口をパクパクと動かしたシャオの姿がぶれて、消える。
結果、槍は夕暮れをバックにした虚空を突いていた。
「…ほぅ?」
まるで天に翳している左手を見ながら、ゆっくりと槍を下ろす。
そうして後ろを振り返ると、シャオが息を荒くして肩膝を付いていた。
「はぁ…はぁ…!!」
移動魔法の一つである『テレポ』を使って脱出したシャオを、ジャスは黙って見据える。
そうしている内に、シャオは息が整ったのか立ち上がる。
ジャスが槍を構えると、シャオは顔を俯かせながら口を開いた。
「すっかり忘れていたよ…ジャスさんの『心を読む能力』の事」
思いがけない言葉に、ジャスの動きが止まった。
その間にも、シャオは話を続けた。
「今まで攻撃が防がれていたのは、ずっと僕の心を読んでどう攻撃が来るのか分かっていたからでしょ?」
ジャスの能力は“心”を司る。一度、ハートレスを操った所を見た際に教えて貰った。
さらに、その能力を使って嫉妬、慈悲、信念を元にした三本の槍を作り出したり、自分の『ウィング・モード』みたいに翼を生やして飛ぶ事も出来る。
そして、他者の心を読み取って思考を覗き見る事も。
「正直、その能力ってチートだよ。心は誰にでも存在するから、簡単に読み取る事が出来る……でも、どんな能力にも弱点がある。師匠の言う通り、その心を読む方法だって弱点は存在した」
そう言って顔を上げると、左手の人差し指を見せた。
「一つは不確定な心を持つ事。何て言うか…酔っ払いとか読み取れない行動を瞬時に起こすから、そんな感じの思考を持つ事。だけど、いきなり出来る事じゃないから使えない」
自分の言った言葉を切り捨てると、今度は中指を立てる。
「二つは心を無くす事、でもそれはノーバディになるって事と同義だからボクには使えない。三つ目は心を読む前に素早く攻撃する事だけど、コンマの差での攻撃なんて常人には無理だから使えない」
次々と方法を述べては切り捨てるシャオに、さすがのジャスも目を細める。
その間にも、シャオは小指を立てる。
「四つ目は、心を“無”にする事。これがいいんだろうけど…ボクはまだ修行中で出来ない。だから、ボクにしか使えない五つ目を使う事にしたよ」
ここで言葉を切ると、キーブレードを握り締める。
同時に光輝くのを見て、ジャスが白い槍を握り締めてシャオの心を読み取る。
(力を溜めての斬り込みか…――だが…!?)
読み取った内容に防御の構えを取るものの、シャオの言う方法が引っ掛かる。
それでも迫ってくるシャオを見据えて、来るであろう攻撃に槍を握る。
次の瞬間、突然ジャスの目の前でシャオが消えた。
「――ボクの心に、別の『記憶』を刷り込む方法をね」
「っ…!!」
後ろから声が聞こえ、反射的にジャスは身を屈めて横に避ける。
そのまま声の方に目を向けると、シャオがキーブレードを縦に振るっていた。
自分の予想が外れた事に驚きを隠せないものの、ジャスはとっさに手を広げる。
「ジャッジメント!! 『ケイジ・オブ・ドロウ』!!」
手を握り締め、シャオを四方から清流で閉じ込める。
しかし、シャオは冷静にキーブレードを思いっきり地面に突き刺す。
すると、シャオを中心に地面から爆発が起こって周りの清流を弾き飛ばした。
『イラプション』を使って魔法を打ち破ったシャオに思わずジャスが目を見開いていると、何処か真剣な目で見返した。
「――記憶と心、二つはとても深い繋がりがある。そう父さんが教えてくれてた」
驚くジャスを見つつ、キーブレードを両手で持つ。
「ジャスさんの心を使う力にボクが対抗する方法は、これしかないからね……いろんな人達から貰った、記憶の力でねっ!!! モード・解除っ!!!」
シャオにあの光が纏って弾けると、服の色やキーブレードが前の状態に戻っていた。
『モード・スタイル』を解いたシャオはキーブレードを頭上に掲げた。
(いいか? 戦いには流れがあり、どんな相手にもチャンスもある)
師匠の言葉を思い出しながら、シャオは力を解放する。
異世界の少女が行なった地獄の特訓をした事によって習得した技を。
(そのチャンスが来たら、絶対にその機会を手放すな。次があるなんて考えは捨てろ)
ジャスの能力を封じた今――…一撃を与えるチャンスはここしかない。
キーブレードに自分の持てる全力を注ぎ…解き放つ。
ジャスを中心に、辺り一帯に光の柱が降り注いだ。
「はああああぁ!!!」
「これぐらい…何て事は――っ!?」
即座にジャスが『ロンギヌス』を作り出し、頭上から襲い掛かる光を吸収する。
こうして攻撃を防御するジャスだったが、突然表情を変えた。
頭上の光を吸収する自分に向か
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