「――なにっ?」
優位に戦っていたアーベントは、四人からの吸収による供給が止まったのを感じ、動きが一瞬止まる。
それを見逃さないと、狙いすました一撃を振り放ち、直撃した騎士は大きく吹き飛ばした。
そうして、ハオスは武器を陶然と構えなおす。
「……―――」
彼らの力を利用していたアーベントの吸収戦法が抑えられた、ハオスは傷深く負いながらも、理解する。
さらに、もう一つの存在にも。
己の深淵の奥底から呼びかけるような感覚、勝負を打開する最大の一手を出せ、と。
真の力を、と。
ハオス・ネクロノミアとして生まれ『変わった』瞬間から、脳裏に焼き付いた…否、魂に刻まれた言霊を唱える。
「喰い贖え」
黒い魔刀を逆手に持ち、自らへと向ける。
その様は、自刃よりも祈りを捧げるモノに見えた。
「―――『月喰罪紡歌龍(ペカド・スセソル)』―――」
二人が選んだ、一つの、答え。
刃が彼を貫くと同時に生じた衝撃波、不意を打たれたアーベントは身を固めて防御しようとする。
だが、それよりも速く――アーベントの両腕が斬り飛ばされ、頭部を剛力によって掴まれて、宙ぶらりにされ――制される。
「 !?」
眼前に居たソレが、ハオスであると理解する前に、次の一撃が迫っていた。
大きく開いたその口から強烈な閃光が、騎士の上半身を消滅し飛ぶ勢いで放射される。
(ば、か な ―――きゅうしゅう しきれ ――― ッ!?)
能力を利用して、吸収すれば眼前の『異形』を倒すことは容易の筈だった。
しかし、吸収できる許容範囲が一撃一瞬で臨界し、機能停止した。
そして、閃光に全てを消滅する前に、残された非常手段が駆動する。
(こ、れ… ほ、 どと は… !)
圧倒的な一撃を受け、消えかけている意識を振り絞り、アーベントはただ、ただ眼前の『異形』に、瀕死の撤退を余儀なくする。
「………」
一方、ハオスは掴んでいたはずの騎士アーベントが突如、霧散するように消えた。あと、少しで倒せたというのに。
冷徹に消えた気配を探るも、シンメイたちの逃げた方向やビフロンス全域と、巡らせたが―――もう居ない事を感じたハオスはゆっくりと吐息を零す。
そうして、次に解放した真の力の実感して理解する。なにしろ、自分の姿は―――。
「無事か、ハオス―――な!?」
「その姿は……いったい!?」
「やはり……おぬしだったか」
「どういうことよ? ねえ…」
「ちょっと目を話したらデカくなったなあ、おい」
大きく驚愕する神無や戸惑う紫苑とブレイズを横に怜悧にシンメイは呟いた。
特に驚きも薄いゼロボロスのそれぞれの感慨を聞きつつも、ハオスは表情の捉えがたい苦笑を浮かべる。
そうして、彼らの方へと振り向いた。
その全貌、純白に染まった、尋常なまでに鍛え抜かれた淡い水色の刻印が浮かんだ屈強な体躯と右腕は彼の持っていた黒い刀剣が巨大化して融合したような異様、
人ではない竜に似た頭部から溢れて靡かせる炎のような橙色の長髪、鈍く輝く黄金の双眸をしたソレこそ、ハオス・ネクロノミアの真の姿であった。
「驚かせて、すまない」
竜人の口から発せられたハオスの声に、神無たちはゆっくりと警戒を解く(シンメイとゼロボロスは特に姿を見てからも警戒していない)。
彼の元まで駆け寄り、状況を確認し合う。此処アル・ファーストの脅威が現状去ったことが確認できた。
力を吸収されて、疲弊が残るも安堵した神無はハオスを見上げて、以前に聞いた話を思い出す。
「そういえば…睦月たちが言っていたなあ……変身能力というか、本来の姿に戻る的な事。だけど、それは……」
「そう。私の父と母ともいえる二人――フェイト・ダンデムスターとカナリア・ナイチンゲールのものでした。
私は――自分がそれを『受け継いでいた』ことを気づかずにいました」
「どうやら、思い出したわけか」
感慨深く腕を組んたゼロボロスの言葉を首肯し、
「あの戦いの中で、呼び起こされました。―――本能、と言うべきものかな」
そう呟くと、淡い光に包まれた竜人ハオスの姿が、光が消えて、言い終える時には元の青年の姿へと戻っていた。
「まったく……面妖極まるな」
ため息を吐いて、ブレイズは力無く言った。彼女も神無と同様に、力を吸い取られたせいで疲労の色が顔に残っている。
気強い姿勢と立ち振る舞いで誤魔化そうとしている、この場にいる誰もが察していた。
だが、下手な気遣いはかえって彼女を無理にさせてしまうだろう…と、あえて追及を避ける。
「……とはいえ、こんな厄介な敵はもうゴメンですよ」
心底うんざりした様子で紫苑が言うと、小さくブレ
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