早朝。張り詰めた静寂を突き破る揺れと音が正体を露わになる。
ビフロンスの各地を黒い穴が開かれた。
黒穴からは闇に染まった異形が、更には彷徨う亡霊のように白き異形の者どもが現れた。
同時に、目を描かれた魔法陣がビフロンス各地の空より現れて、出現した群体を監視し始めた。
「――ハートレス、ノーバディを視認したわ」
『うお! いっぱいだな…』
『……撒餌を使ってやがるな。面倒だ』
この『目』の魔法を発動したのはミュロスだった。彼女は発動したカードの効果で索敵した。
彼女がいる場所はビフロンスの城下町。喧噪も人の活気も寝静まった静寂も無い、静謐に包まれている。
その理由は、戦場になる町や城、要所には今、大きなドーム状の結界によって覆われていた。
これら『結界』には住民たちや建造物を特殊な力で内外部と『隔離』する事で被害を最小限に抑えるものだった。
「……奴らは、どこかしら」
ミュロスは『目』を操作して、敵を探り分ける。
今現れた群体は所謂『兵士』だろう。まず『将』と呼べる存在ではない。
本命であるカルマとエン、彼らの率いる敵は、何処から攻め入る、侵入してくるのか。
『群体はどう動いているんだ?』
「各地よ。城、町やそっちの要所にも」
『その様だな。既に見えてる…迎え撃つとしよう』
彼女の周囲に浮かぶ幾つものカードから別々の声が発せられる。
声の主は神無やチェルを始めとした各地にいる防衛の者たちの声だった。
彼女はまず、各地へ赴く彼らに通信が出来るカードを渡して、相互連絡を可能にした。
『カルマたちは?』
最後に問いかけた声の主はイリアドゥスだ。
『目』を凝らすも群体の有象無象に困難の色を表情や声になって返した。
「……現れた敵が多すぎてわからないわ。ごめんなさい」
『いいのよ。こちらこそ無理を言ったわ』
『まずは群体を相手にするしかない、そうだろう』
カードから凛那が淡々と闘志を秘めた声で言う。
「ええ。その通り。町にも迫ってきている。――皆、気を付けて」
ミュロスは連絡を切る。『目』の魔法も一旦解除して、視界を戻した。
町へと迫ってくる黒と白の山―――有象無象のハートレスとノーバディたち―――を睨みすえる。
此処を戦場にはしたくはなかった、そんな慚愧を戦意に変えて口火を切る。
「さて…行くわよ」
彼女以外にも町の防衛を任されたものたちもいる。
ミュロスを始めとした、アルマ、ディアウス、プリティマ、アイギス、
リヒター、ローレライと、半神らシーノ、セイグリット、シュテンの者たちである。
「大技で殲滅した方がいいよね、アレは」
大軍を見やり、直接的な戦闘よりも支援に秀でたシーノが困ったように呟いた。
「――なら、先陣はアタイが頂く!」
彼らの中から気勢の良い声で荒々しい風貌の女性の――ギルティスが言うや我さきと駆けだす。
それを呼び止めるものはいない。気焔に満ち溢れる彼女の雰囲気を察したからだ。
そうして群体は真っ先に突っ込んできた彼女を呑む勢いで進んで来た。
彼女の盾たる手甲が闘志となってより輝く。
「煌輝なる星盾(オーバーレイ・メテオライト)ォッ!!」
吼えるや輝く手甲の何倍もの光の盾が現れ、聳え立つ。巨大な光盾へと群体は勢いのままに突っ込んだ。
その激突により、不動の盾に真っ先にぶつかったハートレスやノーバディは後続の群体に押し潰されていく。
それを見て、半神シュテンが快活に笑う。
「ハッハ! なら……っぷはぁ。――俺も先鋒に加担するぜェ!」
彼は手に持つ瓢箪に入った酒をあおり、武器たる大刀を構えて走り出す。
「ならば俺も続こう!!」
見事な一撃を見た興奮冷めやらぬリヒターもそう言うや駆けだしていった。
「!」
後ろから駆けてきた二人に気付いたギルティスが振り向く。
すでに巨大な盾も群体の押し込みで亀裂を生んでいた。
「同時に行くぜ!」
「無論だァ!」
「ええ!」
その闘志に燃え盛る男たちの声に、ギルティスは強く笑みを深める。
同時に盾が破壊された。
押し破った群体は構わず突き進もうとした刹那―――、
「朱天暴爆風(しゅてんぼうばくふ)!!」
「緋星獄滅撃(ひせいごくめつげき)ッ!!」
「光輝なる煌巨斬(オーバーレイ・ブレイドノヴァ)!」
全力の咆哮、それぞれの武器から巨大な火炎の塊が繚乱する。
そして、ギルティスの振り放つ闘剣の斬光が閃き、何倍もの大きさの光刃となって敵を両断する。
3人の眼前に迫った敵は一瞬で灼熱地獄と巨大光刃に消え去るが、それでも残った群体、更に現れた群体も先ほどの一塊から幾つもの塊となって分散しはじめた。
「……我々も奮戦するぞ!」
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