リカが気づくと、ステージ会場にほど近い観客席の通路に立っていた。
近くには大穴が空いている。瓦礫と閉じ込められていたカプセルの残骸が散乱し、壊したばかりなのか砂埃が立っている。
それと――《完全獣化》と《エアロドライブ》の力で変身した状態で、抱き着く響。
『偽物の存在なんかじゃない――』
『ひび、き…』
『だって、あたしは…あんたにずっと助けられたんだから。あんたの歌で、救われたんだから』
優しく抱きしめる温もり、感謝の言葉は、リカの凍り付いた心を溶かす。
響がリカを想いやる光の心が、ルピナスが齎した人間を憎む感情を打ち払っていた。
『だから――今度はあたしが、あんたを助ける番。あたしの歌で、助けるから』
そう言って、リカに笑顔を見せる。
ゆっくりと腕を解いて離れると、呆然とするリカに背を向ける。丁度後ろにいた獣型のジャームへと、大きく一歩踏み出した。
《奇跡が宿った機械仕掛けの このアームには意味がある!》
『これは、一体…?』
『誰だ、あの子…?』
『う、うそ…あいつ…!』
『っ、響ぃ…!』
歌いながら、響はジャームの胴体へと拳を放って上空へ吹っ飛ばす。そうして次から次に前に現れる敵を拳と蹴りで薙ぎ払っていく。
この戦いの光景は、観客の他にも学校のクラスメイトと璃々も目撃していた。
《普通の日常 なんでもない日々 そんな夢の為だと》
『現在の状況…! エージェントとマスター…そこにまた、乱入者が現れました…!』
『一見すれば、味方でしょうが…急いで準備を』
〈――待ってくださいっ!!!〉
『この通信…チルドレン、玲崎愛衣ですか…!? こんな時に何を』
〈こんな事、頼める立場ではないのは分かってます…UGNの意向に背くのも重々承知です!!〉
〈ですが…お願いです!!! あの人達を信じてあげてください!!〉
〈彼らの行動を…世界の希望を、奪わないでくださいっ!!! 霧谷支部長っ!!!〉
UGNと言う組織の生命線――霧谷雄吾と彼を護衛する数名のエージェントのいるアジトで、愛衣の訴えが木霊する。
《ぬくもりを伝える 言葉じゃなくたって》
『何々!? 何が起こってるの!?』
『ふふ、中々面白い事になったわね』
『“プランナー”!? 『ワルプルギス』のとんでもない計画を止めないといけないのに、どうして笑って傍観しているのさ!?』
『当然よ――私の“プラン”通りに進んでいるもの。それより、彼女の歌もいいプランの一つに組み込めそうね。そうは思わないかしら…御坂翼さん?』
ステージのライブ放送を見ながら慌てる少女に、妙齢の女性――FH日本支部長、プランナー。都築京香は微笑みを浮かべる。
《この拳の答え 武器を持たぬ答え 一撃必愛 ぶっこめラブソング》
『なに、これ…?』
『これも、UGNのテロか?』
響の歌によって端末のノイズが上書きされる。それにより、レネゲイドの衝動も若干収まり人々は正気を戻す。
テレビ、ラジオ、ネット配信。今も尚放送されているのは、観客席で歌いながらジャーム達と戦う響の姿。
『どうして、こんな歌で泣いているんだ…?』
『お姉ちゃんの歌、温かいね…』
《正義を信じ 握り締めよう やり直せばいい 壊れたって》
『あいつ…!』
《まさに、彼女の心を現した歌ですね》
ハヌマーン能力者だが彼女の歌には他者を援護する力はなく、自身の力を高める事に特化している。
それでも響の力強い歌に感化されるかのように、蒼空とエンも互いに笑い合う。
《もうへいきへっちゃら ハート響かせ合い》
同じように響の歌を聞きながら銃弾を放っていた星華だが、急に目を見開く。
『っ! 蒼空、マズイぞ!』
『しまった!?』
蒼空も気づき、彼と共に一直線に駆けつける。
《なけなしの勇気 だって勇気 泣けるほどギュッと愛になる》
『どうして、こんな歌で…!』
『『ルピナス様!?』』
『俺は…俺は…!』
―――だいすきだよ【 】
『止めろ――その歌を止めさせろぉぉぉーーーーーーっ!!!!!』
一つの思い出が引き金となり、ルピナスは氷の剣を作り出すとステージ会場から氷の斬撃を飛ばしてきた。
突然の攻撃に、響は避ける暇もなく直撃した。
『きゃああああぁ!!!』
『響っ!?』
リカが叫んでいると、響の身体は壊れた観客席に縫い止められる様に氷結に囚われている。
急いで駆けつけようとすると、リカの前に新手が立ち憚る。
『ウ、ウ、ウ、裏切リモノダァ!!』
『コロス、コロスゥゥゥ!!』
『っ…!』
『『邪魔するなぁ!!!』』
だが、怒鳴り声と共に一瞬で銃弾と赤い羽根によって蜂の巣となり敵は全員倒れ込む。
そしてリカの前に
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