コロシアムの中にある、先ほどまで自分達が戦っていた広場。
リリスとクォーツが去り、気絶していたハデスも消えたこの場所で今、リクはある人物と向かい合っていた。
一年前、『忘却の城』で自分を元にして作られ、戦いに敗れて消えていった自分のレプリカ―――ルキルを。
「それにしても、まさかお前が生きてたとはな」
「…フン」
皮肉を混ぜてリクが言うと、ルキルは顔を逸らす。
記憶に残る彼ならば挑発するなり怒りを露わにしたりするのに、そんな事をせずにただじっと立っている。
この驚くべき変化に、リクは思わず挑発的な笑みを浮かべた。
「どうした? 随分と丸くなったな、ニセモノ?」
「ニセモノじゃない…――俺は、“ルキル”だ」
「…そうか」
何の迷いもなく答えるルキルに、リクはそれ以上何も言わずに口を閉ざす。
こうして二人に沈黙が圧し掛かるが、黙ってては行けないと感じたのかリクはルキルに話しかけた。
「不思議だな。俺とお前は敵だったのに……こうして、落ち着いて話が出来るなんてさ」
「大切なモノ、見つけたからな…」
何処か愛しそうに呟くと、今まで目を逸らしていたルキルがリクを見た。
「…ソラは――」
「ん?」
「ソラは、俺の事…何か言ってなかったか?」
不安そうに聞くルキルに、リクは忘却の城でのナミネの話を思い出す。
機関の思惑でソラの記憶がナミネによってバラバラにされた際、レプリカにも自分の記憶と偽の記憶を植え付けられていた。彼を『リク』と思わせ、ソラの実力を測るために。
機関の一人であり城の管理者だったマールーシャを倒した事で和解はしたと言っていた。だからこそ、聞きたかったのだろう。
しかし、ソラはもうあの城の記憶を全て忘れている。自分達にソラの記憶があるのが何よりの証拠だ。
例え、ナミネとの約束の欠片を思い出したとしても…ルキルの記憶は何一つ残っていない。
「――いや、何も」
「そうか…」
正直に答えると、ルキルは何処か寂しそうに呟く。
再び二人に沈黙が過り、リクは選手用の通路に目を向けた。
「俺はそろそろ戻る。早く戻らないとソラ達がうるさくて仕方ない」
「そうだな。俺も戻るか…――あいつの事だ、きっと質問攻めされるだろうな」
ソラの事を思い出しながら、どうにか前向きに言葉を紡ぐ。
すると、リクは溜息を吐いて腕を組んだ。
「そうして、友達になればいいさ」
「え?」
思いがけない言葉にルキルが見ると、リクは笑ってこちらを見ていた。
「例え記憶を失っていても……ソラやカイリなら友達になってくれる。何度でも、な」
「…まさか、ホンモノにそんな事言われるとはな。同情か?」
「事実を述べたまでだ。あいつはそれが取り得だからな」
笑ったまま目を閉じると、少し前の戦いを思い出す。
闇に染まり、姿さえも別人に変えた自分をソラやカイリは受け入れてくれた。
旅を見守っていた時だって、初対面の人とも簡単に友達を作っていくソラ達を見てきたのだ。それは自分にとって羨ましい部分の一つなのだが、絶対にソラの前では言わない。
「そうだな…」
ルキルもそれが分かったのか、肩の荷が取れたように穏やかな笑みを浮かべた。
こうして敵だった関係の二人が和解し、共に仲間の元へ戻ろうと歩き出した。
「「ん…?」」
だが、二人の聴覚に不自然な音が入って足を止める。
何やら、自分達の前にある通路から歌が聞こえる。
それも、テンポのあるミュージックが付いて。
「これは…?」
「一体…?」
二人が顔を見合わせていると、通路の影から歌の正体が出てきた。
「So goodbye loneliness!!! 古の歌、口ずさんでぇぇ!!!」
「「「「「「あなたの瞳にうーつる、いせーきは笑って、いーるわ…」」」」」」
何やらテーマ曲を歌っている人の曲の一つを変え歌しながら、只ならぬオーラを纏いながら先頭を歩くウィド。
その後ろには、涙目でコーラスして歌っている哀れな六人の姿が。
「So goodbye happiness!!!」
「「「「「「イセキ見つけてはしゃいでたぁ…」」」」」」
有無を言わずに生気が抜けた顔でコーラスをしているソラ達に、リクもルキルも何も言えずに凍りついたように固まってしまう。
「あの時代へはもうもどーれ、なーいが!!! それでも、いいさぁぁぁ!!!」
「「「「「「ラブ、ミー…ッ!!」」」」」」
そんな二人に気にせずウィドは熱唱を続け、ソラ達はとうとう涙を流して嫌そうにコーラスする。
「おお万物が廻り、廻るぅぅ!!! Oh、ohoh…お前達、分かっているなぁぁぁ!!?」
「「「「「「誰かに乗り換えたりしません、オンリィユゥゥ
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