致命傷を負った凍矢に、全員が悲鳴を上げる。
混乱や恐怖が平和だったこの場を浸透する。誰もが凍矢や星華から距離を取るが、羽粋だけは涙目になって傍にしゃがんで揺さぶる。
羽粋『凍矢、凍矢ぁ!! しんじゃやだ、とうや…!』
その時、変化が起きる。
生徒1『お、おい…!』
生徒2『うそでしょ…!』
凍矢に付けられた傷が見る見るうちに癒えていく。
完全とはいかないがある程度塞がった所で、顔を歪めながら凍矢は起き上がった。
大勢から放たれる、驚愕の視線をその体に受けながら。
凍矢『――これで、満足ですか…!』
月『グラッセ、お前…!』
生徒3『生き返った!?』
生徒4『本当に、化け物…!?』
星華『あらあら、怯える必要はないわよ? だって…化け物は今の所、彼一人ですもの。数はあなた達が圧倒的に勝っている。排除するなら、今よ』
SM「ここでEロイス『歪んだ囁き』と『傲慢な理想』を2つ分使う。歪んだ囁きの効果でシーンの舞台となっている学園にいる非オーヴァード全員が“エフェクトを使った黒コート以外のオーヴァード”の感情を【N:迫害】に変更するぞ!」
ツバサ「非オーヴァードって、まさか羽粋とエリーも!?」
SM「当たり前じゃ」
三人「「「うわああああああ!!! ロクな事がなーーーい!!!」」」
男性『来るな、化け物!!』
女性『誰かあいつを追い出して!』
生徒『殺せ!』
月『お、おいお前ら!!』
人々が抱いてしまった恐れは瞬く間に拡散し、凍矢へと悪意の感情をぶつける。
その感情は、真実を知っていても対抗する術もないただの人間の心にも容赦なく浸透する。
エリー『い、いやぁ!! 翼、あいつをやっつけて!!』
翼『エリー!? 落ち着いて、凍矢はボクと同じオーヴァードだよ! 怖がる必要なんてどこにもないでしょ!?』
羽粋『あ、あぁあ…!』
SM「羽粋のロイスがタイタスになるか、その前に大勢の奴らに八つ裂きに殺されるか、どちらが先になるかのぅ?」
ムーン「グラッセの身も心をこれ以上傷つける訳にはいかねぇ! 俺も空みたく羽粋に当て身を喰らわせて《ディメンジョンゲート》で体育館から脱出出来るか!?」
GM「月、イージーでもエフェクトを使ったら、凍矢のように学園にいる大勢の人物から敵視されるがいいのかい?」
ムーン「構うか! 周りよりグラッセが最優先だ!」
グラッセ「ムーン…!」
SM「ふん、緊急時は無理であろう? 今の騒動の中で出来るとはとても思えんのぉ」
ムーン「くそっ!」
ツバサ「だったら、ボクが《ショート》を使って体育館の照明を全部壊して全員の目を引き付ける! その間なら逃げられるよね!」
SM「ふむ。壊すのは構わぬが、全部は無理だぞ」
ツバサ「ねえSM…『並列回路』って知ってる?」
SM「へ、並列回路?」
グラッセ「…何だったっけ?」
ツバサ「小学校の理科の授業で習う、並列つなぎ、直列つなぎを大人にした言い方かな。直列回路は各部位に流れてくる電流を同じ分だけ流す。並列回路は各部品にかかる電圧を均等に同じにする事で負荷を軽減させる。小学校卒業した人なら、電球と電線と電池を使って実験した事ある筈だよね」
クウ「あ〜…うっすらとそんな記憶が…」
ムーン「てかもう俺、小学校の授業とか思い出せないんだけど…」
SM「そ、それと照明を壊すのにどんな繋がりが」
ツバサ「あるよ。体育館の照明…ていうか、建物はもちろん、家庭の家で使う天井の照明って全部平行回路を使っているんだ。直列回路だと、全部に同じ電流を流すから燃費は掛かるしすぐ機械が駄目になる。けど、平行回路だと部品が違ってもそれぞれの電圧に調整出来るから長持ちする仕組みなんだ。ちなみに、直列回路を見つけたのはエジソンだけど、平行回路を見つけたのはまた別の人物って言われているよ」
SM「は、はぁ…?」
ツバサ「言ってみれば、照明は電線で全部繋がっている――そこに過度の電流を流せば、ぜーんぶ破壊出来るよね?」
SM「そ、そんな事が可能なわけが――!」
ツバサ「雷落ちたら、停電になる時あるよね? それは設備でも耐える事が出来ない過度な電圧がかかってしまった所為なんだ。あと、下手すればコンセントに繋いでいた機械も全部壊れたりするでしょ? 平行回路だから、直接過度な電流と電圧が機械に平等にかかって壊れる仕組みだよ。機械一つ壊せるくらいの電流を――雷並みの電流流すんだから、僕が出来ない道理はないよねー?」
SM「う、うぐぐぐぐ…!!!」
グラッセ「リアルノイマン…リアルノイマンがここにいますよ…!」
クウ「いやこれクトゥルフで言うと《言いくるめ》だから。ウィドがよくやってる奴だから」
ムーン「見慣れてるから、
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