夢から覚めて最初に見た光景は、視界全体に広がったレイアの笑顔だった。
「クウさんっ!!」
頭が認識する前に、レイアが思いっきり胸元に抱きついてくる。
今まで寝ていた所為か身体も頭も反応がついて行かず、理解するのにワンテンポ遅れてしまった。
「…あ、レイア?」
「やっと起きたぁ…! 心配したんですよ…!」
声を震わせながらそう言うと、更に服を掴む手に力を込める。
本当に心配させていたのだと伝わり、クウは未だに寝ぼけながらもレイアの頭を軽く叩いた。
「悪ぃ…」
そうしてレイアを宥めながら、今の状態を確認する。
夢に行く前、睡眠薬を飲んで床の上で眠った筈だった。しかし、用意されたベットの上にいるのを考えると誰かが運んでくれたのだろう。
天井の明かりが点いているのを見て、まだ夜のようだ。自分達が寝てからまだ一日も経ってないのか。いや、レイアの態度からしたら何日も経っている可能性がある。
話を訊こうと尚も乗っかっているレイアに目を向けると、クウは一つの変化に気付いた。
「すぅ…すぅ…」
「レイア?」
「ずっと起きてたのよ、あなたが目覚めるまで」
俯いていたレイアの口から洩れた寝息に気付くと、頭上から声が飛んでくる。
声のした方に首を動かすと、夢の世界で一足先に戻っていたイリアが腕を組んでこちらを見ていた。
「イリア」
「気分…いえ、記憶はどうだ? 夢の権限を使って完全に修復はしているつもりだが」
この質問に、クウはあの世界でシャオによって心を壊された事だと思いつく。
軽く頭を押えて思い出を巡らせてみる。家族と過ごした子供の頃、闇の世界に落されてからの日々、組織を脱走してからの長い年月、そしてシルビアによって齎されたこの戦い……全て、かは分からないが覚えている。
「あー…よく分からない。まあ、大丈夫だろ」
とりあえず思った通りに答えると、イリアはそれ以上何も言って来なかった。
ようやく頭も冴え始め、改めて部屋の中を見回す。ベットで寝ているのは自分と向かい側にいるシャオ。この場にはレイアとイリアしかない。
イオン達の姿が見当たらず疑問に思っていると、心中を察してイリアが話した。
「イオン達なら既に部屋を出たわ。神無達が迎えに来てね」
「そうか。にしても…身体が無性に怠い…」
「一日以上眠っていたのだ、鈍って当然だろう。折角だ、風呂に入ってはどうだ? 身体は解せるし、夢の中で活動して疲労も溜まっているだろう」
「そうするか…サンキュー、イリア」
この助言にお礼を述べると、イリアは一瞥して部屋を出て行く。半神達の所へ行ったのだろう。
クウは起き上がると、まずは眠ってしまったレイアをベットに寝かせる。そして、次にシャオの隣にやってきた。
ここにいるのは紛れも無く“シャオ”だ。今も尚眠りに就いているのは、まだ決めてないのだろう。これからの生き方を。
「ツバサ、か…確かに俺が付けるような名前だな」
妹である少女の名前を思い出しながら、クウはシャオの頭を撫でる。
「一方は師匠、一方は名付け親か…どんな形であれ、こいつらと繋がっているんだな」
本来の師匠は彼らの世界のクウだ。なのに、自分にも同じ尊敬の念を向けている。いかにその世界の“クウ”が慕われていたか伝わってくる。
過去に酷い事をしても、辛い出来事が襲っても、確かに彼は次を担う子供達に受け継ぐ未来を手に入れている。この世界の無轟のように。
彼らにとって、自分は本当の“クウ”じゃない。そんな自分でも出来る事は、ある。
「待ってるぜ、二人共」
目覚めた時は『仲間』として、彼らを受け入れる。それだけだ。
同じ頃、ルキル達が眠っていた大部屋ではカイリ、ヴェン、アクア、テラが目覚めたリクと話をしていた。
部屋にいるのは彼らの他に髪色が銀髪に戻ったルキルが眠っているだけで、シーノ、ウィド、オパールの姿はない。
「でも良かった、皆が無事に戻ってきて! クウ達も起きたようだし、これでまた人数が揃うね」
「すまないな、心配かけて」
「気にしてないよ! それよりウィドもクウの事許し始めたんだろ? これなら新しい剣を渡しても大丈夫だよな!」
「新しい剣?」
意気揚々と話をするヴェンに、リクが疑問符を浮かべる。この様子にアクアは意外な表情で訊き返す。
「リク、知らなかったの? オパールが話さなかった?」
「いや…そう言えばオパールは?」
「え? リクも知らないの?」
意外そうにカイリが首を傾げる。一人だけ部屋に残っていたので、この場にいない人達の行方は知っているだろうと思っていたのだ。
「俺が目覚めた時、オパールは一人でさっさと部屋を出て行ったんだ。引き留めようとしたんだが…」
「じゃ
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