エンディングフェイズ5 〈本当の居場所〉
シーンプレイヤー 御坂 翼
空が生還を果たし、数日が経った。
レネゲイドも落ち着いた事で、ようやく退院となった。
志武谷の町に戻る為に駅までの道のりの途中で、御剣が待っていた。
「いろいろ助かった、御剣」
「これでもあなたと私の仲ですからね」
どこか呆れつつ肩を竦めるが、満更でもないような笑みを浮かべる。
そんな時、空は少しだけ黙るとめんどくさそうに溜息を吐いた。
「…もう一人の俺も“ありがと”ってさ」
「…蒼空、と名乗っているんですよね。出来れば面と向かって話をしたいのですが」
「それが出来ればこっちも苦労しない…いちいち通訳するの面倒だしよ」
本当にそう思っているようで、頭をガシガシと乱暴に掻く。
符宴との戦いで、そしてお互いに受け入れた事で、まるで内側の見えない壁がとり払われたように互いの存在を認識出来るようになった。お蔭で、自分達限定でだがこうして会話も出来る。
「ですが、不可能ではないでしょう。ある戦闘用人格は人格を自由に交換が可能ですし、中には意識の状態でも特殊なレネゲイドを使って会話が出来る、と聞いた事があります」
「へぇ…」
そんな話をしていると、御剣は腕時計に目をやった。
「さて、そろそろ私は戻らさせて頂きます。頭領は大変なんです」
そう言って、空に背を向けると近くに停めてあったベンツに向かう。
しかし、途中で足を止めて空に振り返った。
「また、会えたら会いましょう」
「おう」
軽く手を上げると、御剣も軽く会釈してから車へと乗りこんだ。
妙な因縁を持った恩人を見送っていると、軽い足音が近づいてくる。
顔だけ向けると、そこには翼が首を傾げた状態で笑っていた。
「話、終わった?」
「お前まで一緒にいる事なかったんだぞ? さっさと帰れただろうし」
「何言ってるの。あんな事があったんだから、一緒にいるのは当然でしょ?」
「悪かったよ――あ?」
急に頭を押えて声を出す空。
すぐに翼は、内側の蒼空が話しているのだと分かった。
「蒼空さん、なんて?」
「…折角付いてきてくれたから、何か奢るってよ。ったく、勝手に決めて…」
「ホント!? じゃあボク、あれ食べたい!! 今行列できてるあのジェラート!! バニラとチョコのダブルでっ!!」
「はぁ!? あーもー、行けばいいんだろ並べばいいんだろ…!!」
外側と内側から催促され、空はブツブツ文句を言いつつも行列へと並びに行く。
今回の事件でだいぶ丸くなった彼の姿に、翼はニコニコしながら見送りつつその場で待つ事にした。
「ごきげんよう、雷光(ライトニング)」
突然声を掛けられ、翼は反射的に振り返る。
休憩用のベンチに座りながら、黒い髪の少女が笑いながらこちらを見ている。
見た目は自分よりも少し幼い少女だ。だが、翼は知っている。
彼女が何者であるか。彼女に秘められた途方もない力を。
「あなたは…!」
「今は“御坂翼”、と言う名前でしたね。少しお話があるのです」
「―――」
翼と蒼空に言われるがままに、ジェラート店に並ぶ空。
ようやく行列の半分、と言う所でポケットに入れている携帯が鳴った。
「メール?」
時間潰しに取り出して確認すると、何故か送り主は翼からだった。
不思議に思いながら『無題』と書かれた画面を開くと、こう書かれていた。
“急用が入ったから、先に帰らなきゃ。ごめんね”
「はぁ!? せっかく並んでるのにあいつ…!」
少女は親しい友人を前にしているように、翼に向かって語る。
「FHと言う偽りではなく、我々――【ゼノス】の一員として」
その言葉を、翼は携帯を握りしめながら聞いて――笑った。
「――了解、“プランナー”」
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