塔の頂上で暴風と落雷が収まり、まず初めに起き上がったのはレイアだった。
「う、あ…!」
激しい衝動に襲われたのに、倒れる程の傷は負っていない。
腕に力を込めて身を起こすと、近くに白い剣が転がっている。
視線を辿っていくと、近くで王羅が倒れていた。
「王羅、さん…!」
ここでようやく、彼女が全霊の魔力を使って自分を庇ってくれたのを理解する。
思わず肩を揺さぶっていると、スピカの声が聞こえた。
「まさか――クウではなく、あなたが立っていられるなんてね」
その言葉に、レイアは前方を見る。
スピカの前で倒れているクウ。その隣に、傷だらけでも立っていたのは。
「姉、さん…! あなたの、おかげです…!」
銀のロケットを握り込んだ、ウィドだった。
空いた手でハイポーションを飲み込み、一気に傷を回復させる。それからロケットをポケットに仕舞うと、足元に落ちていた剣を拾い構える。
「レイア、このバカだけでも回復を…この不安定な足場では大人数で戦えません。そうでしょう、姉さん?」
直後。スピカの返答を聞かず、素早く懐に駆け込む。
「ウィドさん!?」
レイアが叫ぶが、ウィドは構わずスピカに高速の連撃を射ち込む。しかし、彼女はそれを見切って刀身で受け流すように弾く。
同じ武器、同じ戦法。スピカも自分と同じ、力ではなくスピードで勝負するタイプだ。魔法と言う副産物はあるが、この攻撃の速さでは使えない。封じたも同然だ。
自分と同じ土俵に持ち込んだ。なのに…どうしてだろう。
(勝てる気がしない…!!)
クウから強いと言う話は聞いていた。気を引き締めていたつもりだった。けど、どこかで大丈夫と言う楽観も存在していた。自分達には沢山の協力者がいる。優しい姉さんが本気で自分を傷つける訳がない。何より、自衛とは言えずっと剣術を習っていたのだからと。
しかし、実際に対峙するとスピカは手加減もせず、更には大人数にも対処して戦っていたのだ。一対一に持ち込んだ所で、勝敗はグッと低くなったかもしれない。
互いに剣で打ち合っている状態なのに、柄を握る手が痺れてくる、軽い筈の一撃が重くなってくる。徐々に押し返されているのが剣を通して嫌でも伝わる。
「っ、はぁ、はぁ!」
これ以上は危険と判断し、剣を弾き、一旦距離を取る。
打ち合ったのは短時間なのに、息切れを起こし額から汗が垂れる。スピカはそんなウィドを、仮面越しに冷ややかに見つめていた。
「――あなたの振るう剣には覚悟が無い」
「…ッ!」
まるで心の内を見透かされた発言に、ウィドが凍り付く。
「今の私はあの兵士達と同じ。彼女の命令に従って動くだけの、感情の無い人形に過ぎない。あなたもクウも大事な存在なのは分かってる――…だけど、それ以上に彼女の命令に従わなければいけない…あなた達を消さなければならないと言う思考を止められない」
スッと細剣を上げて切っ先を向ける。
僅かな動作なのに、脳内で激しく警報が鳴る。ウィドは反射的に片足を踏み込み、スピカの背後に回り込み『一閃』を放つ――が、身を屈んだ事でかわされた。
「あなたは違う。ウィドは優しいから、私を傷つける事に迷いを抱えている。そんな風に考えて―――私を救える訳がないっ!!!」
厳しく言い放つと、スピカはウィドの胴体に蹴りを放つ。
「うあっ!」
思わぬ反撃に身体をよろめかせる。
そうして作った隙。スピカは間髪入れずに、ウィドの握る剣に自身の細剣で一撃を与える。同時に、ピキリと軋む音が鳴る。
目を向けると、刀身に罅が入っていた。それはまるで、自分の迷いが剣に現れているように見えてしまう。
「剣が…!?」
「氷壁破・白柱」
足元が凍り付き、一瞬の内にウィドは氷壁の中に閉じ込められる。
氷の中に捕われて動けなくなったウィドに、スピカが細剣を水平に構えた。
「これで終わりよ」
「やらせるかぁ!!」
割り込んだ怒鳴り声に、弾かれたようにスピカがその場から離れる。
その数秒後、氷壁を壊しながら黒い衝撃波が今しがたスピカがいた床にぶち当たった。前を見ると、回復し終えたクウが片手でウィドを抱きかかえていた。
「う、うう…!」
「よぉ、無事、だな」
「ウィドさん!」
抱えたウィドを下すと、レイアが駆けつけて回復の魔法をかける。
それを見たクウは選手交代とばかりに、スピカに向かい合った。
「スピカ、悪いが俺は本気だ。もしかしたらこの戦いでお前を殺すかもしれない…」
呟き、胸に拳を当てる。いや、押し付けると言う表現が近い。
自身の迷いを、恐怖を押し殺すように。
「それでも、お前を傷付ける覚悟はちゃんと出来てる。だからこそ、俺は…お前を意地でも救う!! お前の手を汚さ
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