その後、シャオはハイネからおもちゃの剣―――ストラグルソードを貸してもらい、ピンツからパフォーマンスの説明を受けた。
こうして一通りの説明や準備を終える頃には、見かけない少年がパフォーマンスをするとの噂を聞きつけたのかさっきよりも観客が増えていた。
「あのボールを落とさすに打ち上げる、か…」
地面に置いてあるボールを見ながら、シャオはおもちゃの剣を両手で握る。
そのままスッと腕を上げて片足を前に出すと、剣を斜めにして構える。
これを見て観客達がざわめく中、シャオは小さく笑った。
「さて…かるーく準備運動でもやっちゃいますか」
そう呟いた直後、シャオはボールに向かって走りこむ。
すぐさまボールを上に飛ばすと、上空でボールを何度も叩き出した。
「すごーい!」
「上手い!」
オレットとピンツが声を上げると、他の観客も歓声を上げる。
やがてシャオが地面に降り立つと、すぐにボールの落ちる場所に駆け込んで打ち上げる。
すると、ボールは少し先の方に飛んでいってしまい、走っても間に合わない場所に落ちて行く。
観客が「あー」と残念そうに声を上げる中、シャオは一人冷静にフッと笑みを浮かべて突きの構えを取った。
「『ガーレストローク』!!」
まるでボールが地面に落ちる少し手前を狙うように、一気に近付き突きを放つ。
この攻撃が当たった瞬間、ボールは弾けるように真上に吹き飛んだ。
これには観客達が驚きの表情を浮かべる。だが、シャオの隠し球はこれだけでは終わらなかった。
「まだまだ、『エアリル・レイヴ』!!」
シャオは落ちてきたボールを再び吹き飛ばすと、飛び上がって連続で叩きつける。
空中で放つシャオの技に、観客達の歓声が更に大きくなる。
彼らの声に何処か心地よさを感じつつも、ボールと同時に地面に降り立った。
「ふぅ…」
一息吐き、シャオは額に浮かべた汗を手の甲で拭う。
そうしていると、オレットとピンツが目を輝かせて少年に駆け寄った。
「すごいね、君!」
「こんなの初めて見たよ!」
「エヘヘ〜」
二人の言葉に頭を掻きながら笑っていると、さっきの女性がニコニコと近づいた。
「すごかったわ。ハイ、バイト代」
そう言って、シャオにマニーの詰った袋を渡す。
渡された袋の重みに思わず中を確認すると、何と五百マニーも入っていた。
「こんなに…!? やった、ありがとう!!」
嬉しそうに女性にお礼を述べていると、ハイネが顔を逸らしながら近付いてきた。
「お前…名前は?」
そんな事を聞くものだから、シャオだけでなくオレットとピンツも口を半開きにする。
しかし、すぐにシャオはハイネに笑みを浮かべて自己紹介した。
「ボクはシャオ! よろしくっ!!」
そう言うと、シャオは満面の笑みを浮かべてハイネに向かって親指を立てる。
ハイテンションで自己紹介するシャオに、ハイネは苦笑しつつも軽く頭を下げた。
「さっきは、悪かった」
「いいよ、別に。こうしてバイト代も手に入ったしね!」
ハイネに首を振ると、マニーの袋を見せつける。
三人は軽く笑うと、ハイネが自分の胸を指して話し掛けた。
「自己紹介、まだだったな。俺はハイネ、こっちはピンツとオレットだ」
「よろしく」
「よろしくね」
二人が挨拶すると、シャオも満面の笑みのまま頷いた。
「うん、よろしくっ!」
そうして互いに自己紹介を終えると、不意にピンツが首を傾げた。
「シャオは、どこから来たの?」
その質問に、シャオの表情が強張る。
シャオはどうにか目線を逸らし、ギリギリで言える答えを返した。
「えーと…ずっと遠くから、かな?」
「何でここに?」
「いろいろ、ね…」
更なるオレットの質問に、シャオの表情が暗くなる。
三人は思わず顔を見合わせていると、急にシャオが顔を上げた。
「ごめん、ボク行きたい所があるから!! じゃ、バイバーイ!!」
それだけ言うと、まるで逃げるかのようにしてその場を走り去って行った。
町の中心にある大きな時計台。
ここに来る途中にあった鍵がかかった扉を外し、シャオは時計台の上へと辿り着いた。
夕陽が全ての町を美しく照らす絶景に、シャオは目を輝かせた。
「うわぁ…!! すっごい景色だ……やっぱり、高い所はサイコーだねっ!!」
そんな歓声を上げながら、シャオは時計台の真ん中に腰掛ける。
ハイネ達と別れた後、ふと時計台を見てここに来たくなった。
そうして町の景色を見ていると、何処か安心したように息を吐いた。
「異世界って言うから、どんな所かと思ったけど…――案外普通なんだね」
ジャスに聞かされた注意事項を思い出しながら、シャオはポケットに手を
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