「いいじゃないか……企画が通れば、アタイだってもしかしたら料理上手になってたりするんだろ?」
「天地がひっくり返ってもそんな設定は変わらねーよ」
無惨な形でゴミ箱に捨てられた企画書を見ながら嘆くラック。それに対し、ムーンは一刀両断で希望を切り捨てる。
どうにか全員の命の危機となる企画は阻止したが、疲れ切ったのかグラッセは机に凭れ掛かるように蹲っていた。
「これまで出た3人の企画は、とても採用出来るものではないです……!! 誰でもいいから、せめて俺が生き延びれる話を持ってきてくれーーーー!!」
「任せなさい、グラッセ!!」
高らかな女性の声と共に、また扉が開かれる。
「姉である私の登場よ!!」
「テルスさん!?」
ウラノスの姉であり、リズ達の味方であるテルスが登場する。
次なる大人に期待を寄せる――事はなく、真っ先にウラノスはしかめっ面になる。
「自信満々に来たのはいいが、テルス姉さんの事だからどうせ企画はスケベ関連じゃないのか? 全員水着とか、温泉覗きとか」
「流石にそんなもの出しません、私は今回真面目に考えました。私が企画した内容は恋愛モノよ」
「恋愛モノ? それってウラノスさんと同じ奴です?」
「あんな企画と一緒にして貰ったら困るわ」
グラッセに釘を刺し、壇上に立つとオホンと咳払いをしてこの場にいる人達の注目を集める。中身は同性すら手を出すスケベだが、教師として人前に立つと言う事に置いての手腕は本物である。
「いい? 今の時代は多様性よ! リズのようなハーレム主人公、クウのようなダブルヒロイン同士のライバル対決も面白いと思うけど、恋愛モノの最先端を狙うならこれよ!!」
キッカケは、とても些細なものだったかもしれない。
この気持ちは墓場まで持っていこう。そう決めたのに。
それでも、どう言う訳か運命は――自分の味方をしていた。
「俺は……俺が好きなのは、リズじゃない! お前なんだよ、グラッセ!」
「ムーン……!?」
「違う! 私は……本当はお前が好きなんだ、クウ!」
「ウィド……!?」
これは、交わる事のない2組の、お互い不変だった絆が変わる話。
「お試しでもいい、俺と付き合って欲しい。嫌だと感じたら、そのまま別れてくれたらいいから……」
「ムーン……分かった。こんな俺で良ければ」
「ありがとう、グラッセ! こんな不純な思いを抱える俺を受け入れてくれて……!」
(やめてくれ。本当は男同士で付き合うとか、よく分からない。でも、ムーンを傷つけたくないだけだから……ごめん、ムーン)
「おい、リズ。急がなくても料理は無くならないぞ? あーあー、頬にソース付けて」
「もぐもぐもぐ、いいじゃない別に。あ、グラッセにも米粒付いてるわよ」
「ホント? この辺……?」
「違うよ、ほれ」
「うえええぇ!?」
「なんだよ、折角取ってやったのにいちいち大きなリアクションして」
(リズにもしていた筈なのに、何でこんなにドキドキしてるんだ俺……!)
「俺が嫌だって言えば、ムーンとは何時だって別れられる。なのに……俺、どうしたんだろう? この気持ちは一体……!!」
「お前も、俺と同じ悩みを持っているようだな」
「クウさん……」
「俺だって迷ってんだ。勇気を出して告白したウィドの気持ちに応えてやりたい、けど本当にこれでいいのかって……!」
「クウさん……分かります。ムーンは俺を困らせたくなくて、ずっと気持ちを抑え込んでいた。でも、本当の気持ちに従った今のムーンはとても嬉しそうで――何より」
「そんなあいつに惹かれてる自分がいる、じゃないのか? 多分、それが俺達の答えなんだ」
「俺、ちゃんと向き合わなきゃ!」
答えを導き出した2人は、改めてパートナーに向き合う。
「グラッセ。やっと俺の事向き合ってくれたんだな……お前と過ごす時間は嬉しくて、同時に恐怖だった。この幸せが、いつか壊れるんじゃないかって……!」
「ムーン、不安にさせてごめん。でも、俺は決めたよ」
「本当にいいんですか? 今なら無かった事にしてまた姉さん達と……」
「らしくねえな。ほら来いよ、俺じゃ不満か?」
「クウ……」
果たして、彼らが織りなす禁断の恋の行方は!?
《始まりのチルドレン 〜BoysandLove〜》
「なぁにが恋愛モノの最先端じゃあああああーーーー!!?」
「夢と希望のKHに対して何をプレゼンしてんだこの姉はぁぁぁーーーー!!?」
映像が終わるなり、グラッセとムーンが過去イチの怒鳴り声をテルスにぶつける。
そんな2人に対し、テルスは悪意のない顔で首を傾げる。
「時代は多様性よ? 男同士、女同士の恋愛に偏見の目を持たせないためにも、こう言う要素は取り入れないとでしょ?」
「読者に対し
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