眠るにはまだ早い時間帯。時間潰しの為に大きめのリビングに集まり、談笑をする者、これからの事を話す者、部屋で寝床を用意する人、明日の朝食の仕込みをする人と、それぞれ思い思いに過ごしている。
そんな中、クウとスピカはソファに座って寛いでいる。
「ふふ、みんな楽しそうね」
「そうだな…」
同意はするが、隣に座るクウの反応はどこか素っ気ない。
振り向くと、複雑な表情を浮かべて顔を合わせずに逸らしている。なかなか顔を向けてくれないクウに、スピカは不安げに話しかける。
「まだ、怒ってる?」
「そんなんじゃねえよ」
「…私と再会するの、嫌だった?」
「違う!」
やっとこちらを向いてくれたクウ。しかし、目を合わせると急に顔が赤くして、また視線を逸らす。
「まあ、その…何だ。すごく、綺麗になってるから…落ち着いた今、近づかれるとお前の顔、まともに見れないって言うか…!」
言ってて恥ずかしくなったのか、更に顔を真っ赤にしてスピカから背ける。
この本音を聞いて、曇っていたスピカの顔は一気に明るくなった。
「クウ…! 嬉しい、そんな事言ってくれるなんて!」
「だ、抱き着くなよっ!!」
思いっきり抱き着くと、やはりと言うかクウが怒鳴る。しかし、拒絶はしないようで文句は言うが手は出してこない。
その優しさを良い事に、スピカはクウの両頬を掴んで逃げようとする視線を無理やり合わせる。
まだ彼が子供だった頃の幼さは残っておらず、成人男性として…普通の人よりも整った顔つきになっている。体系だって、筋肉もついてがっしりしている。もうあの頃の自分達ではないけれど、それでもこうして触れ合える事が愛おしく感じる。
「クウも私より背が伸びててビックリしたわ。しかも、こんなに男前になって」
至近距離で笑いかけると、クウの顔がこれほどかっていう程赤く染まる。とうとう耐え切れずに力づくで振りほどこうとする。すると、スピカはわざと手を放す。いきなり放された事によって、クウはソファに倒れ込む事になってしまう。
起き上がろうとするが、その前にスピカがクウの上に覆いかぶさって動きを封じた。
「もっ、もういいだろ!? 他の奴らが見てる!!」
「だーめ。もうちょっと」
上機嫌で黒い前髪を弄るスピカ。それにより離れた所からドス黒いオーラを感じる。倒れた体制では見えないが、十中八九ウィドだろう。
スピカも気づいている筈なのに、弄る指を止めようとはしない。周りすら気にしない遠慮の無さ…ここまで考えた所で、クウは違和感を覚える。
「…スピカ」
「なに?」
名前を呼ぶと、スピカは小さく首を傾げて答える。
特におかしい所は何もない。何もないからこそ…芽生えた違和感が強くなる。
「なんか、あったのか?」
「なによ、急に」
問いかけに不機嫌になったのか、唇を尖らせる。
クウは確信する。スピカがここまで自分に甘えたくなるほどの何かがあったのだと。その何かは分からないが…気を紛らせたい程悲しい事か、辛い事か。聞いたとしても、スピカは決して口にはしないだろう。
だから、クウは動かせる左手でスピカの頭に手を置いて優しく撫でた。
「何もないならいいが、あんま抱え込むな」
急に頭を撫でられたからか、内心を見透かされたからか、幸せそうな顔をしていたスピカの頬が僅かに赤く染まった。
「もう…」
「ずるいです! 私も撫でてくださいー!」
「ボクもー!」
「うおっ!?」
二人のやり取りが羨ましくなったのか、レイアとツバサもクウに飛び掛かる。
更に二人の少女が混ざった事によってクウがもみくちゃにされていると、ブチンと何かが切れる音が聞こえた。
「いい加減に離れろーーーー!!!」
直後、ウィドの怒鳴り声と共にクウの頭に分厚い本が落下した。
騒動も一段落し、そろそろ寝る時刻に差し掛かる。
ここでオパールは一度皆を集めて、部屋割りの話をする。
「みんなの寝る場所なんだけどさ…1部屋に3人分しか用意出来なかったのよ」
「3人分?」
ソラが言葉を反芻すると、オパールは頷く。
「うん。あたしと父さんと母さん、それと客間が一つ。それぞれベッドが一つあるから、そこで二人で寝る事になって、もう一人は床に寝袋敷く事になる感じ」
「仕方ないわね」
普通の家より大きいとはいえ、宿泊施設ではないのだ。満足のいく設備でなくて当然だろう。
誰もが妥協する雰囲気になった所で、リクは彼女の話におかしい点がある事に気づく。
「ん…ちょっと待て? 4部屋しかないんだよな?」
「うん」
「俺達は何人いる?」
「13人」
「…1人余るよな?」
「だから、余った人はそこのソファで寝て頂戴。あ、掛け布団とかないからそのつ
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