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第三章 三剣士編第九話「ゼロボロス/シンメイ」



「邪魔をするな、貴様」

 ゼロボロスが相手になっているのは大斧を片手に持つ男と、十字剣を手に戦う女。
 大斧の一振りと鉄色のように染まった両腕で『弾いた』。

「くっ」

「悪いな、そんな斧じゃあ切れねえよ!」

 ゼロボロスの人間形態時、彼は肉弾戦を好む。さらに、体の部分を自身の龍鱗を帯びる事で防御力、攻撃力を高めた。
 だが、彼の一撃は一方の十字剣の女の発動した七星の防御で防がれる。

(あいつは一向に戦闘に加わらねえ。防御の高さから、サポートにし徹している。倒すなら、あいつと言いたいが)

 眼前で斧の攻撃を叩き込んでくる男、厄介な事に『鎖』のような武器まで仕込んでおり、体に巻き付けてきては、乗じて斬り掛かってくる。相当の達人だった。

(そういえば、あいつの戦い方がよく知らねえな)

 シンメイはいつも扇子片手に涼みきった顔色で作戦を講じているような人物だった。
 つまるところ、彼女の戦闘した所が知らない。見た事も無い。あるのは彼女の龍の姿だけ。あれも戦ったには入らないだろうし。

(―――大丈夫か、あいつ?)

 一抹の不安を拭おうと、ゼロボロスは真っ先に大斧の男に挑んだ。速攻で潰す、と。

「無駄だ、アイギス!」

「了解、ベルモンド」

 大斧の男――ベルモンドの声に、十字剣の女――アイギスが応えた。
 ゼロボロスがくりだした飛び蹴りが彼の目前で張られた結界で防がれ、彼はゼロボロスの片足を『鎖』で絡めとって、地面に叩き付けた。

「ぐぁっ!?」

「終わりだ!!」

 倒れて、ベルモンドの持ち手を掴んだが、かまわず大きく振り払い、振りかぶって、狙いをゼロボロスの首へと薙い―――。

「――『濡羽』」


 ズドドドッ


 振り払われた片手はパーのように手を広げ、指先は上半身を向いていた。しかも、彼の首にも黒い龍鱗が張り巡らされ、完全防御の姿勢をとっている。
 何があったのか理解できない呆然とするアイギスに、ゼロボロスはベルモンドを彼女の方へ投げ飛ばして正気へとさせた。倒れている彼の上半身には黒い破片が幾つも刺さっており、内の一つは首近くにさされている。呼吸はしている、だが、意識は完全に途絶えていた。

「―――てめえの防御陣は確かに厄介だ。あらかた防がれる。だが、てめえが『防ぐ必要も無い』と自惚れたときがチャンスだった。
 俺の竜鱗を射出する秘技『黒腕−濡羽−』―――俺が込める威力によって変換する。気絶させる程度の威力をぶつけたんだ、そいつが倒れるのは無理ねえ」

 刺さった欠片の一つ一つが彼の龍鱗で、威力がそれほどのものにしているのなら、彼が倒れてしまうのは不愉快ながら納得してしまう。

「さて、次はてめえだ」



「おお、怖い怖い」

 一方のシンメイは全くと言っていいほど、二人の攻撃を読み、優美に躱す。
 もちろん、二人も腕利きの剣士。冷静に攻撃を見計らって、斬り掛かり、魔法を繰り出してくる。

「……」

 このまま、避けてばかりは時間稼ぎにはなっても勝つ事にはならない。
 ゼロボロスも自分の相手を片付ければこちらへ駆けつけてくれるであろうが、悠長に待つほど自分は、弱くなど無い。

「仕方あるまい」

 長剣の青年の放った一閃を躱し、自分の背後を見計らっていた小刀の女の一突きを素早く翻り、扇子で弾き、二人から間合いを取った。
 シンメイは数千年を生きる龍神。彼女は様々な世界を渡り歩いた経験は意外と少なかった。指で数える方が早い。優れているのは知識だけではない。
 龍、特有の絶大な戦闘力を重ね持つ彼女は「戦闘で戦いやすい格好」を身に纏うことで、普段の策謀の軍師のような雰囲気から万能の戦士へと豹変する。

「―――『龍武装麗(りゅうぶそうれい)』―――」

 一瞬で、艶美に肌を露出した着物を身に纏っていた彼女の衣装が変異し、軽装武装の鎧と、衣を身に纏っていた。
 しかも、手には彼女より一回り長大な銀色に染まった直剣、長く伸ばした銀髪は後頭部から彼女の本来の姿である龍尾として伸び、靡いていた。

「ふぅ、久しぶりの格好じゃ」
「……」

 既に、長剣の青年は動いていた。たとえ、相手がいかに姿を変えようと、倒す。
 まだ、KRの全滅の報せがない。まだ、自分たちが戦う猶予が在る。

「―――ふふ」

 斬りかかった彼の明るい黄土色の長剣が強く輝き、シンメイは剣ではなく、靡くで翻りと共に振り払って、受け止め、防いだ。

「ほう!」

 籠められた力が相当なものなのか、防いだと共に、余波が周囲を吹き荒んだ。
 しかし、彼女の龍尾は傷一つつかず、一気に青年を払い除けた。

「くっ――」

「捉えた! 『氷変塊』!!」

「ん」

 シンメイの周囲に突如立ち上がった巨大な氷柱が四方聳え、その頭上から先ほどの小刀の
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