神の聖域レプセキア、第二島。
第二島はレプセキアの各島に配置されているずんぐりむっくりな丸みのラインをした機械兵士の製造工場として機能していた。
だが、仮面の女の指示で機械兵士の製造から別のものを製造に優先させた。
それは鍵の英雄の贋物。それは鍵の剣の模倣。それは戦の為の駒。
名前は『KR』。正式名称『キーブレード・レプリカ』。
「――KRはある程度そろえたようね」
百体ほど並び立つ鎧の騎士団を一望しながら、仮面の女――カルマは高台から口火を切った。
その背後、仮面をつけた淡い緑の衣を纏い、支え杖を持つ老人――ベルフェゴル、白衣に赤いジャージの仮面の青年――レギオンが居た。
彼女の言葉に、老人が一歩小さく前に出て、問いかけを返す。
「ええ、現在も製造をしておりますぞ。―――では、実戦でも投入するつもりで」
ベルフェゴルの質問に、カルマは仮面の内側で目を細め、KRたちを一望しなおす。
最低限の三属性の魔法(ファイア・ブリザド・サンダー系統)、様々な戦闘を記憶(インプット)させている。
「そうねえ」
カルマが取り出した水晶――先の梟型ノーバディの消滅で亀裂が起きて確認する事ができなくなっている――を見つめ、
「既に情報は素破抜いたし……場所は『ビフロンス』……30体ほど投入しましょう」
「構いません。たとえ、損傷してもデータが取れますし」
今度はレギオンが礼儀良く答えた。続いて、ベルフェゴルが杖を床にトンと突いて、発言の前触れを行う。
「――後、他の心剣士たちを連れて行くべきではなかろうかのう? いくら、KRの強みは数といえど」
「……クェーサーみたいに大損だけはしたくないわ。ま、直ぐに3人ほど新しく駒を手に入れたけど。
―――……よし、各々に『転移』の魔法を籠めた小道具を所持させて、追い込まれたなら此処に戻すと言う戦法で行きましょう」
「では」
「3,4人程度で充分。あくまでKRのデータを集めるだけ。KRが全滅したら、同じく此処に戻す。……アバタール、貴方が選んでおいて」
「……解った」
高台にある唯一の出入り口の傍で壁にもたれかかっている黄色の髪色に、群青の衣を纏った年―――アバタールが静かに頷き返し、出入り口の中へと消えていった。
彼の姿が消えていくと共に、カルマは再びKRの軍団を一望した。
「……」
「どうかしたのですか」
背後からでも感じ取れる何処か寂寥を漂わせた彼女を怪訝にレギオンが一声掛けた。
「――何も。引き続き、製造をお願いするわね」
カルマははっきりと言って、二人の間を通り抜けて出入り口へと入っていった。
残された二人は作業に取り掛かる前に、雑談を始めた。
「これほどの数が出来上がってもまだ作るのじゃなあ」
ベルフェゴルはやれやれと困ったような声色で、KR製造の協力者たるレギオンに言った。
二人は技術者や研究者と言った役割、経験した事があり、赤の他人で、此処で出会い、同じ仕事を任されたかなりの年の離れた同輩だった。
「そうですね。事実、数はまだまだ足りないようです」
「やれやれ…倉庫が空になるわい」
「凄い数でしたよね。ずっと溜め込んでいたんですか?」
「まあの……老人の暇つぶしの趣味じゃよ」
半神ベルフェゴルは序列では最初から数えた方が早いほどの古参で、司る権能は『構築』。物質を付加・装飾する事ができる。
例えると、石ころにベルフェゴルの『構築』の力を利用すれば、外見も硬質も全て変化される。
今回、KRの鎧の全ては彼が今の今まで厚めに集めた鉱石や素材の一切を利用したものだった。
「キルレストと言う同じ半神がおっての、同じく物作りが好きで、よくくれやったんじゃ。…もし、やつがいたららあの贋物(がんぶつ)キーブレードも少しはましなものになれたのじゃがなあ……」
老人は残念そうな声で永延とブツブツと呟きはじめる。
「……」
レギオンは苦笑の笑みを仮面の内側で洩らす。
彼が呟いた言葉はあくまでも自分たちが作り出したKRをより優れたものにしたい、心から洩れた呟きだった。それが作り手の願望なのだ。
「――そろそろ、製造に取り掛かりましょうか」
「……そうじゃな」
レギオンの声にはっと我に返ったベルフェゴルはわざとらしい咳を吐き、くるりと出入り口のほうへと足早に歩き出した。遅れて、彼もその後を追うように歩き出した。
アバタール、彼は仮面の女に協力する裏切り者の半神である。
司る権能は記憶。すぐれた記憶力で、忘れる事は無いに等しい。当然、それに見合った記憶量を有している。
だが、彼にとって『全てを記憶する』ことができなかった人物が数人居た。殆どが「膨大すぎて頭が割れそうになる」からだった。仮面
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