次に、「アル・セカンド」は西方に位置し、アナザを始めにフィフェル、凛那、ヴァイ、アーファ、紗那たちが防衛を任された。
彼女たちは南へ向かう神無たちと同行、黒竜ゼロボロスに運んでもらう形で西方の要所へとたどり着いた。
そうして敵の大群はあと数分で此処へと到達する勢いだ。その動きを見据えていた凛那が他のものらに告げる。
「では、まずは私が前衛となって戦う。後衛は任せた」
「大丈夫、凛那…」
告げた彼女に、ヴァイが不安な眼差しで問いかける。
ヴァイは戦闘に関しては凛那が圧倒的に強者であることを理解していても、前に迫り来る大群を一人で受け止める言葉に大きく動揺した。
そんな不安の眼差しに、晴らすように微笑みを返す。
「心配するな、お前はお前の全力を尽くせ」
そう返した凛那は、有無を言わさず話を強制的に切り上げて、一人前衛として先駆けていった。
ヴァイも、他のものも先駆けた彼女を追いかけるものは居ない。
「――さて、凛那がああ言ってくれたもの。私たちは私たちで頑張りましょうか」
静まりかけた場の空気を、アナザが平淡な声で破り、まずはと、指揮と行動を開始をした。
ヴァイも落ち込んだままではいられないと神妙に頷き返し、それを見た紗那やアーファも安堵しつつ、戦闘への意識を傾ける。
「……これほどの数……フフッ」
一人、先陣を駆けた凛那は迫り来る大群に笑みを浮かべ、込み上げる心の昂揚を胸に秘めた。
それに伴って、身に灼炎が巻き上がり、燃える意志を双眸で敵を見据える。
彼女は炎で圧縮し、具現化した刀を掲げた。
「――火之天照星」
技の名を唱えると掲げた凛那の頭上に炎の奔流が集中し、太陽の如く顕現された。
それでも大群は臆せず凛那を踏み越える勢いで迫った。
このまま炎塊を敵にぶつけて焼き払うが、それでも数が多すぎる。
タイミングを見計らい、機を満たし、掲げた炎刀を振り下ろす。
「火之素戔剣…!」
続けて、太陽は細かく火の粉となって霧散しはじめ、すぐに形を無数の炎刀へと変える。
それらの切っ先が全て群体へと向き、射出された。
降り注ぐ炎の雨。まさしくそう形容するものだった。
鋭い勢いで放たれる炎の刀に貫かれるもの、たとえ刀を回避しても着弾と同時に発生した爆炎に呑みこまれるもの、
一切合切の有象無象に凛那の一撃が降り注いだ。
「……」
ヴァイたちの視線の先にある凛那がいる場所は最早、荒れ狂う炎獄の光景と舞い散る火の粉の吹雪が凄絶なものへと仕立て上げていた。
感慨も何も讃える言葉を紡げず、ただ息を呑むそれしか出来ず、けれど彼女たちはその光景に思わず見惚れた。
そうして、最初に迫り来た第一波は凛那の圧倒的な力に焼き払われた。
だが、それでも続々と現れた敵は火炎地獄をも突破して、彼女や後衛の方へと襲い掛かる。
「流石に――」
襲い来る攻撃を受け流し、流れる動作で敵を握る炎刀で斬り捨てた。
小さな隙を狙い、敵が追撃するも何処から放たれたか、握る刀とは別方向から炎刀が追撃してきた敵を突き刺し、同時に爆炎と共に吹き飛ぶ。
飛来した刀の正体は炎獄の戦場となった降り注ぎ、地へと突き刺さった残存していた無数の刀であった。それらは、この場に於いて彼女の意思で自在に操作できる。
「ヴァイたちにも敵を任せてしまうか…っ」
そう口惜しく吐露する間も、残存した刀は凛那を護る盾、敵を焼き滅ぼす一撃となる。
だが、不安を吐露しても、それでも問題は無いと冷静に思考する己がいる。
現にこの躰は眼前の、襲い来る敵を斬り裂くことに駆動していた。
「大丈夫!!」
「これくらいの数なら――」
「あたしたちでも十分よ!!」
凛那の小さな不安を黒い闘気を纏い、振りはなった拳と共に黒竜が敵ともどもヴァイはそれを打ち破る。
羽衣を纏い、双剣を手繰る紗那と体術で敵を打ち破るアーファ、3人の舞踏のような戦いを繰り広げた。
「フィフェル、一気に仕留めるわよ?」
『はい!』
紗那たちの舞闘を見て、賞賛の笑みを浮かべながら、武装転成で本来の武器へと戻ったフィフェルと自身の剣とそれぞれで構える。
アナザは集中、高めた力を一気に解放する。
「消し飛びなさいな。――焔天滅獄刃!!」
朱色と闇色に燃え盛る炎を纏った二つの剣で、アナザは迫り来る敵を怒涛の斬撃で両断していく。
そして、第二波ともいえた群体も凛那やヴァイたちの奮戦よって殲滅された。
「……」
敵の気配が薄れつつある事に気付いた凛那は刀を振り上げる。
すると、彼女の周囲に燻る炎が振り上げた刀へ吸収されていった。
回収を終えて、刀を下ろして一息つく。ヴァイたちの方へと戻ろうと思い、その方向へと足を踏み出した瞬間、
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