蒼空『――…』
先程自分が付けた傷から流れる血を舐める。慣れ親しんだ鉄の味だが、味覚と同時に彼の情報が入ってくる。
言葉通りの嘘偽りない真っ直ぐな想い。それは自分を愛してくれていると言う何よりの証拠。
この感情が血を通して直に伝わった事で、蒼空の心に張り詰めていた糸が切れる。そして今まで抑えつけていた感情や言葉が一気に駆け巡り涙腺を崩壊させる。
込み上がる気持ちのままに、蒼空は星華の胸へ顔を埋めた。
蒼空『こわいッ…誰かが、いなくなるのは…もうみたくない…! だけど、おれは――“わたし”は、マスターって呼ばれてるのに、だれかを守るだけの力はなくて…みんなみたいに立ち向かう勇気もなくて…あるのは、きずつけるだけの力…!! もういっしょにいられなくて、逃げようってきめたけど、でもやっぱりみれんがましく胸に引っかかって…もう、どうしていいか分からない…わからないよぉ…!!』
星華『蒼空…』
蒼空『そう、だよっ――本当はわたしになんの力がないのは分かってる!! あいつが、エンがいてくれて今わたしはこうして自由でいられる!! むやみにころしの命令をされなくてすむ、実験で身体をいじりまわされることも、痛いおもいも、何かをうしなう事だって…もうあんな過去にもどりたくない!!! もどりたく、ないのに…!! こんなのいや…どうすればいいの…! たすけてぇ…!』
星華の腕の中で吐き出される彼女の本音。今まで強がっていた分、脆く弱々しい姿を露わにしている。
泣きじゃくる彼女に声を掛けたのは、響でも星華でもなく、エンだった。
エン《…私は微弱ながら補佐する力を与える事しか出来ない。あなたを守る事も、触れる事すら出来ない。そんな私でもあなたに出来る事は、ある》
蒼空『…っ…』
エン《どんな時だって、傍にいます。あなたが進みたいと決めた道を、ずっと二人で》
蒼空『わたしが、進みたいと…きめたみち…?』
エン《蒼空、あなたの欲望(ネガイ)は何ですか? その欲望の果てまで、私は貴女について行きますよ》
蒼空『わたしの、ねがい…』
数か月前とは言え、ずっと傍にいるエンの励ましの言葉に蒼空は少しずつ落ち着きを取り戻す。
ようやく泣き止むと、星華の胸元から離れて袖で涙で汚れた顔を拭う。目は充血して赤く腫れていたが、瞳には揺るがぬ意志がちゃんと宿っていた。
星華『…決まったようだな』
蒼空『…今の、忘れろ』
響『今の?』
星華『…ああ、アレか。忘れる訳がないだろう。女言葉は可愛かったぞ、ギャップがいいな』
蒼空『――っ!! 忘れろ!! 記憶から抹消しろ!!』
星華『ああ、無理だ。脳内が異常になったから完全記憶能力にもなってしまってな、忘れようにも忘れられないんだ』
蒼空『てっめぇぇぇ!!? だったら頭差しだぜ!! 脳味噌潰してでも忘れさせてやらぁぁぁ!!!』
響『ふ、ふふっ…! あはは!』
蒼空『笑うなぁ!!!』
星華『はははっ…どうやら、本当に元に戻ったようだな』
蒼空『お蔭様でな! …名ばかりのマスターって言われてるが、今日まで生きて来た実績はあるんだ。昔からFHで生き抜いてきた実力、奴らに刻み付けてやるよ』
星華『それが君の欲望(ネガイ)なのか?』
蒼空『いいや…俺の目指す欲望に繋がっているかな』
質問する星華に、蒼空は抱く欲望(ネガイ)を改めて思い返す。
理想の実現――“誰も傷つく事のない日常”を。
クウ「ここで俺もリカにロイスを取るぜ。Pは連帯感、Nは厭気。仲間意識としてあるが、ここまで信頼されているのに勝手に攫われてムカついてる。表はPだ。あと、ある程度素直になったって事で持ってるロイスの感情表を幾つか変更しておきたいがいいか?」
GM「構いませんよ――さて。ロイスも取った事ですし、ここでクライマックスに向かう為の最後の判定をして貰います。彼らの計画の要…この町にあるとされる端末を見つける必要があります」
スピカ「それなんだがGM、俺の《写真記憶》で分かったりしないか?」
SM「目にしたものを詳細まで覚えているエフェクトか……本来は〈知覚〉か〈情報:ウェブ〉で調べて貰う予定だったが、RPで良い物を見させて貰ったって事でOKしようか。星華にはこのメモを渡して置こう」
オパール「ノイマンってかなりチートだね…今回のセッションで改めて分かった」
クウ「よく考えてみたら翼もノイマン能力で俺達を補佐してたな…」
話も終わり、星華は改めて屋上から街中を見回す。
高層ビル、広告用の大きな看板、アミューズメント施設。その中から、一つの建造物に目を付けた。
この街で一際大きく聳え立つ鉄の塔――電波塔を。
星華『…塔はあれの事だろう』
蒼空『そうか、塔は塔でも電波塔か!』
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