エンディングフェイズ5〈日常、そして別れ〉
シーンプレイヤー 神影恋火
黄昏市の中心にある大きな駅。ここを中心に様々な地方まで線路が繋がっている為、交通の要になっている。
夕暮れに染まる駅前で、制服姿の恋火はスポーツバックを抱えた羽粋と二人で話をしていた。
「ごめんね、恋火お姉ちゃん。お見送りまでして貰って…」
「ううん、気にしないでよ。羽粋、あっちでも元気でね!」
「うん。いきなり国内限定の交換留学に任命された時はどうしようかと思ったけど…黄昏学園代表としてお姉ちゃん達の分まで頑張ってくるね!」
(ああ、羽粋の純粋な笑顔が眩しい…! 心が痛い…!)
そう思いながら、恋火は作り笑いを浮かべる為に必死で耐える。
交換留学と言うのは、もちろんUGNが羽粋を転校させる為に手配した偽の情報だ。幾ら彼女の身の安全を守る事だと分かっていても、やはり心苦しい。
「恋火お姉ちゃん、これ」
思い出したように、羽粋がバックの中に手を入れる。
そこから取り出したのは、透明な包みに入った三つのカップケーキだった。表面にドライフルーツが見えているからして、生地に混ぜているのだろう。
「これ…カップケーキ?」
「この前約束したから、試作品のケーキを作ったら食べさせるって」
「ありがとう、羽粋! 帰ったら皆で食べるね!」
「気にしないでよ。恋火お姉ちゃんには助けて貰ってばかりだったから!」
嬉しそうに恋火に笑顔を返した羽粋だが、急に首を傾げた。
「…あれ? 私何を助けて貰ったんだっけ? えーと、宿題だったと思うんだけど…」
「あ、羽粋! そろそろ行かないと電車が来るよ! 乗り換えもしないといけないんだから、早め行動っ!」
「う、うん!」
何かを思い出そうとする羽粋に危機感を感じ、恋火は考えを逸らす為に急かし出す。お蔭で羽粋も浮上した疑問を忘れて駅の中へと走る。
だが、途中で足を止めて羽粋は恋火の方へと振り返る。その顔は、不安げだ。
それも当然だろう。これから行くのは彼女も知らない場所で、また一人きりで暮らさないといけないのだから。
だからこそ、恋火は彼女の不安を少しでも消す為に笑顔を浮かべた。
「じゃあね、羽粋!! 休みには遊びに行くから、ちゃんと道案内してよねー!!」
「うん…! またねー、恋火お姉ちゃんー!!」
大きく手を振って見送ると、羽粋も同じように手を振って人混みの中へと姿を消していった。
きっとまた、会えると信じて…。
マスターシーン2 〈影達の囁き〉
日の光も通さない、雑然としたどこかの路地裏。
その一角で、黒コートに身を包んだ風切冷牙が携帯で誰かに電話していた。
「――【メモリーチェーン】及び【ダイヤモンドダスト】は“光”の奪還に失敗。現在は元使徒(アポスル)であるFHマーセナリーに保護されました…その裏に、元マスターの称号を得たFHエージェントもいます」
《そうか。で、二人は始末しなかったのか?》
「UGNだけなら共に始末しましたが、背後の人物が厄介極まりないので断念しました…――まあ、どうせ下っ端。大した情報は持たせていません」
《“光”は生かし方ない。まだチャンスはある。で、そちらはどうだ?》
「何年潜入工作員していると思っているんですか? 上々です…何事もなければ」
《ならば、とっとと守護者から“闇”を手に入れる事だ。我らが盟主も待ち望んでいる》
「――ええ。必ずや」
そこで通信を切ると、冷牙は歩き出す。
そのまま路地裏に落ちる闇に紛れて、姿を消した。
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