スピカが心剣に貫かれた姿に、この場にいる全員が釘付けになる。
助けられなかった。そんな絶望の中、胸を貫かれたままスピカの仮面に一筋の罅が入る。
そして、罅は徐々に広がっていく。
「あ、ああっ…ああああああああああああああああああっ!!!??」
やがてスピカから悲鳴が上がり、罅割れた仮面が壊れる。
同時に二人に刺さっていた心剣と反剣も消滅する。クウは腹部の激痛を押し殺しスピカを抱えながらその場に座り込んだ。
「げほっ、ごほっ…!?」
「クウさん!? なんて無茶を!?」
「こうでも、しねえと…刺せない……がはっ、げふっ!!」
口元を抑えながら、クウは咳き込みながら血を吐き出す。
急いでレイアが傷を塞ぐ為に惜しみなく回復魔法をかけていると、突然ウィドがクウの胸倉を掴んだ。
「貴様ぁ!! よくも姉さんをぉ!!」
「落ち着け…っての……外傷は、ねえよ…」
胸倉を掴まれ顔を歪めながらも、抱えていたスピカを見せる。
自分達の攻撃を受けてボロボロにはなっているが、クウに貫かれた剣の傷はどこにも見当たらなかった。虚ろな目でクウに寄りかかっているが、ちゃんと生きている。
「でも、確かに刺した筈なのに…?」
「何が、どうなっているんですか…?」
どうしてスピカが無事なのか分からず困惑する二人に、クウは一枚の紙を取り出す。
「これを、使ったんだよ…」
そう言いながら、何も書かれていない白紙の紙を見せつけて種明かしを始めた…。
―――時間は、防衛の会議の時まで遡る。
『そうだわ――あなた達には、事前にこちらを渡しておくわね』
人員配置について纏まった時に、ミュロスが本を取り出す。
複雑な文字の書かれた複数枚の紙を取り出し、テラ・アクア・クウの三人に手渡した。
『この紙は?』
『【Sin化】対策に作った、私の魔法の簡易版って所よ。こうすると分かるかもね』
そう言うと、ミュロスはカードを取り出して上へと放り投げて部屋を真っ暗にする。そして、円環で繋がった鎖を見せつける。
そのままビフロンスの作戦でも話した内容を三人に教えると、Sin化対策の処置を施した。
『これでいいのか…で、俺達は【Sin化】対策を施した訳だが、残りの人も集めた方がいいか?』
『いいえ。そんな時間はないから、他の仲間はあなた達に任せるわ。私が渡した紙をその人に少しの時間――目安は文字が全て消えるまで翳せば処置は終わるわ。カードならすぐ終わるんだけど、流石に全員分用意する時間が取れなくて簡単な分手間がかかる方式になってしまったわ』
そうしてミュロスがやり方を教える中、話を聞いていたクウはじっと渡された紙を見つめていた。
『…こんな便利な力があるんなら、戦わなくても【Sin化】したスピカを助けられそうなんだが』
『残念ながら、そうはいかないわね。私の作った対策は効果を受けないようにするだけだから、解除するのとは全然違うわ』
『そうか…俺の融合の力使っても無理か?』
『正直無理じゃないかしら? 既にインフルエンザにかかった状態で薬ではなくワクチンを打っても治る訳じゃないでしょ? まあ、原理が原理だから私の魔法を本人の心に打ち込めばあるいはだけど…【Sin化】している状態ではきっと届かないわ』
『どっちみち、こいつはスピカに使えないって事か…』
残念そうに呟き、クウはテラとアクアとミュロスから貰った紙を分け合う事にした。
「――だから、ミュロスが施した【Sin化】対策の魔法を…スピカの心剣、だっけ? に『融合』させて、突き刺してみたんだ…心剣が心なら、直接打ち込めると思ってさ…」
この種明かしはウィドとレイアだけでなく、戦いが終わり駆けつけた王羅達も聞いていた。
「まさかこんな方法取るとは…心の剣とは言え、一歩間違っていたら大怪我以上の傷を負ってましたよ」
彼が使った方法に、会議に参加していた王羅も予想の斜め上を行き苦笑を漏らすしかない。
とは言え、スピカを助けられたのも事実だ。しかもミュロスの魔法も施したからもうパラドックスの支配も受けないだろう。
「――安心するな」
「まだ、終わってないっ!!!」
安心した雰囲気を切り裂くかのように、ゼツと神月が上空を睨みつける。
他の人も視線を追うと、ある人物が飛んでいた。
「――エン…!!」
久しぶりに見た宿敵の姿に、クウは無意識にスピカを強く抱きしめる。
一方、エンは抱えるスピカを盗み見て少しだけ安堵したように息を吐く。当然、距離が離れているクウ達には聞こえないが。
しかし、すぐにエンは白い双翼で浮かびながらクウへと厳しい視線を送った。
「本当にスピカを助けるとはな……何て奴だ」
「助けて、何か問題あるのかよ…!?
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