「ゼロボロス!!」
彼の目前に姿を現した銀髪、十重二十重の着物を着崩した少女――シンメイだ。
だが、既に攻撃がもうすぐ迫っている。
『馬鹿、前を―――』
「ふふ」
迫りくる光の雨に『気付いている』――彼女はいつもの艶美な微笑みを浮かべた。同時に彼女が光に包まれ、その真の姿を具象した。
『なにっ!!?』
全霊の攻撃『審判の光雨(ジャッチメント・レイン)』が降り注いだのに、割って入ってきた小娘に無力化された。
だが、その『小娘』は自分より遥か高位の存在である事を本能で悟る。そう悟ったと共に、蒼天は荒々しい雲海に染まり、雷鳴が轟き始める。
蠢く雲海の中から『シンメイ』の声がはっきりと、その姿の影が雷光で映った。
≪―――ゼロボロス、おぬしにはこの姿を見せたのははじめてじゃな?≫
『……はは、そうだったな』
雲海をつきぬけ、その姿を晒す。白く帯びた銀色の自身の倍もある東洋に伝わる胴長の龍。黄金に染まった炯眼が彼を見つめる。
彼は苦笑を浮かべ、シンメイを見据えた。
≪わらわはどうにも約束を守る通す気質じゃあないらしい。今から、わらわの独断で、邪魔させていただく≫
『くく、俺も……死にたくないって想っていた頃合だ。どうにも、お前と長くいすぎた』
腹の底から漏れ出す笑いにゼロボロスは活力を取り戻す。
『っゼロボロス!!』
二人は鎌首をゆっくりと動かし、ヴァイロンを見据えた。まだ、彼女は戦意を失っていない。
だが、ゼロボロスは彼女から逃げはしなかった。ただ、負けて死ぬ事をやめただけだった。
『ああ……安心しな。お前からは逃げやしねえ。ここでケリをつけるさ―――昔の俺と共々』
『はっ! 2体だろうと、構わないぞ』
≪わらわは何もせぬ。あくまでおぬしらの個人的な戦いじゃ。――だが≫
ゼロボロスに刺し貫かれた痛々しい傷痕が銀色の魔方陣が浮かび、消滅と共に完全に傷口は残らず消えた。
同時に、彼の中から力があふれ出す。
『シンメイ…』
≪これ以上の下世話はせぬ。さあ、しかとぶつかり合え≫
荒れ狂う天上を遊弋、二体を見下ろすシンメイ。ヴァイロンは内心、舌打ちを零し、もう一度、全霊の一撃で屠ると決意する。
ゼロボロスも同じく力を籠める。シンメイにもらった力をと共に。
『ゆくぞぉおおお!!』
ヴァイロンが具現化させたのは先ほどの黄金の槍。だが、一つではない。魔力を帯びた数百の黄金の槍の波濤がゼロボロスへと放たれた。
『―――『黒龍鎗魔』―――』
彼の眼前、赤い光を帯びた黒い巨大な円陣が出現した。
彼は勢いを殺さず、弾丸のように陣につっ込んだ。この円陣は嘗て、紫苑に取り付いて居た頃に知った『式』を応用し、『円陣を突き抜ける』ことで強化した黒炎を全身に纏い、絶大な破壊力を得る。
『っ!!』
数百の槍の弾雨を粉砕し、ヴァイロンへと激突した(その気になればぶち抜く事は可能だが、ゼロボロスにその選択はしなかった)。
『っ……かはっ……!!』
特攻による衝撃、そのままゼロボロスは加速に従い、共々突き抜けていった。
ヴァイロンの脳裏にはとある記憶が浮かぶ、共に在る黒龍、戦場の光景、根源たる彼の姿を、そして、己の敗北した姿を。
(負けるのか……また、負けるのか……!!!!)
やがて、衝突着地した場所は無轟の家の近くの山だった。周囲は黒炎による余波により森は灰燼に、帰している。
そんな焦土と化した大地に降り立ったゼロボロスは再び、黒衣の男の姿に戻った時、焦土に倒れているヴァイロンも白服の女として戻る。
顔を小さく上げ、意識があると共に敵意の眼差しで彼に問いただした。
「…何故、トドメを……刺さない」
「教える気は無い。あの時は死を選ぼうとしたが―――やっぱ、やめだ」
「ふふ、当然じゃろう。おぬしは腰抜けじゃからのう」
既に少女の姿に戻っているシンメイは転移で彼らの下に現れた。その傍らにはゼツも居た。
「わしも同じでな」
「だろうな」
涼やかな笑みを浮かべ、ゼロボロスは倒れている彼女を引き起こした。
「竜なんだ、人の姿でも大丈夫だろ」
「受け……た、ダメージは相当……よ」
彼の支えを求めようとせず、直ぐに片膝をついてしまう。すると、遠くからこちらへ駆けつけてくる数人の人影をゼロボロスとシンメイは気付いた。
ヴァイロンもその数人がローレライたちだと理解した。だが、彼女の意識は既に暗闇へと落ちていた。再び倒れかけた彼女を、ゼロボロスは抱きとめた。
『ヴァイロン……』
『……』
語らねばならない。些細な事だが二人の因縁を。
黒龍と白竜の因縁は彼らが住んでいた世界より続いている。
住みし世界の名前は『リティアーラ
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