「おいおい、まだ舐めているのか?」
神無とブレイズは何千年との差が在る。戦いの経験も、知識も、全て、彼女が上だろう。
だが、彼はその差に驕らず全力で挑んでいる。
「なに……!?」
体勢を変えて、地に降り立つ。相手を睨んだ。
「そりゃあ、てめえが強いのは理解しているさ。だがな、てめえは俺を、人間を舐めている」
「それがどうした…?」
「それじゃあ、ご自慢の強さも腐るわ」
「!?」
「俺ぁ昔、邪神って呼ばれるバケモノと戦った事が在る。お前みたいに人間を野の草、道端の石ころみてえに馬鹿にして、見下してた。だが、ソイツは俺に屈した。負けた。―――ま、最後は危うく道連れされかけたが……まあ、いい。
俺はいつだって相手に真面目に全霊で挑む。……相手が人間でも、龍でも、邪神でも!! お前ら、半神でも!! ……お前みたいに『人間だから加減してやる』って見下した態度はクソ喰らえだ!! ありがた迷惑ってやつかね?
でも、それで追い込まれて『本気を出す』じゃあ説得力もクソもねえし……」
「っ!!!!」
神無の怒声による言葉、ブレイズの中で何かが切れた。込み上げる憤怒が、その身を包み始める。
「―――っぁあだああああまああああれえええええええええええええええええええええ!!!!」
自分と言う存在の玉座が彼によって粉々、今、眼前の彼と対等に下ろされた。
許さない。此処まで馬鹿にされ、平等と言う言葉に虫唾を感じたのは初めてだ。
ブレイズの燃え盛るような怒りが蒼炎となって、包み込んだ。神無は、相手の逆鱗を垣間見て、静かに構える。
女神の怒りは、荒れ狂う炎を纏った拳と共に繰り出された。
「!!」
帰還を待つ半神たちが一斉に感じ取った気配を理解し、驚愕に満ちた表情で互いに見合った。
特に、同じ四属半神の一人、常におびえた表情をした少女――イリシアが人一倍慌てだす。
「ぶ、ブレイズが!! 嘘、嘘!!?」
負けた、などの不測の事態ではない。彼女が『本気』になった事への混乱だった。
慌てだす彼女をセイグリットがしっかりと両肩を掴んで、落ち着かせる。
「落ち着きな、ほら」
ついでの拳骨で我に戻させ、我に返ったイリシアが先ほどより落ち着いているが、その目は動揺の色を消しきっていない。
怪訝になったシンクは彼女らに尋ねた。
「ブレイズ、さんがどうしたんですか?」
「……最悪。神無って奴は死んだなって事よ」
深く強張らせた表情で、セイグリットは言い切った。
その言葉に絶句するシンクたちだった。アルカナも直ぐに駆け出して、止めに向かうべきか考えていた。
ブレイズは純粋な戦闘能力では半神の中で、トップクラスだ。そして、彼女の『本気』――蒼炎を身にまとい、巨大な火の女神として顕現した姿『蒼炎の女神』―――を止めれる可能性は低い。
「――っ」
何を迷う。
アルカナは自身を叱咤し、森の奥へ、蒼炎の元へと駆け出そうとした時、
「っ!?」
突如、駆け出そうとしたアルカナの傍を通り抜け、走り去っていく茜に靡く髪色をした着物を纏った女性の姿を見る。
驚く中、その女性が見覚えの在る人―――明王凛那である事を気付き、呼び止める前に彼女は森の奥へと消えていった。
「――どうする、アルカナ」
呆然とする彼に声をかけた屈強で大柄の物静かな男の声で振り返った。
「ビラコチャ……お前はどう思う、助けに行くべきか」
声をかけた男――ビラコチャは腕を硬く組み、少し思考をめぐらせるため、口元を指で隠す。
ビラコチャは特殊な半神だった。『天地人』、それは人に様々な文明の補助を促す事が使命とするものだった。
時に武器を、時に戦を、時に医学を、時に農耕を―――その点ではかなり人寄りの半神だった。
「……一度定めた戦い、勝手に変えるのはどうかと思うがな」
「だが」
「まだ、ブレイズは納得していない」
遠くに見える蒼炎の光を見据えながら、ビラコチャは彼ら人間を信じた。
ブレイズの激昂の少し前、一方の皐月とシムルグでは―――。
風を操るシムルグに吹き飛ばされ、共々、到着した場所は距離をあけろと命令したブレイズとかなりの距離をとっていた。
風の束縛から解放され、無防備に落下せずに彼は受け身をとって、シムルグを見据えた。
「ああ、ごめんね。妹の火力は結構、凄いからね」
吹き飛ばした張本人、女子学生を想起する学生服のシャツに濃い緑のスカートを着た女性、シムルグは気にすらしていないような声で言った。
皐月は怒りより呆れがこみ上がったが、相手が相手と思って、永遠剣を抜き取り、臨戦態勢ながらもその言葉を返した。
「妹?」
「ブレイズの事よ。あたしたち四属半神は双子みたいに『同時』に生まれ
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