クウが目覚めてから感じたのは、腹の上にある生温かい感覚だった。
(うん…なんだ…?)
ベット代わりに使う事になったソファの上でゴソゴソと身じろいで右手を動かす…が、意識を向けても動く事がない。
そう言えば使えないままだった。その事を思い出し、今度は左手で布団代わりに被っていたコートを引き寄せようとするが、重しでも上に乗っかっているのか引っかかる。
(なんか、あったかい…てか、乗ってる…?)
温もりは心地よいが、乗っかっている重さを一度感じてしまうと苦しくなってくる。
眠気も少しは覚めてしまい、乗っかっている何かを見る為に起き上がる。
カーテン越しから差し込む朝の光。鳥の囀りが聞こえている。そんな薄暗い部屋の中。
「すぅ…すぅ…」
自分の腹の上。そこに、身体にかけていたコートを握るように小さな少女が眠っていた。
「――へ?」
思わず目を擦り、もう一度確認する。姿、腹の上の重み、温もり…どうやら寝ぼけている訳ではないようだ。
改めて少女を見ると、ツバサより小さい…歳は10歳、あるいはそれ以下かもしれない。肩まである金髪の髪。服装は白いワンピースだが、まるであらゆる存在から守るように頭から足元まで白く薄いベールに覆われている。
「迷子…? いや、でもこの顔…どこかで」
「クウさん、朝ですよ」
「師匠、おはよー。眠れた?」
「クウ、起きた? 寝足りないなら私達の使ったベットで…」
そこで運悪く、レイア、ツバサ、スピカが身支度を済ませてリビングにやってくる。
嫌でも冷汗が背中に流れ落ちる。未だに目覚めない少女を腹に乗せたまま、クウはゆっくりと三人を見る。
レイアとツバサはきょとんをこちらを見ている。が、スピカだけは無表情でこちらを――正体不明の少女を見ていた。
「…その子、誰?」
「ま、待てスピカ!? 俺は何も知らない!! してない!!」
案の定誤解を受けて、必死に弁解を始める。段々空気が冷たくなっているのは絶対に気のせいではない。
「ん〜…」
大声を出した所為だろうか。少女は頭を擦るように、ゆっくりと起き上がる。
まだ眠いのか、コシコシと目を擦る。この場にいる誰もが少女に注目する中、向けられる視線を気にしてないのかじっとクウを見つめる。そのまま数秒間見つめ合うと、ふわりと柔らかな笑顔を浮かべる。
「パパ!」
けれど、笑顔とは裏腹に小さな口から放たれたのはとんでもない爆弾だった。
「ぱ、ぱ…?」
あまりの発言に、思わず目を見開いて固まってしまう。この世界には石化の魔法はないが、今のクウはまさに石と化している。
思考が停止する。だが、この人生で鍛えられた本能は殺気を感じ取っていた。
「シュタルカー・ヴィントォ!!!」
スピカの怒鳴り声と共に、鋭い刃となった緑色の風がクウへと襲い掛かる。前にビフロンスにて無轟と相対した時のように、反射神経だけで少女を左腕で抱えてソファを転げ落ちる。
風の刃はソファをスレスレを通り過ぎて壁に当たるが、魔法の障壁が直前で張られた事によって破壊は免れる。レイアかツバサのどちらかだろうが、確認は出来なかった。
目の前に…例えるなら、そう。鬼がいるから。
「スピカ待てマジで落ち着け!?」
「私は落ち着いているわええ落ち着いているわクウあなたどこで子供作ったの一言言ってくれてもいいじゃないその前にまずはリズ直伝の魔法であなたの首を切り落とさないとねぇ」
「落ち着いてない!? 全然全くこれっぽっちも落ち着いてませんよスピカさん!? って、え、あ? リズ? あっはい話を誤魔化す気は全くないから俺の言い分を聞いて!!」
有無を言わせない笑顔で、再び魔法を唱えるスピカ。弱体化しているって話だが、絶対嘘だ。クウは心の中で密かに思う。
殺される。それも理不尽な理由で。覚悟を決めて、強く目を瞑る。
「ママ! おねえちゃん!」
そんな殺伐とした雰囲気で少女の口から嬉しそうに飛び出した言葉は、ある種の救いだったかもしれない。
「マ、ママ…?」
「おねえ、ちゃん?」
スピカの動きが止まった事で、発動しかけていた魔力も収束する。
呆然と少女に言われた言葉を、スピカとレイアが反復する。だが、少女は腕の中でニコニコとスピカを見て笑うだけだ。
「おはよー、おねえちゃん。あ、ママもパパもおはよー」
「ど、どうなってんだ…?」
「まぁまぁぁぁ…?」
答えの代わりに、物凄く低い声が辺りに響く。そして再びクウに殺意が襲い掛かる。
反射神経を頼りにキーブレードを取り出して後ろに振るうと、ガキン! とぶつかる音が響く。
目の前を確認すると、やはりと言うべきだろう。いなくなったと思った筈の鬼がウィドに憑りついて刃を向けてい
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