夕陽が沈む事は無い、黄昏の町―――トワイライトタウン。
町のシンボルともなっている時計台がある駅前広場前に、突然眩い光が現れた。
すると、光に誘われるように列車が現れるが、まるで幻影のように一瞬で消えてしまう。
やがて光も収まると、そこには茶色のニット帽を深く被った灰色の髪に青い目をした一人の少年が立っていた。
「――着いたぁ!!」
歓喜に近い声を上げながら、少年―――シャオは両腕を大きく伸ばす。
そうして背伸びをすると、目の前にある夕陽をボンヤリと眺めた。
「ジャスさんもすごいよ…――『過去の異世界』に行く切符なんてものくれるんだから…」
そう呟くと、黒のズボンのポケットに手を入れる。
そこから取り出したのは、少し大きめの一枚の白いカード。
異世界から元の世界へと戻る為に必要な、大事な物。
「父さんと母さん、今何をしてるのかな…?」
カードを見ながら、ふと両親の事が頭を過ぎる。
だが、ハッと顔を上げるとブンブンと激しく首を振った。
「し、知らないよ! 元はと言えば、あっちが悪いんだから…!!」
沸々と沸き上がる怒りを、今は異世界の未来に居る両親にぶつけるシャオ。
そうやって自分を正当化していると、坂から誰かが登って来る。
目を向けると、この町の子供が数人、青い棒アイスを食べながら駅の中に入って行った。
「あのアイス…」
子供達が持っていたアイスに、シャオは思わず興味を引かれる。
あれは自分の世界にも売ってあるアイス―――シーソルトアイスとそっくりだからだ。
「異世界って言っても、同じなのかな? ――マニーはあるし、買ってみようかな…?」
財布を取り出して中身を確認すると、シャオはアイスを売っている店を探しに坂を降りていった。
場所は変わり、キーブレード墓場にある広い荒野。
止む事の無い砂埃が低く宙を舞う中に、エンは忽然と立っていた。
彼の視線の先には、殺風景な荒廃した大地と大きく抉られた地面。
「またここに居たの?」
今となっては聞き慣れた声に、エンは振り返る。
そこには仮面の女性と、同胞となったアルガとティオンが立っている。
「ええ…まあ」
エンは愛想笑いを浮かべ、一つ頷く。
女性は何処か不満そうな目を向けるが、すぐに息を一つ吐いてエンを見つめた。
「アバタールから聞いたわよ。あなた、これから先は《エン》と名乗るそうね?」
「何か問題でも?」
「いいえ……これでまた一歩、記憶の呪縛から解き放たれたのだと思うと嬉しくって」
「そう…ですね」
嬉しそうに笑う女性とは対照的に、エンの表情は辛そうだ。
自分自身は憎い。だが、残っている記憶に生きる人達に対しては憎しみを感じない。
それが計画の妨げになるとしても…――彼等に対しての思いは、消したく無い。
「戻りましょう。あなたの連れ…――フェンやセヴィルも帰って来ているわ」
エンの考えを知ってか知らずか、女性は優しく声をかける。
そして、振り向いてアルガとティオンに笑いかけた。
「アルガ、ティオン。お願いね」
その言葉に、二人は頷くと虚空に手を伸ばす。
互いに取り出したのは、金剛の大剣と白乳色のレイピアだ。
二人はある人物によって弱体化されたと聞いたが……どうやら、異世界に渡るぐらいの力は残っていたようだ。
そう考えている間に、二人は心剣を握り『レプセキア』に戻る為に上へと掲げた。
「「―――っ?」」
だが、発動しようとした直前、二人は僅かに顔を上げる。
この微弱な変化に気付き、女性は首を傾げた。
「どうしたの?」
女性が聞くと、アルガとティオンは剣を下ろして感じた事を報告した。
「今…時間の揺らぎを感じた」
「私も、空間の揺らぎを感じた」
「どう言う事です?」
二人の話にエンも問い掛けると、より詳しく話した。
「何者かが、未来からこの世界に介入した」
「アルガの言葉にさらに付け加えるなら、こことは異世界の人物が」
「私と同じように…?」
この二人の説明に、エンは目を丸くする。
異世界を渡る。それは世界を渡るのに比べれば遥かに難関に近い事だ。
しかし、今。その人物がこの世界にやって来た。方法はどうであれ、自分達の邪魔をする可能性は大いにある。
それを感じ取ったのか、女性はすぐに二人に命令を下した。
「二人とも、すぐにアバタールや睦月のような実力者を呼んで――」
「あなたが動く必要はないですよ」
そんな女性の命令を、突然エンは遮った。
「エン…?」
これには女性だけでなく、アルガとティオンも首を傾げる。
三人の視線を受けると、エンはフッと笑って腕を組んだ。
「まずは、相手の実力を知ってからでも遅くは無いでし
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