「……神月、遅いね」
待つ事30分近い時間が過ぎた感覚を抱く紗那は不安げに呟いた。
イオンも緊張した顔つきで、エレベーターの外を見据える。
「――あ」
ペルセフォネはこちらにやって来る人影を捉えた。
一同が見つめる中、影はやがて項垂れていたが見知った姿を現して行く。
「神月! 菜月! オルガ! 大丈夫だった……?」
アーファが心配そう尋ねるが3人は急に立ち止まり、返事を返してこない。
無音の沈黙の末に、彼らの間から姿を見せた仮面の女。
その意味を理解したくなかった、と思った一同に、彼女は冷笑をこぼし、
「残念ね、貴方たちが期待していた彼らは私のものよ」
項垂れた素顔を上げ、それをみた紗那たちは顔面蒼白に染まった。
仮面の女と同じ、それぞれモノクロで形作られた仮面をつけている。だが、神月の場合はその顔半分を仮面で固められている。
しかし、素顔に宿す瞳は虚ろでその瞳に愛おしい彼女は映っていないのだ。
そんな凄惨極まる姿を見た、紗那は、
「あ……いゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
心の底から湧き上がった悲鳴をあげ、蹲ってしまう。
勿論、腰が抜けたアーファ、唖然とするペルセフォネ、そして、変わり果てる前の神月の言葉を思い出す。
『もしもの時は、直ぐに逃げろ』
あの言葉を受け入れたくなかった、だが、その言葉を受け入れなければ、変わり果てた彼らの無念を晴らせない。
イオンは震える手を、我武者羅に制して、空間を操るキーブレード『マティウス』で自身を含めた4人を空間転移した。
「――行ってしまったわね……ご苦労、もうその顔芸はいいわ」
「……紗那には二度と会えないかもな」
苦笑を浮かび上げた神月は目を細め、深く深く落胆する。
仮面の女は冷たい声で、言い返した。
「深い絶望を知る。――心の剣はそれによって生まれるときも在る。それに貴方だけに私と同等に語れる権利を上げたのよ。
『Sin化』した者は基本、私に絶対忠節。不必要な発言も出来ないのだから」
Sin化。
仮面の女のキーブレード『パラドックス』によって、他者を支配する能力。
支配の証としてモノクロの仮面をつけ、自我の殆どを支配される(Sin化した者同士の会話など行える。が、彼女に絶対に逆らえない、逆らう行為と思考も出来ない)。
神月は彼女に気に入られ、ある程度の自我を保たれている(それでも反抗出来ない)。
「……何故、俺だけを」
「貴方は私に問いかけた。『何故、こんな事をするのか、何が目的なのか』。
―――その状態ならもう一つ教えてあげるわ。私は今、3つの剣を求めている」
「3つの剣?」
「一つは使用者に永遠の時を生かし、あらゆる力を喰らう暴食の力を宿す剣―――名を永遠剣。
一つは心剣の対極。心剣を喰らい、我が力とする剣―――名は反剣。
そして、最後は――――心剣」
再び、彼に仮面を外して微笑みを向けた仮面の女。
神月は深く眉間を寄せ、見つめた。
「私に従属しなさい。もう、『パラドックス』の呪縛からは逃れられない」
この時、神月は己がとんでもない渦中に巻き込まれたのを悟った。
そして、彼女と共に去る寸前まで紗那の事をずっと気にかけていた―――。
神無の家。
家に駆け込んできたイオンたちを向かいいれ、ショックから倒れた紗那を寝室で寝かしつける。
そして、リビングで紗那以外の全員がソファーなどに腰をかけたり、壁にもたれたまま、神無はイオンの話を説明した。
「……仮面の女ね」
重々しい空気の中、口火を切った神無。
自分の息子、その友人、そして、その恋人まで傷つけた仮面の女に激しい怒りを燈すが、まるで状況をつかめていない事に代わりが無い。
歳の所為だろうか、燃え盛る怒りと同時に冷え切った冷静さが抑止するようになった。
「とりあえず、イオン。ありがとう」
「いえ……逃げる事しかできませんでした」
落ち込んでいるイオンに神無は責めずに肩をたたいて、気をしっかりとさせる。
「それでも、仲間を守った事に変わりは無いさ――気を落とすな。……さて、これからどうしたもんだか」
今回のショッピングモールにやってきていた仮面の女はこの世界にいる強い心剣士に興味を抱いていた。
そして、自分は此処にいることをアピールするために屋上の空間と時間を停止し、やって来るのを待つ。
しかし、何故だろう。選定をし、自らのものにして彼女は何をするのだろう。
問題は此処からだ。仮面の女は何処かへと去った。
「……」
「――諦めるのは速いですよ、神無さん」
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