「お前…何で異世界を知ってる?」
「そんなの話す気はない。あったとしても…――ここで終わりだ、鴉野郎ぉ!!! 轟け雷ぃ!! メガヴォルトォ!!!」
チャクラムに雷の力を溜めこむと、ドスッと音を立てて地面に突き刺す。
すると、ウラノスの前方に広範囲の雷が激しく放出されてクウを巻き込む。
「舐めんなよ電撃野郎がぁ!!!」
この強力な攻撃を前に逃げる事はせず、クウはキーブレードを地面に突き刺す。
すると、激しい雷の中でクウを中心に白黒の魔方陣が構築される。
すると、魔方陣内部の雷は威力を弱めると共にクウへと吸収され、攻撃が収まると全身に電気を纏っていた。
「俺の力を吸収しただと!?」
「これでもダメージはあるぜ…だが、その分融合させた属性に強くなる!! ヘルズナックル!!」
バッと間合いを詰めると、闇だけでなく雷を纏った拳を放つ。
二つの属性を宿した攻撃に、さすがのウラノスも距離を取って避ける。
「吸収した属性まで付いてやがるのか…!?」
「まだ終わりじゃねえぜぇ!! ウィングノクターン!!」
クウは黒い翼を羽ばたかせ、雷を纏った大量の羽根をウラノスへと投げつける。
「こんな羽根、黒焦げにしてやるよ!!」
軽く腕を振い、ウラノスは雷を前方に放つ。
そうして黒い羽根を焦がす…直前、放った雷が霧散し一部の羽根へと吸収されていく。
「悪い、攻撃用ともう一つ…羽根に魔力を融合させる『アスピルフェザー』を混ぜてたの言ってなかったわ」
「なぁ…ぐわああぁ!?」
魔法を無効にされた事で、無数に飛んでくる羽根がウラノスの身体に突き刺さる。
だが、威力は低いのかすぐに体制を立て直してクウを睨みつける。
「卑怯だぞ…てめぇ!! ライジングレイ!!」
「ブラッティ・ウェーブ!!」
全身に雷を纏うと猛スピードで突進するウラノスに、クウは黒い衝撃波をぶつける。
クウの放った衝撃波が諸に当たるが、ウラノスはスピードを緩める事無く衝撃波の中から飛び出した。
「レヴィンスソード!!」
「ぐあぅ!?」
そのまま雷の力を纏ったチャクラムで、クウの右腕目掛けて一閃する。
辛うじて直撃を避ける事で、右腕は切断される事はなかった。そんなクウに、ウラノスは思いっきり舌打ちした。
「チィ、斬り損ねたか…!!」
「てめ…!!」
「俺はなぁ。大事な家族と生き別れてから今まで、この手を沢山の血で染めたんだ…――どう足掻いたって、甘い人生送ってきたあんたに俺は殺せねえよ!!!」
そう叫ぶと、再び迫るウラノス。
命を絶とうと両手で振るう武器を、クウも対抗するように一瞬で双剣に変えると火花を散らす様にぶつけあって抑え込んだ。
「甘くなんて、ねえさ…!! 寧ろ…てめえと一緒だぁ!!」
鍔迫り合いの形に持ち込むと、彼もまた本音をぶつける。
すると、距離を離す様にウラノスを弾き飛ばし、自傷的な笑みを浮かべ出す。
「俺はなぁ…子供の頃に自分を売った所為で、育った孤児院の奴らを殺された。生き残った恋人は姿を変えてまで俺を追ってくれたのに、最後まで気づかずにこの手で殺した。闇を暴走させてその弟を傷付けた。それだけじゃない…あの弟子の両親に手を下して意識不明にさせたし、俺の生徒や新しい恋人を言葉で傷付けたし…本当に数え上げたらキリねぇよ」
彼の口から吐き出される思わぬ過去に、さすがのウラノスも動きを止める。
それを見て、彼は右手に剣を握りしめたまま叩く様に胸に当てる。
「そんな俺がこうして真っ直ぐでいれるのは…周りの奴らが受け入れてくれたから。信用して、信頼して、俺の心にこびり付いた闇を拭ってくれるんだ。何度も傷付けて、何度も選択を間違えて…その度に、あいつらは俺の闇を拭ってくれた」
そう語りながら、彼は自身の記憶を引き出す。
闇の道を歩む自分を光へと導いてくれた、復讐を叶えようと殺される覚悟だったのに逆に諭された、闇に染まった過去を知っても受け入れてくれた、昔の恋人と重ねるだけの曖昧な繋がりでも大切にしてくれた、守るべき存在を守れなくても許してくれた、騎士としての約束を忘れていたのに心から信じてくれた。
今身体を借りているもう一人の自分とは違う自身の絆を感じると、真っ直ぐにウラノスに視線を合わせる。
「胸張って綺麗な存在とは決して言えねえ。けど…俺は人として、どん底にまでは落ちてはいねえんだよ!!」
「綺麗事抜かしてんじゃねぇ!!! 闇の存在なのに、そうやって現実から目を逸らす奴に…説教なんぞ受けて堪るかぁ!!!」
「てめえこそ、理由付けて正当化してんじゃねーよ!!! 誰かを殺すのが仕方ないとか、ただの逃げじゃねーか!!!」
「黙れぇ!! 連閃!!」
「ソロアルカナム!!」
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