世界と世界を結ぶ、キーブレード使いしか知らない禁じられた道―――異空の回廊。
その回廊に、四人の人影があった。
「――二人とも、大丈夫ですか?」
青い鎧を纏い、回廊に漂う闇から身を守っているアクアは心配そうに振り返る。
すると、ゼロボロスと同じように、生身の状態で歩いているウィドとルキルが笑顔で頷いた。
「ええ、何とか」
「俺も平気だ」
「アクア、そう心配しないで。彼らには闇に飲まれないよう、取って置きの《指輪》を渡してあるんだから」
不安を隠しきれないアクアに、ゼロボロスは苦笑しながら二人の手を見る。
彼らのそれぞれの右手の人差し指には、自分が渡したある『特殊な指輪』を付けさせている。
ゼロボロスの視線が指輪に向いているのに気付いたのか、ウィドは指輪を付けている手を見せながら聞いた。
「それにしても、良かったのですか? 私達がこの指輪を使っても?」
「別に構いませんよ。僕はちゃんと回廊に対しての耐性を持ってますから」
このウィドの問いに、やんわりと答えるゼロボロス。
そう…今となっては、二つの指輪には何の執着も感じない。それならば、誰かの役に立つ為に使った方がいいに決まっている。
そんな会話をしていると、ふとアクアが周りの空間を見回した。
「それにしても、まさかこう言った回廊を歩きで移動するなんて…」
「すまない…俺達が回廊を渡る術を持っていないから…」
「気にしないで。今まで乗り物を使ってきた分、こう言うのも悪くないから」
頭を下げて落ち込むルキルに、アクアは優しく言葉を返す。
「みんな、見て」
その時、ゼロボロスが前方を差す。
三人も目を向けると、回廊の出口なのか光が口を開いていた。
「そろそろ次の世界に到着ね…――準備はいい?」
アクアが聞くと、三人は一斉に頷く。
それを確認すると、四人は光の先の世界へと進んでいった。
丁度時を同じくして、コロシアムの前にある人物が黒い煙と共に現れる。
青い炎の髪をした、全体的に黒い人相の悪い男―――冥界の神様であるハデスである。
ハデスは忌々しそうに出来上がったばかりのコロシアムを見上げながら腕を組んだ。
「とうとう地上のコロシアムが復活して、みーんなあっちに行きやがったか…――くそっ、このまま黙っている俺様ではないぞ…!!」
イライラを隠す事もせずに、歯ぎしりしながらコロシアムを睨みつけるハデス。
だが、すぐに怒りを収めてこれからの事を考えだした。
「さて。幸いにもヘラクレスが留守なこの状況をどう使うか…――ん?」
急に門から人の気配を感じ、ハデスはすぐさま煙と共にその場から消える。
それとほぼ同時に、アクア達がコロシアムの前にやってきた。尚、アクアはこの世界に来たと同時に鎧を脱いでいる。
そうして四人は目の前にある大きなコロシアムを見上げた。
「どうにか、次の世界に着いたね」
「それより、この世界は…」
ゼロボロスの言葉に続くように、ルキルは疑問を投げつける。
すると、アクアが思い出すようにして呟いた。
「『オリンポスコロシアム』…」
「アクア、知ってるの?」
「ええ。前に…――いえ、昔にって言った方がいいわね…」
首を傾げるゼロボロスに、アクアは未来だと思い出して言い方を変える。
ゼロボロスだけでなく、二人の事情を聞いていたルキルも納得した瞬間だった。
「――素晴らしいっ!!!」
突然の叫び声に、思わず三人が目を向ける。
そこには、何とウィドがこれでもかと目を輝かせてコロシアムを見ていた。
「「…………………………エ?」」
「…はじまった」
ウィドの変わりように二人が茫然とする中、ルキルは何かを諦めたように頭を押さえこむ。
その間に、ウィドは勢いよくコロシアムに近づいて柱の一つを抱きしめた。
「うおおおおおおおおっ!!! なんと美しい建造物!! それなりの古さを思わせる程よい老朽化!! まさに古来太古の玉手箱やー!!!」
まるでどこぞの落語家のようなセリフを言いながら、人目を気にせずに高笑いをするウィド。
完全に人が変わってしまったウィドを見て、ゼロボロスは未だに頭を押さえるルキルに目を向けた。
「ルキル…あれは…?」
「…先生、ああ言った古い物を見るとあんな性格になるんだ…――俺は『学者モード』と言っている…」
「君…苦労してるんだね…」
「もう、慣れたよ…」
思わずゼロボロスが肩を叩くと、ルキルは苦労を滲ませて遠い目を浮かべる。
そんな二人の会話が耳に届いたのが、ウィドは動きを止めて振り返った。
「そこ何を話している!!? さあ、私について来い!!! 待っていろ遺跡よ、すぐにこの私が貴様の全てを調べ尽くしてやるか
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