マスターシーン シーン15〈悪意の蛇〉
闇代家が所有する山。そこに一つの洞窟があるが、侵入避けに配置した注連縄は無残に切られている。
その奥深くにあるのは、小さな祠。そこに鎮座するのは大きめの黒真珠のような宝石。
黒い手が宝石に手を伸ばすが、障壁のようなモノが張り巡らさせていて弾かれる。だが、無理やりその結界に手を当てた途端、ガラスのように表面が一気に罅割れて壊れてしまった。
「表の結界に比べたら、内側は脆弱な守りですね。まあ、これは限られた人物しか使えないので仕方ないと言えばそれまでですが」
目当ての宝石を手にし、男は笑う。
短い銀髪に青の瞳。その顔こそが、風切冷牙の本来の姿だ。
やがて冷牙が振り返る。そこには、月を庇って傷を負った陸が力なく倒れている。最低限の治療はしているのか、腹部に包帯が巻かれている。
「さて…傷は治しているんです。黙ってないで何か言ったらどうですか、旦那様?」
陸の傍にしゃがみこみ、そっと頬を撫でるように顎を持ち上げる。
「…俺にそんな趣味はない「私にだってありません!」」
思わずそんな会話をしてしまうが、気を取り直すように冷牙は顎を掴む手を強める。
「未だに口答えするとは、旦那様もしぶといですねぇ。まさか、この期に及んで誰かに助けて貰おうなんて考えてませんよね? UGNにはあなたが敵だという情報を流してある。来るとしたら、あなたを始末しに来る敵か、憎悪を抱く坊ちゃんだけ…」
顔に薄っぺらい笑みを貼り付けて陸を見据える。送りつける視線も、完全に冷え切っている。
蛇に睨まれた蛙。今の状況を例えるならこの比喩が一番だろう。陸は黙って目を逸らし、静かに口を開く。
「ハッ…お前の言うとおりだ。俺を洗脳しようとしていたのは知っていた…だから、出来る限り家族に対しても厳しく接して心の隙を与えずにいた。そのつもりだったのに…最後でヘマをした」
「ええ…その点に関しては本当に苦労しましたよ。ですから、あなたが大切にしているあの二人を追いやった。隠していたつもりでしょうが、あなたが家族に情を持っているのはバレバレでしたから。いやぁ、いい感じにお人形になってくれて何よりです」
「……それで、どうするんだ? お前にそれは使えない。月を操るつもりなら無駄だ――あいつの憎しみは、ここで終わる」
すると、カチャリと金属音が鳴る。
素早い動作で陸が銃を取り出し、頭に銃口を向けて引き金に指をかける。
「ほぅ…? 自殺して、坊ちゃんの憎しみを消すつもりですか。流石は旦那様、中々思い切った事をしてくれますね」
「俺はただの人間だ、銃で頭を撃たれれば死ぬ…引き金を引くだけの力は残っている。たった一人の息子をお前の道具にさせるぐらいなら、今ここで死ぬ…!」
「そうですか。ではどうぞ、その引き金を引きなさい――出来るものならね?」
直後、陸の背筋に冷たい何かが這う。
冷牙が何かしでかす前に、陸は指に力を込める。それは、たった一瞬の動作。それだけで、自分の命は絶てる――その筈だった。
だが、どんなに陸が意識しても指はピクリとも動かず引き金に固定されたままだ。
いや、指だけではない。身体全体が金縛りにあったように全く動かない。
「なっ…!」
「旦那様は確かに、洗脳による抵抗と耐性は凄かった。現にこうして自我を取り戻していますが…あれだけで完全に洗脳が解ける訳ないじゃないですかー。そう言えば、私がどうして旦那様をこの場に連れて来たかまだ行ってませんでしたね?」
「俺を使って…月の負の感情を刺激させる為じゃ…!」
「それもあるのですが、私としてはこの“闇”の力が気になる所でして…」
不気味に笑うと、冷牙は闇を胸に押し当てる。
すると、服越しにも関わらず闇を喰らうように体内へと押し込んでいく。
そうして冷牙は体内へと闇を取り込む。この一連の様子に、陸は訝し気の表情を浮かべる。
「“闇”を喰らってどうする…!? お前がオーヴァードだろうが、それは闇代家の者しか扱えないのは知って――…まさか、お前…!」
ここで陸は思い出す。彼がどんな力を持っているかを。
思考を読み取ったのか、冷牙は洗脳で動けない陸へと笑みを浮かべた。
「ご理解いただけて何よりです。これからあなたにはオーヴァードの素晴らしさ、代々守ってきた闇の力を教えて差し上げます…旦那様」
「や、止めろ…!」
「怯える必要ありません。さあ…私と一つになりましょう?」
冷牙が手を伸ばし、視界を遮った所で陸の意識が反転した。
四人「「「「…さっきからSMがめっちゃ笑顔だ…」」」」
SM「悪役ロール、なんて楽しいんでしょう…!」(黒笑)
四人((((駄目だこの人、早く何とかしないと…!))))
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