第二ラウンド
GM「では、セットアップに入ります。ヒスイは《サポートデバイス3》だけ使用して【感覚】のダイスを6個上げます」
オパール「あたしは…決めた! 殺戮のアージエフェクト《死神の疾風2》発動! 行動値10上乗せし、ダメージ3D追加よ! 浸食率155%!」
幹部の一人を倒したとは言え、まだ苦戦を強いられる戦いに響は焦りを抱いていた。そんな彼女に力を貸すかのように、ある記憶が蘇る。
数年前のコンサート。丁度今自分がいるようなステージ会場で戦っていた恩人のエージェント。
絶体絶命になった彼女が起死回生に使った、更なる力を引き出す方法。
(あの人が、やっていた力なら…!)
『響…!?』
響の変化にリカが気づくが、無言で胸元に付いた赤い石に手を伸ばす。
それに軽く触れると、上に放り投げる様に取り外す。
『――イグナイトモジュール、抜剣!!』
赤い石はアンテナの形をした鋭い棘と変わる。そして容赦なく、響の胸を貫いた。
『うあああああああぁぁ!!?』
『『『響っ!!』』』
貫かれた直後、闇と赤い電撃が響の身体を覆いつくす。
一見すれば自滅行為だと思うが、オーヴァードとしての知識がある彼らは響の目的を理解する。
『あのやろ…! オーヴァードになりたての状態で衝動を自分の力にする気か!? 無茶すぎる!!』
《そうしなければ勝てない…彼女はそれが分かったから、この賭けに出たのでしょう》
『分析してんじゃねーよ!! あいつの衝動は殺戮だぞ!? 現に一回暴走を起こしている…! ここでまた暴走されたら、こっちが危ない…頼むから失敗するな!』
蒼空は固唾を呑んで見守る中、響は己の衝動と必死に戦っていた。
(――いや…くるしい…! たすけて…!)
だが、予想以上に襲い掛かる自身の衝動に響の精神が徐々に擦り切れ始める。
苦痛に歪んだ彼女の表情に、リカは星華の通信機に話しかける。
『愛衣、俺の事は隅々まで調べていたんだろ。だったら――俺が一番最初に出した曲、流せるか?』
〈え、ええ…! やります…!〉
『リカ?』
星華が疑問の声をかけるが、リカは聞いていない。
ただ、衝動に苦しむ響を見ながら心を落ち着かせようと深呼吸していた。
(響、お前は俺を信じてくれた。俺を助けてくれた)
ルピナス達に攫われ、鍵によって心が闇に囚われた時に聞こえた、響の言葉。
冷たくて、怖くて、自分が分からなくなった。だけど彼女が救ってくれた。真っ直ぐな思いで、温かな手を握って助けてくれた。
(だから、俺もお前を助ける…お前が好きと言ってくれた、この歌で)
数年前、あたしはコンサートの事故に巻き込まれ九死に一生を得た。
命は助かったが、体中大怪我を負った。最初は歩くのもままならなかったし、記憶喪失を起こして事故の記憶がすっぽり抜けていた。
だけど、しばらくしてあたしは思い出した。こうして助かったのは、人知れず戦ってくれた人がいたから。その人があたしに“命に代わる何か”をくれたから。その日からあたしはリハビリを頑張った。辛かったし、何度も諦めようとした。でも、これ乗り越えれば…日常に戻れれば、家族が、友達が笑顔になってくれる。そう信じて頑張って…無事に退院してあたしは家に帰ってこれた。
けど、現実は無慈悲だった。
あたしはあの事故で唯一の生還者。事故の被害者として国からはお金が支払われたものの、事件の首謀者と疑われて誹謗中傷を受けた。
学校ではクラスどころか全校生徒からの嫌がらせ。机に花を添えられたし、死ねとか消えろとか税金泥棒とか紙や文字を書かれ、机を遠くにまで放して先生すらあたしをいない者として扱われた。
家に帰れば知らない人からの罵声罵倒。毎日ガラスは割られるし、家に嫌がらせの電話、手紙、落書き…人殺し、化け物と自分だけでなく家族にまで罵られた。こんな生活が、FH社会になるまでずっと続いた。
本当は知っている。ルピナス達が人間に虐げられたって言う気持ち。だって、同じ人間でも平気で迫害するんだ。平気で、傷つけるんだ…!
あたしを助けてくれた人の想いに報いる為に、大切な人達の笑顔の為に頑張っただけなのに…!! 何で奴らは傷つける、何でヤツラハヤメナイ、ナンデヤツラノヲマモルノ!?
ソウダ。マモルヒツヨウナイ。コロス、コロスコロスミンナコロシテコロシテコロシテェ!!
《残酷な世界に 震えないで》
(この、うたは…!)
殺意の呪詛の中で聞こえて来た歌に、正気を取り戻す。
これはリカが…時夜陸がデビューする時に披露した曲。曲名は――【カノン】。
傷つく日々の中で、あたしを何度も癒してくれた歌。
《何かを捨て去ってもいい この瞬間に生きる》
真っ黒に塗り
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