「今の私の名前は『アダム』。まあ、刹那と呼んでも構いませんが」
「別にいいわよ。アダム、貴方がここに来たのはこんな報せを打ち明けに来たわけじゃあないんでしょう?」
シェルリアの問いかけに、笑みを納めたアダムは一息ついて、話を明かす。
「ええ。実は、『仮面の女』と言う人物が多くの心剣士、反剣士を捕らえて手駒に、その拠点を現在は神の聖域レプセキアに置いた」
「!? おい、レプセキアって」
「そう。半神たちが、レプキアが居た場所です」
「無事なのか?!」
「……とりあえず、ゆっくりと話します。その方が理解してもらえていいはず」
アダムはゼツたちに今回起きている事件を話した。
アダム自身も仮面の女に襲われたことがある。それは自身もまた強力な旅人だからだ。仮面の女は心剣士、反剣士、永遠剣士以外にも様々な世界を渡り歩く『旅人』を狙う。
彼は今後の行動をゼツたちに打ち明け、彼らにも協力を仰いだ。もちろん、ゼツたちは覚悟を決めて、協力を承った。
「―――兎に角、アイツが頑張っているんだ。俺も頑張らないとな」
「そうね。此処も狙われる可能性は在るかもしれない。警戒はしておくわ」
「ああ、任せる」
ゼツは席を立ち、シェルリアに歩み寄って彼女の頭を撫で、家を出て行った。
家を出た彼は、町を抜け、一目を避け、人気のない草原に足を運んだ。
「異端の回廊、開け」
左手に黒く染まった片刃の剣を握り締め、空間を引き裂いた。引き裂いた孔へと飛び込み、孔は傷を塞ぐように閉じた。
踏み込んだ場所は異界とも言える空間。先を示す道は無く、大きな足場と奥に扉だけが拵えているだけ。
「悪いが今は『館』は使う暇は無い、急がないと」
『異端の回廊』は反剣士が使える闇の回廊と言った具合の移動手段だ。『館』は言うなれば隠れ家的なものだ。ある程度の優れた反剣士はこの回廊で数週間は過ごす事が出切る。
扉は闇の回廊と同じく目的の場所へと通じている。だが、目的とした場所を『想わなければ』、ダメなのだが。
「『竜泉郷』……よし」
扉に手をかけ、深くその言葉を念じる。刹那――アダムの言うとおりならこの先に『竜泉郷』と言う世界があるはずだ。
「……」
意を決し、扉を開けた。扉の先は深い緑に生い茂った森だった。
だが、自然で出来た道が一本道となって先を示していた。そう、大きな古びれた館を。
「あそこにいるのか?」
ゼツは館に足を運んだ。道中、森の中には湖、それにまぎれるように源泉が沸いている。そこには動物も浸かっており、来訪者を見据えていた。
(竜『泉』郷といった具合か。……館には誰かいるといいが)
辿り着いた館は遠くから見ても古びているが、近くで見ると尚古びている。緑に侵され、蔦の模様が伸びきっている。
「ま、入るからいいか。しつれいしまーす」
扉を開けながら、声を上げたゼツ。中へと入ったゼツはこざっぱりとしたエントランスを見回した。
「――ほう、来訪者か」
エントランスの中央の階段を上がって直ぐ奥の扉が開いた。
姿を現した彼女は長い銀髪、紫の瞳、着崩した十重二十重の着物を着た幼い容姿をした小柄な少女。
(二人……一人目、か。名前はそういや聞き忘れたな。ま、いいか)
「おぬし、ここに何かようか? 此処には色々な効能のある源泉と自然に満ちた森、そしてこの館と私たちしかいない」
「あ、ああ。実はある人から『二人』に頼みごとが―――」
刹那、ゼツは左から迫った攻撃を黒い剣―――『アルトセルク』を抜き取って、刀身で防いだ。
だが、強く打ち込まれた一撃は彼を思い切り、突き飛ばし、壁に激突した。
「ぅ!?」
「これ、ゼロボロス! 入ってすぐの客人を横から殴り飛ばす奴がおるか!!」
「あー……いや、押し売りはお断り的な意味で」
鈍く消えないでいる後頭部の痛みを堪えながら、ゼツは殴ってきた男――『ゼロボロス』を見た。
彼は黒髪、血眼といっていい赤い瞳、引き締まった上半身を黒い装束で薄く纏い、濃紺のズボンを穿いた強面の青年を。しかも、彼の一撃は何一つ纏っていない素手による一撃だった。
そんな彼は少女に叱られながらも苦笑で流しながら、呆れた少女も階段を慌てて下りて、駆け寄って来た。
「おぬし、大丈夫か? すまんな、こやつは阿呆で阿呆で…」
「誰が阿呆だ? まあ、意識があるんだ。なかなかの実力者だな、お前」
ゼツを讃えながら彼は両手をズボンのポケットにつっ込み、笑う。さしずめ、推し量られていたようだ。だが、剣呑としている暇ではない。
仲間であるアダムの頼み事を果たさなければならない。目の前の二人が彼がいっていた人物であることは間違いない。
「……お、俺はゼツ。訳合って、ここにきたん
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