その頃、ウィドはと言うと―――
「――最後に、隠し味をいれて…っと」
そう言って、ウィドはなにやら怪しい物体を緑色の液体の入ったフライパンの中に入れる。
すると、ジュワァと嫌な音が辺りに響き、黒っぽい煙が立ち込める。
ここでフライパンの火を消すと、最後までやり遂げた表情で額を袖で拭った。
「今回の料理も、我ながらいいデキですねっ!!」
だが、この事を何も知らない二人が見れば『何処がっ!!?』と叫びたくなるような代物だ。
まず、フライパンの中身の殆どが緑色の液体で構成されており、未だに黒っぽい煙が立ち上っている。
しかも、煙は焦げた臭いではなく生モノが腐った臭い。それ以外にもいろいろあるが、すべてを語ると時間がかかるのでこの辺りで省かせて貰います。
満足げに出来上がった料理をスープの取り皿に盛り付けるウィド。そうして四人分の料理をテーブルに準備した所で、玄関のドアを見た。
「それにしても、三人ともどこまで行ったのでしょうか……折角の料理が冷めて台無しになってしまいますよ…」
もうとっくに台無しになってしまっているが、幸か不幸か、そんなツッコミをしてくれる者はここには誰もいない。
手を顎に当てて少しだけ考えると、ウィドは三人を探そうと玄関に歩み寄った。
「そうそう…これも、持っていきませんと」
急に途中で足を止めるなり、ウィドは近くの壁に立て掛けてあった一つの剣を手に取る。
それは少し前にこの世界で見つけた銀色のレイピア。一目見た時にこの剣から不思議な何かを感じ、今は自分の武器として使っている。
剣を腰のベルトの留め具に付けて軽く調節すると、ウィドは玄関のドアを開けた。
「ううっ…寒さが身に染みる…!!」
そんな年寄り臭いセリフを吐きながら、ウィドは両手で身体を抱きしめながら雪の中を歩く。
辺りを見回しながらルキルや、アクアとゼロボロスを探し首を動かす。
―――その時、近くにある木の上の方で空気を切る音が聞こえた。
「っ…!?」
その音に気付いてすぐに横に跳躍する。
同時に、自分の立っていた地面に積もっていた雪が衝撃波に当たって土と共に周りに飛び散る。
その光景を視界に入れつつ居合抜きの構えを取っていると、一人の男が木の上から飛び降りて着地した。
それは白いダボッとしたズボンに、裾が膝元にある緑の服を着ている。短い青い髪の赤い目をした男だ。
突然現れた中国風の衣装の男をウィドが睨みつける。すると、男はこちらに向かって剣先を向けた。
自分の持っている剣と同じ形をした、金色の剣で。
「あんたか、シルビアを持っているのは」
「あなたは、一体…!?」
警戒心を露わにするウィドに、男はただニヤリと笑った。
カァンと、雪の積もった木々の間を乾いた音が響く。
ルキルの持っている木刀が上に弾き飛ばされ、やがて雪の上へと落下する。
アクアはキーブレードを握ったままルキルを見ると、目の前で膝をついた後に両手を地面につけた。
「はぁ、はぁ…!!」
「勝負アリ、だね」
荒い息をするルキルに、ゼロボロスがジャッジを下す。
アクアはフッと笑ってキーブレードを消すと、ルキルに手を差し伸べた。
「大丈夫?」
「あ…ありがとう、ございます…!!」
息を荒くしながらも、ルキルはアクアの手を握って立ち上がる。
アクアとの戦いで疲労した身体をふらつかせつつ、飛ばされた木刀を拾おうと近付く。
そんな彼を見てアクアが微笑んでいると、隣に来たゼロボロスが囁いた。
「――どうだった?」
その問い掛けに、アクアは複雑な表情で顔を俯かせた。
こうして戦ったのは彼の為でもあり、あの世界であった“リク”なのかを確かめる為でもある。
アクアは顔を俯かせたまま、ルキルと戦って感じた事を口にした。
「…あの子と違って、テラの力は感じなかった。ただ…」
「ただ?」
「それに近い何かは感じたわ。テラの…――キーブレードと同じであって同じでない力……それが、彼の中にある」
「それって一体…?」
ゼロボロスが首を傾げた直後、何処からか爆発音が響いた。
曇天の空に多くの鳥達が飛び交う中、三人は音のした方向に目を向ける。
「今のはっ!?」
「あの方向は…!!」
ゼロボロスが驚いていると、ルキルが何かに気付いて音のした方向に走り出した。
「ルキル、待って!!」
「早く追いかけよう!!」
―――爆発が起きる、少し前に遡る。
男が近付き、握っている剣を素早く連続で振るう。
その攻撃をウィドは避けつつ、男が攻撃を終えるのを待つ。
最後に力強く剣を振るった攻撃を避けるなり、ザッと足を踏み入れ―――瞬時に男の後ろに移動した。
「――『一閃』っ!
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