海岸沿いに近い山の中腹。そこに、一つの大きな旅館が存在した。
建っている場所が場所なだけに見える景色は抜群。最近建てたおかげで設備も真新しく温泉だって用意されている。
さてさて。話を戻して、旅館前の入口にて何やら作業をする人物がいた。
「えーと、看板をここに置いて。それから…」
「くす玉って、ここにかけるのかな?」
「何で俺達がこんな事を…」
そう言いながら玄関前に今回のゲストの為の出迎え用ステージを組み立てているのは、KHでお馴染みの幼なじみコンビ。ソラ、カイリ、リクの三人である。
そんな三人の傍には、何故か一緒に出迎えの準備をしている作者であるナナがいた。(この作品では読みやすいようにローマ字でなくカタカタ表記にしています)
「そりゃあ、リラ様には普段からいろいろお世話になっているし、別の所で旅館作品まで書いてくれたんだから、こっちも何かしとかないと申し訳が立たないでしょう?」
「でも、それならどうしてあなたまで出るの? 普通に私達だけで書けばいいじゃない」
カイリの言う事は尤もだ。今回の話ではKHキャラやナナとリラ様のオリキャラだけで出演者は十分いるのに、わざわざ作者であるナナまで出る必要などないはずだ。
「この作品はあとがきテイストで送るからねー。本編設定関係なし! ギャグ満載でお届けしてこそ作品に親しみが持てると言うもの!」
(((この作品じゃ、あのドタバタがすぐ身近となるのか(ね)…)))
拳を握って意気揚々と宣言するナナに対し、あとがきでの事を思い出しながら三人は心底不安になる。
この気持ちを例えるのなら、勢いよく敵陣に乗り込んだらすでに第三者によってドンチャン騒ぎになっている状態に遭遇して置いてけぼりになってしまったのと同じ心境だろう。
「ちょっと、その例え酷くない!!?」
「まったく、騒がしいと思って様子を見に来れば…」
「早く準備しないと、彼らが来てしまいますよ?」
三人の考えにナナがツッコミを入れていると、玄関口から呆れ声と一緒に《リク=レプリカ》であるルキル(ただし、一年後の姿)と、こちらでのオリキャラであるウィドが現れる。
本編では一緒に暮らしている設定であるため、よく共に行動する事が多いのだ。
「二人とも、何でここに? 確かこの旅館の準備をしてた筈じゃ?」
「ええ。私も張り切って手伝っていたんですが、どう言う訳か全員から『手伝わなくていい』と言われてしまって…――仕方なく、ルキルと一緒に出迎えの方に回ったんです」
「ふーん、どうしてだろ? 人数は多い方が楽なのになー」
カイリの質問の答えにソラが疑問を口にしていると、隣にいたルキルの目に影が差した。
「お前…先生が手伝おうとした場所知ってるか? 厨房だぞ?」
「「「「ウィドはここで出迎えしてください」」」」
「何故でしょうか、私に対して失礼極まりない気がするんですが…?」
息の合った四人のセリフに、ウィドは複雑な表情を浮かべる。
だが、作品を読んでいる方はお分かりだろう…彼の作る料理は殺戮兵器。そんな彼が厨房に立ってしまえば、あとがき特有の「死なない設定」でも唯ではすまない。
「それにしても、二人とも随分と今回の話に乗り気なんだな。あとがきテイストな話なんだから、普通は攻撃して反抗する筈なのに」
リクの言う通り、ウィドとルキルは真面目キャラとツッコミ担当キャラである。そんな二人が、こんなドタバタあとがき延長のギャグ作品に出るとなると作者に攻撃を仕掛けてもおかしくない。
すると、何やらウィドとルキルの目つきが変わり始めるではないか。
「それが何だと言うんです…? 私は最近の本編では教師らしい一面もギャグの要素も出てない。しかも合同編に入ってからは仲間としての描写は全然ですよ!? ここで少しでも原点に戻って人気を集めなければ!!!」
「先生はまだいい方だ!! 俺なんて最終章も合わせた合同編でもセリフはまだ一つもないんだぞ!! ようやく来た出番を無駄にして堪るかぁぁぁ!!!」
そう言って拳を握るなり、二人の背後に激しい炎が燃え上がる。
まあ、現時点(【Re:開闢の宴 SPIRAL TALE/Chronice Key】『CROSS CAPTURE54』)までの話を見直せばそれも当然だろう。
「そうは言うけど、周りの声を聞かない程クウを憎んだり、【COM】でもロクな扱いされてなか「『空衝撃』」「『ダークファイガ』」」
リクが最後まで言い終わらない内に、真横を衝撃波と闇の気弾が通り過ぎた。
「「な・に・か、言いましたか(言ったか)?」」
「な、なんでもありませんっ!!?」
(((黒いな…)))
黒い笑みを浮かべながら剣先を突き付ける義兄弟に、残された三人は心
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