアめ」
(ババ…!)
シルビアの口から放たれた暴言に、戦慄がエンの中で駆け巡る。
反射的に固まってしまうエン対して、カルマはと言うと。
「…………へぇ?」
張り付けた笑顔は引き攣り、額に青筋を浮かばせていた。
「が、はっ…!!」
強い力を受けたのか、身体のあちこちに黒い光が纏わったシルビアが地面に叩き伏せられる。
そんなシルビアに追撃とばかりに、握ったキーブレードに純白の光を宿すなりカルマが小さな背中を踏みつけた。
「自分が特別な存在だからって、いい気になってるみたいね? こんな子供の身体じゃ何も出来ないくせに」
「ぐぅ…うああああぁ!!?」
踏みつけるカルマからどうにか逃げようと身体を動かした瞬間、キーブレードに宿した光が雷撃となってシルビアの全身に襲い掛かる。
カルマにしてみれば減らず口を叩く輩にお仕置きしているのだろうが、他者から見れば一方的に子供を甚振っている大人にしか見えない。さすがにこの光景に耐えられず、エンが助け舟を出した。
「カルマ、止めてください。相手の思う壺です」
「思う壺? もういいわ、こいつを『Sin化』させれば全部解決する事じゃない」
「その『Sin化』も他者からの干渉に当たり、融合の妨害になるから使えないのでしょう」
「なら、こいつを甚振ってやるわ。消えた方がマシって思う程、徹底的にね…!!」
そう言いながら、ぐったりと倒れているシルビアにキーブレードを構える。
完
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