一方、神月を追いかけた彼の妹ヴァイ、そして、その恋人の紗那が彼の元においついた。
支配の証たる仮面が彼の顔半分を侵食し、包み込んでいる。残った半分の顔には悲哀、絶望に満ちた眼をしている。
「……来てしまったか」
嘆くような、深いため息の後に呟いた神月は未だに剣を抜かない。
「お兄ちゃん!」
「神月!!」
「呼びかけても、俺は戻れない」
作り笑いを浮かべる彼に二人は言い切れない歯痒い顔になる。
「戦えば、元に戻る?」
紗那は噛み締めるように、問いかけた。ヴァイはその非常手段に黙したまま反論せずに、彼の様子を伺った。
神月は瞼を閉じて、首を振った。
「解らない」
解き方なんて知らない。だが、あの女はいった。
『死ぬ事』
それが一番、楽なのかもしれない。
そう想い―――三日月を浮かべる。
「剣を抜いてくれ、紗那。お前の手で、俺を―――」
「殺したりしない」
即断の言葉に、神月は言葉を詰まらせる。ヴァイも同じく、真摯な眼差しで兄を見つめた。
「そうだよ、絶対! 助け出すよ!!」
「剣は抜く」
紗那は覚悟に満ちた双眸で、胸より具現された柄をつかみ、薄黒の刀剣を引き抜いた。
「……でも、必ず生きて助け出す!」
「―――お前らは……」
俺の意見は無視か。
深い絶望のような眼差しを覆い隠すように彼は掌で顔を覆った。指の隙間から紗那の次にヴァイを見つめる。
視線を悟った妹は、拳を構えた。無言の返答、答えるは構えと眼差し。
「……今から俺は俺で無くなる」
仮面の女は笑っていた。
『苦悩するくらいなら、支配を受け入れる事も最善よ』
二人の仲間の姿を脳裏に浮かべ、仮面の侵食を、支配を完全に受け入れた。
手を下ろし、次第に顔を覆い始める仮面。神月は包まれる中、その眼差しを二人に向けたままいった。
「俺に殺され、俺は死のう。それか、お前たちに殺され、俺は死ねる」
目を細めた―――どこか、優しさに満ちたそれは仮面に呑まれる。そして、侵食を終える。
『神月』はゆっくりと胸に手を当てた。出でる柄を引き抜く。
虹に彩る美麗の刀を握り、虹色に輝く翼を広げる。構えをとり、その無機質な殺意が二人にのしかかる。
「っ……!」
本気というより、情け無用という非情の重圧に紗那は構えを一層強くした。
ヴァイも剣呑に構えをおろそかにしない。
「―――っうおおおおおおおおおおおおおお!!」
地面を抉るように翼を噴出するように放射し、二人に迫った。
「……」
「……」
再び、凛那とクェーサーの戦いに戻る。
二人の戦いは他の者たちと純粋な意味で凄惨だった。
両者共に切傷が全身に走り、周囲は燃え盛る炎、クレーター跡が無数に展開されていた。
だが、その傷は凛那には余り意味をなさない。全身に奔った傷が静かに塞がる。
「この能力があるのかは謎だ。我自身、驚いている」
直ぐにもとの麗しい姿に戻った凛那は感嘆を込めていった。クェーサーも引きつった笑みを浮かべいてる。
「治療の魔法くらいは心得ている」
刹那、全身を光が包み込んで、光はガラスが砕けるように散った。傷痕残らず消え去り、再び『同じ』になった。
先ほどから、コレの繰り返し。斬って、斬られて、焼かれて、吹き飛ばされて―――。その度、傷を癒して、また斬って―――。
「理解できない事が一つある」
凛那はこの斬り合いの中ふと、『理解』した。
彼女は本気ではない。
無論、自分も同じだ。
「なぜ、本気で挑まない」
「貴女の本気の1段階目はその刀ね」
問いかけを無視し、互いの本気の度合いを理解しあった。
凛那は自身の『具象』。
クェーサーは『煌翼』。
「だが、それ以降は開放する気はない」
無効も解放しない。いや、
「……その状態では出来ないのか」
「この支配を受け入れれば、すぐにでも解放するわ」
でも、その目には明白に拒絶を示している。
「支配を受けている中途半端な状態の心剣士は『全力』を許されないようにし、仮面の女はわざと『意思』を尊重しているようで、実は酷をさせているの」
「一つ聞いていいか、あんさん」
神無は黒く染まった心剣『バハムート』で仮面の女の繰り出した異形の心剣と唾競り合っている。
「…何かしら」
「それもそうだが、仮面をつけた奴とそうでないやつが居たな」
「ええ」
隙に割って入る王羅の一閃を躱す。神無は剣を引いた。
「――王羅、邪魔するなよ」
「ごめんね。喋りはどうかと想うけど」
「すまない。でも、気になった」
「……いいわ。話してあげる」
仮面の女は笑んだ声で、剣を小さく下ろした。
「じゃあ、話してもらいましょうか……神
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