あちこちで戦闘は起こるが、被害は城の中だけではない。
城外では、大量の水が荒れ狂っていた。
「フラッド!!」
「ヴァッサー!!」
リリスが地面から放った清水、イリシアの操る水の化身がぶつかり合って弾ける。
互いの放った大量の水は上空に舞い、激しい雨となって頭上から降り注ぐ。全身がびしょ濡れになるが、そんな事気にせずに相手を睨んで対峙していた。
「…やはり、あなたも水の化身か」
「邪魔をするなぁ!!」
何か通ずる事があったのか、目の前の敵の本性をイリシアが掴む。しかし、リリスは構うことなく槍を持って襲い掛かる。
「敵は一人じゃないわよっ!」
リリスの背後から、声が飛ぶ。
上昇気流を使って上空に浮いているシムルグが、指先に風を宿す。
「切り刻まれなさい!!」
パチンッと音が鳴り響くと、幾多の巨大な風の刃を飛ばす。
「こんなのっ!」
リリスは手を振りかざし、水で形成されたバリアを作る。
水を使って飛ばした風を防ぐ――瞬間、刃は水をすり抜けるようにリリスの身体を切り裂いた。
「うぐあぁっ!?」
「ただの風なら防御は出来たでしょうね。でも、私が作り出したのは真空刃――空気の通わない刃なら、水は切断出来るわ」
「それが、どうしたぁ!!」
原理を説明するシムルグに、リリスは負けじと怒鳴る。
槍を構えると、辺りに飛び散って地面を濡らしていた水が足元を濡らす――違う、リリスの力で辺りに散った水が増幅している。
その事に二人が気づくと、リリスは口元を歪める様に吊り上げた。
「このまま海の藻屑と成り果てろぉ!!」
天高く手を振り上げ、リリスを中心に渦潮を作り出す。
足元が引き込まれ、水の嵩は一気に増える。脱出しようとするが、渦潮が作り上げた波に二人が飲み込まれる。
敵がいなくなったことに、リリスはほくそ笑む。あとはこのまま溺れさせるだけで、終わる。
その算段は、水中――それも渦上の激流を物ともせずに突っ切って破ったイリシアとシムルグによって打ち破られる。
「え…!?」
予想とは全く違った出来事に、思考が一瞬だけ固まる。
一瞬と言う時間は、二人にとって十分な好機だった。
「ヴァッサー!!」
「嵐刹!!」
「ぐ、うぁ…!!」
両側から激しい水と風の衝撃波が容赦なく襲い掛かり、リリスの体力が尽きて倒れてしまう。
彼女の魔力が途絶えた事で、渦を作っていた大量の水は引いていく。そんな中、シムルグとイリシアは涼しい顔で倒れたリリスを見下ろしていた。
「溺れさせる計画だったろうけど、無駄よ。風を操れるんだもの、水の中でも空気を取り込むなんてお手の物」
「あなたは確かに水を操る事に長けている。けど、神の力を持つ私には及ばない」
「ま、“人間相手”なら苦戦は必須だったわ――戦う相手が悪かったわね、リリスサン?」
「くそぉ…!!」
あれだけの攻撃を受けたのに、槍を杖代わりにして立ち上がろうとする。
彼女が繰り出した水から漏れて伝わる感情。それは穢れきったドス黒い想い。
到底水には相応しくない穢れきった感情だが、イリシアは覚えがあった。
(この子も、アニマヴィーアと同じ。浄化する筈の水が穢れ、歪んでしまった意思)
この子はSin化された人達と違う。自ら関わり、行動している。本来ならば容赦なく消すべき対象だ。
だが、そんな気にはなれなかった。半神達の趣に背く形になろうとも…水を司る半神として、この子を救いたいと思った。
掌に風の刃を纏うシムルグに手を伸ばし、制止させる。そのまま、傷だらけのリリスの四肢をヴァッサーで拘束する。
「何を!?」
「あなたは取り込ませてもらう…今のヴァッサーのようにかつての姿に戻してあげる」
「いや…イヤァァァーーーーーー!!?」
ヴァッサーを媒介にして力を取り込み始めた直後、リリスは悲鳴を上げる。
力が抜けていくのを感じるのか、リリスは悲鳴を上げながらも抵抗しようとする。
だが、イリシアは動じない。
(抵抗はするけど、アニマヴィーア程じゃない…いける!)
イリシアは半神として完全に覚醒し、アニマヴィーアと言う邪悪溶かした巨大な意思を取り込み力と化したのだ。水…いや、海の化身である彼女の意思は大きいが、人間一人分のサイズに収められている。負ける要素は無い。
意識内では水の力は真っ黒に染まっている所為で、闇にいるみたいだ。それでも、自分のモノと化しながら浄化する。
そんな意識の中で、闇の奥に光が見えた。
(この光は…?)
彼女が抱える感情に似つかわしくない代物。正体を確かめようと、イリシアが触れようとした。
―――止めてぇ!!!
瞬間、突然強い力に意識の世界から弾き飛ばされた。
「っ!
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