「これが俺の全力だ…!!! 轟け、雷よ!! サンダガァ!!!」
バッと大きく手を翳すと、ゼノの上空が光り出す。
相手は本気だと分かり、冷や汗を浮かべ捕らわれた二人の背後にも回廊を作り出す。
「こうなれば「逃がさねえぜ!! ソラァ!!!」っ、貴様ァ!?」
二人を連れて逃げようとした瞬間、クウに言われた名前に反応してゼノが身体を向ける。そこには、翼を纏った状態でキーブレードを構えるクウの姿があった。
少しでも動きを止める為に、ワザとその名を呼んだ事に気付くゼノ。そうして引っかかったゼノを見て、クウは強く武器を握り締めた。
目の前の少女と同じ顔をした、大事な仲間を思い浮かべながら。
「お前が助けてくれた技、使わせて貰うぜっ!!! ハードストライク!!!」
「ぐうぁ!?」
ゼノに向かってキーブレードを振るい、思いっきり吹き飛ばす。
命令をする主が攻撃された事で、回廊に入ろうとしたダスクが動きを止める。その一瞬の隙にクウは玉座に着地すると、右手をつけて残っている闇の力を解放させる。
「ブラックホール!!」
そうして黒いドームが作られ、クウを中心にリズとシャオを捕えているダスクを包み込む。
直後、ドーム内で重力の衝撃波が幾度となく襲い掛かりダスクは消滅してしまう。
その間にウラノスの放った巨大な雷が黒いドームへと落ちて、もの凄い威力と共に空間全体に轟いた。
「はぁ、はぁ……生きてるかぁ?」
「ギリギリ、な…」
魔法を発動させた所為か、疲れた顔でウラノスが崩れゆく黒いドームに声をかけると、中からクウが気の抜けた声で返事を返す。
見ると、クウは玉座の上に立っており、両脇にリズとシャオを抱えている。重力のドームとスピカのロケットのおかげで、どうにか生き延びたのが分かる。
リズとシャオの奪還に成功して二人が力なく笑っていると、吹き飛ばされたゼノがゆっくりと起き上った。
「おのれ…!」
「リズは奪還したんだ。後はこいつを――」
「待ってくれ」
痛みを堪えるゼノを始末しようとウラノスが歩み寄る。
しかし、玉座から降りたクウがウラノスを呼び止めると、抱えている二人を降ろしてからゼノに顔を向けた。
「ゼノって言ったな。お前…俺とシャオを捕えて何をする気だ?」
「ふ、ふふっ…その少年の資質、更には自分の力も気づいていないとな? 何と勿体無い。もはや宝の持ち腐れ、その力を与えた鍵の少女も嘆く事でしょうねぇ。あの方ならば、その力を使って世界の頂点に君臨出来ると言うのに…」
自分を馬鹿にする言い方だが、それ以上にゼノの提示する力の使い方に強い怒りを感じた。
「ふざけるな!! これはあいつを――シルビアを救う力だ!! そんな風に使うつもりは無いし、お前らの味方にもならない!! 何があってもだ!!」
「フフ…アッハハハ!!」
「何がおかしい!?」
「本気で言ってるのか? 実に愚かだことっ!」
そう言いながら一頻り笑うと、怒りを露わにするクウを見る。
正確には、彼の右腕に刻まれた刻印を。
「貴方の持つその力で、誰かを救うとな? そんな世界を揺るがす力で何をどうする気だ?」
ニヤリと笑うゼノに、僅かに顔を歪めるクウ。
「分離と融合の力…二つを以ってすれば、『χブレード』を作る事も容易い。そう、世界の中心への鍵を手に入れて全ての世界の心―――キングダムハーツを掌握すれば、何もかも思う通りになる。世界の破壊も、光を跡形も無く消す事も、人々を恐怖に陥れる事も――!!」
熱を帯びて語っていたゼノだが、耳元で黒い羽根が高速で横切る。
視界の端で、切られた髪の毛が数本舞っている。そんなゼノの前で、クウは腕を伸ばした状態で手を広げて睨みつけていた。
「だから何だ? この力をどう使おうが俺の勝手だ。誰の指図も受けるつもりはない」
何時もは女性に優しく接するクウだが、さすがにゼノの態度に我慢の限界が訪れたようだ。
強い怒りを宿しながら冷たく言い放つと、羽根を投げた腕を下ろして決意の篭った目で宣言した。
「俺は俺の道を行く、ただそれだけだ!!!」
「――よく言ったぜ、クウ」
自分の中の信念を叫ぶと、ウラノスが笑いながらその場から消える。
直後、ゼノの背後に移動してチャクラムで斬り裂いた。
「はぐぅ…!?」
「戯言は終わりだ、こいつで――!!」
倒れるゼノに追い打ちをかける様に、ウラノスがチャクラムに電流を纏う。
顔を青ざめるゼノだが、感情を捨てたウラノスは構わずに武器を振り下ろした。
そうしてゼノを切り裂く直前、後ろからクウが腕を掴んでウラノスの攻撃を止めた。
「…何してんだ?」
攻撃を止められ、ウラノスは不機嫌そうにクウを睨む。
だが、その視
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