エンディングフェイズ4 〈Blue Sanction〉
シーンプレイヤー 七雲 空
空は曇天に覆われ、激しい雨が降っている。
余計に薄暗くなったどこかの路地裏。そこで、雨粒に紛れて血が飛び散っていた。
「くそ…くそぉ…!!」
自分の血で作り上げた大剣を握り、その辺に倒れているガラの悪い男達に悪態を吐き続ける。
これだけ暴れても、まだ満足できない。
自分を不快にさせる苛立ちが、収まらない。
「ゆ、許してくれ…!! 謝るから、命だけは…!!」
「うぜぇ…」
まだ息が合ったのか、三下の男の言葉に、余計に苛立ちに――憎しみに拍車がかかる。辛うじて繋がってた、理性が切れるのを感じた。
「うぜぇんだよ!!!」
大剣を振り被り、胸元目掛けて振り下ろす。
このままこいつを、周りの奴らを殺したら、この苛立ちも多少は収まるだろうか。
そんな思いで命を絶とうとした大剣は――何かに阻まれたように、男の前で動かなくなった。
「オーヴァードが暴れていると聞いてやってくれば――黒羽の息子じゃないですか」
声のした方へと振り返ると、そこには御剣が数人のボディーガードを携えていた。その顔は、呆れや侮蔑が混ざっている。
「噂は聞いていましたが…輝かしい未来から一変、堕ちる所まで堕ちましたね」
「ッ、黙れぇ!!!」
まるで胸の内を見透かされ、憎しみのままに目の前の相手をぶった斬ろうと駆け出す。
「組長!?」
「心配は無用」
その瞬間、何も無い筈なのに急に身体が地面に叩きつけられた。
体を動かそうとするが、まるで全身が地面に縫い付けられたかのように動かない。それでも衝動に任せて身を動かすと、御剣がすぐ傍でしゃがみこんだ。
「なるほど――憎しみの絆で自我を繋ぎ止めている訳ですか。それもまた、あなたが選んだ事ならば…」
協力しましょう。あなたが人として生きる事を。
それを聞き終えた瞬間、蒼空の意識が途切れた。
ある都市のUGN支部。他の支部と違いそこそこ大きい為、施設は階層ビル丸ごとある。そこに配属されて…UGNに入ってから、数ヶ月が経とうとしていた。
任務を終え、その廊下を黙って歩いていた。
「空、待ちなさい!」
「…あ?」
急に手を引っ張られ、不機嫌全開で振り返る。
偽りでもある名前を呼んで引き留めたのは、怖い顔で睨んでいる星華だった。
「どうしてあんな事したの?」
「あんな事?」
「どうしてジャームだけでなく味方まで攻撃したの!! ずっと単独行動が目立つし、勝手に突っ込んで作戦滅茶苦茶にするのはまだいい!! だけど、今日と言う今日は――!!」
「オーヴァードなんだから、傷なんて勝手に癒えるだろ? それよりとっとと放せよ!」
「っ!」
その手を叩くように乱暴に払いのける。すると、星華は痛むのか手を押える。
そんなやりとりをしていると、他のエージェント達も騒ぎを聞きつけて集まってきた。
「おい貴様! 星華さんに暴力を振るうとは!」
「女を殴るなんて最低!」
「うぜぇよ、化け物ども!! 何時までも人間のフリして虫唾が走るんだよ!!」
その場にいる全員に一喝して、苛立ちを露わにして背を向けて離れる。
人間じゃないのに、人間と違うのに。まるで人のように感情を見せて、人と同じように身振りして。
こっちはUGNを差別するよう刷り込まれたのだ。簡単に受け入れられる訳がない。
(あいつ何様? 入ってきたばっかりのクセにあたしらの事いっつも見下して)
(噂じゃ、特調の人間らしいぞ。オーヴァード排除主義掲げている)
(自分だけは違うって思ってるのか? 俺達が化け物ならお前も一緒だろっての)
(さっさとジャームになっちゃえばいいのに)
嫌でも…いや、わざと聞かされる陰口に胸がざわめく。
自業自得だと分かっている。それでも、頭も、心も、彼らを受け入れる事を拒絶している。
「うるさい…憎い…! あいつらが…!」
いっその事、滅茶苦茶にしてやりたい。ここにいる奴ら全てを根絶やしにしたい。
けど、その考えを実行しようとすると、自分の中で声が囁くのだ。
人として生きる事を手放してしまう、と。
地下に隠された研究施設の全てが炎に包まれている。
激しい炎の中でただ一人立っているのは、上官にも当たる人物。
その上官が、刀の切っ先を自分に向けている。
「なん、で…どう、して…!?」
「死ね」
たった一言だけ言うと、疑問ごと身体を刃で切り伏せる。
《リザレクト》しないと。そう思っているのに、身体のウイルスは許容範囲以上に浸食されているのか回復が出来ない。
(ふざ、けんな…! 何で、何であんたが…!)
何も分かってない。彼らがここで何を
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