予想もしなかった音、それに襲い掛かる筈の痛みも感じない。
疑問に思いウラノスが目を向けると、何とキーブレードは顔の真横に突き刺さっていた。
「…何の、つもりだ…?」
「見ての通り、お前に止めを刺す気はねーよ。混沌の力も限界だし……あの世界に送った俺の愛弟子も守れそうだしな」
クウが馬鹿馬鹿しい目で軽く睨んでいると、身体のあちこちから黒い闇が溢れ出す。
「ま、この俺の意識が戻っても同じ選択をする。だから、理由をちゃんと話とけよ。どうしてこいつらを襲ったのか…」
そこまで言うと、意識が無くなったのかクウは膝を付いて倒れる。
その状態で身体に纏っていた闇が全て霧散すると、横に突き刺さっているキーブレードも全体が輝いて二つの翼となり元の形に戻る。
何処かぼんやりとその様子をウラノスが眺めていると、閉じていたクウの瞼が動いた。
「ううっ…あれ、何が…?」
意識を取り戻すなり、現状を把握出来ないのか虚ろ気な目で辺りを見回す。
しかし、ボロボロになっているウラノスを見た途端に顔色を変えて上半身を起こした。
「なっ…!? お前、何だってボロボロになって!?」
「…いろいろあったんだよ。それよりいいのか…止め刺すなら今だぞ?」
完全に元の人格に戻った事に、ウラノスは説明する気さえ起きずに気怠そうに催促する。
この言葉に、クウは不機嫌な顔をしてウラノスから顔を逸らした。
「何でそんな事しなきゃなんねーんだよ…ふざけんな、電撃野郎が」
「ホント、根っからの甘ちゃんなようだな…だがな、俺は騙されないぞ。てめえら、リズを奪って何をするつもりだ?」
「…どう言う意味だ?」
「白切ってんじゃねーよ…知ってんだぜ、リズを使って世界から闇の存在全て消そうとしている事をな!」
これから起こる未来の内容をぶつけると、クウは明らかに呆れの視線を送り付けた。
「はぁ? 何で俺がそんな事しないといけないんだ? こっちはこっちで大仕事しなきゃなんねー時期だぞ?」
「ハッ、なるほどな…今はそんな気無くとも、将来勇者の皮被った悪魔に成り下がる訳って事かよ!」
「だああぁ!! 好き勝手言ってんじゃねーよ!! 大体、誰からそんな話聞いたんだ!?」
「そんなの、時詠みの巫女って奴が――!!」
癇癪を上げるクウに、ウラノスも対抗するように大声で出来事を伝える。
だが、感情に任せて叫んだ途中で、二人は同時に黙り込んだ。
「俺、女性は大切に扱う主義なんだが……それ、怪しくないか?」
「…今冷静に考えれば確かに怪しいし、話に矛盾する点もある。くっそ、見事に騙されたって訳かよ…!!」
クウの質問に少女との会話を思い出し、ウラノスはようやく騙されたと理解する。
自己嫌悪になって手足を投げ出して寝っ転がるウラノスを見て、クウは軽く座り直して一つの質問を投げかけた。
「お前…光が嫌いか?」
「光は嫌いじゃない…人の心ってのが気に入らないんだ。闇や異端、人とは違う種族。光ではないそいつらの存在を認めずに排除しようとする…あんたも闇を宿すなら分かるだろ?」
「否定はしない…だけど、否定する」
クウから放たれた妙な言葉に、ウラノスは顔を向ける。
すると、クウは軽く笑いかけながら驚くべき事実を語り出した。
「俺、これでも彼女いるんだ。しかも、あの少女と同じノーバディだぜ?」
「は!?」
「あいつと初めて出会った時さ…心ない所為か、人形みたいだった。記憶があるおかげで喋るとか食事とかの日常生活は影響なかったけど…感情を上手く出せなかったんだ」
その時の事が過ったのか、クウの目が少しだけ淀む。
遠くを見る黒い瞳に映るのは、悲しみだ。
「それを傍で見て来て凄く苦しかった、悲しかった。だけど、そのおかげで俺は頑張れた。あいつを笑顔にさせる事が出来たんだ――…結局さ、心が無かったら分かり合う事だって絶対ないぜ? 全て否定してしまったら、それこそお前が嫌いな人間と同類になるだろ」
「…違いないな」
自分とは少し違うが、ノーバディの少女の為に辛い思いをした事には変わりない。それでも望んだ未来を手に入れた男の話は、闇しか受け入れられないウラノスを納得させる何かが篭っていた。
気付かれないようウラノスが小さく笑みを浮かべると、唐突にクウがある事を思い出した。
「そういや、お前の名前…何て言ってたっけ? ウ、ウ――」
「ウラノスだ。で、あんたは…師匠だっけ?」
「…クウだ」
死闘を繰り広げた後にようやくお互いの名前を知り、二人は堪らず吹き出してしまう。
あまりにも可笑しくてクスクス笑っていると、離れた場所で闇が現れた。
「これは…!?」
見覚えのある闇にウラノスが目を見開いていると、一人の少女が姿
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