なんで、こんな事になったんだろう?
ツバサはそうぼんやり考えながら、目の前で椅子に座って対峙しているグラッセを見る。完全に勝ちを狙う顔をしており、テーブルに置いてある盤上にチェスの駒を並べている。陣営は自分が黒、グラッセが白だ。
勝負を持ち掛けられたと思ったらオパールの家に戻り、チェスで対決する事になった。黙々とグラッセが対局の準備をする中、他の人達は観戦するために周りに集まっている。
その一人であるテルスは、二人を様子を眺めつつ頬に手を当てていた。
「それにしても、帰ってきて早々あの子とチェス勝負ねぇ…」
「うー…あのままリクにリベンジするつもりだったのにぃ…」
「他にもやりたい人いるんだから。独占しちゃダメだよ、オパール」
「いいじゃない! 元はと言えばあたしのでしょ、あのチェスー!」
「俺だってまたリクと対戦したいー!」
「…すまないな、騒がしい二人で」
「あ、いえ…お気遣いなく」
嗜めるカイリに文句をぶつけるオパールとソラに、原因とも言えるリクが謝る。そんな姿に、ジェダイトはどこか苦労人を見るような目線を送る。
そんな話をしている間にも、準備が完了した。
「それじゃ、始めよっか」
「グラッセは、その…チェスの経験、あるの?」
「知識で知ったくらいだよ。そう言う君は?」
「ボクは…今しがた、やったばかり。駒の動かし方は、知ってる」
「お互い初心者か。ま、お手柔らかに頼むよ」
笑ってそう言うグラッセ。ある程度緊張を解そうとしているのだろう。けれど、ツバサは笑う気になれなかった。
「先行後攻はどうするの…?」
「ツバサからでいいよ。女性には優しくしろってさっき怒られたばっかりだしね」
「…じゃあ、よろしく」
ぎこちなくも挨拶をして、早速黒のポーンを摘まんで一手を打つ。グラッセも同じように、まずはポーンを動かす。
二人とも初手は様子見といった無難なスタート。ここからどう動くのかは、当人しか分からない。
「それにしても…」
「どうしたんだい、レイア?」
「ツバサさん、何だか乗り気じゃないように思えて…私達と、正確にはクウさんと一回だけやった時は楽しそうだったんですが」
暢気なラックと違い、レイアは心配そうにツバサを見る。勝負が始まったのに、どことなく不安気な表情でビショップの駒を斜めに動かす。
「ふーん? 子供相手に本気出したんじゃないだろうね、クウは?」
「うん、本気出したよ。本気を出して負けてたんだ」
「流石にあれは…うん」
「ヴェン、テラ、余計な事は言わなくていいんだよ!?」
相当に負けを見たのだろう。泣きそうになるクウの悲鳴が響き渡った。
白の駒。黒の駒。交互に駒を動かし合い、キングの駒を取る為に動かしていく。
その過程で、それぞれの駒が取られては取って。どんどん盤上にあった駒が少なくなっていく。
条件は一緒の筈なのに。一手一手で行動しているはずなのに。
黒がどんどん無くなっていく。
(どうしよう…どうしよう…!)
必死で頭を働かせるが、思いつかなくて無難にキングの駒を安全圏へと動かす。
そんな一手を、グラッセはナイトの駒で追い詰める。
「何て言うか…どんな戦い方するのかなって思ったんだけど、逃げてばっかりだ。いや、時間を稼いでいる感じか?」
「……追い詰められたら、それくらいしか出来ないよ…」
「それと、気になってたんだけど。君も一緒なんだね、シャオと」
「そ、そうかな…?」
「君もシャオと同じで、自分の事を『ボク』って言うだろ。それに、キーブレードも」
「っ…!」
嫌でも動揺が走る。胸の内がザワザワする。
盤上を見ても、もうどうすればいいか分からなくなる。それでも、キングは取られたくなくて後ろに下がらせる。
「はい、クイーンゲットっと」
「あっ…!」
縦・横・ナナメを自由に動けるクイーンを取られてしまい、ツバサの顔色が一気に悪くなる。
こちらも対抗してクイーンを奪おうとするが、逆に他の駒を取られて戦力が奪われていく。
その光景はまるで…光が闇を消し去っていくようだ。
「これでチェックだ」
気づけば、黒のキングは一気に攻めた白のクイーンに取られる所まで来ていた。
このままでは次のグラッセの番でキングは取られてしまい、負けになる。
「………」
「何も出来ないって事は、チェックメイトだな」
顔を俯かせ、ギュっと膝の上で両手の拳を握る。
きっと、これでいい。
怯えちゃダメだ。
負けたのだから、本当の事を話さないと…。
「グラッセ…ボクは――」
「…ちょっとだけ、『ストップ』」
スピカが言うと、周りの空気が凍った。凍った、と言うのは少し語弊がある。
止まったのだ。グ
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