ルキルは困惑していた。
互いの力量を知る為の模擬戦は夕方まで行い、拠点に戻り、食事も済ませて自由行動となった。そこまではいい。
問題は、声を掛けたい相手が作戦会議の場に参加していた事だ。
「まだ出発出来ない?」
「ええ。事前にあちらに、組織の方に私達の近況を書いた手紙を出してあるわ。だから返事が返ってくるまでは、この街で待機する事になるの」
「…大丈夫なのか、それ?」
「少なくとも、無断で行くよりは事前に伝えた方がいいでしょ? 私が一緒だとしても、場合によっては敵対しかねないから…誰かさんを見た瞬間にね」
「………」
ウィドの発した疑問に答えつつ、スピカは不安げなクウにジト目を送り付ける。
気まずい空気になるが、同じように参加しているアクアが話題を変える。
「あちらとこちらの世界に時間のずれがあって助かりましたね。でなければ、きっと間に合わなかったかもしれません」
「シルビアの力を封じたって事は、恐れているのと同定義。取り戻せば、こちらが有利に傾くはずよ」
「その為にも、姉さん達の所属する組織とやらに接触する必要があるのに、足止めとは…」
「仕方ないわ。とにかく、今私達が出来る事を纏めて――」
かれこれ30分は話し合っているのに、会議はまだまだ終わりそうにない。
ルキルは諦めて、玄関へと向かう。扉を開けて外に出ようとすると、音で気づいたのだろう。ウィドが振り向いて声をかけて来た。
「ルキル? どこに行くんですか?」
「…少し、散歩してくる」
「流石にこんな時間に一人は危険です。私も一緒に行きますよ」
「一人でも大丈夫だから! 先生は気にせず話をしててくれ!」
自分の事で、迷惑を掛けられない。そう思ったのだろう。ルキルは逃げる様に外に飛び出した。
扉が閉まる際に、ウィドが自分を呼ぶ声が聞こえた気がする。しかし、立ち止まる訳にもいかず、夜の街へと駆け出した。
「…はぁ、はぁ」
ルキルは街中を走り、広場のような所へたどり着く。途中ハートレスも出たが、防衛装置のおかげもあって難なく振り切れた。
戦いはしなかったが、全力で逃げたので疲れたのには変わりない。休憩も含めて、息を整えようと壁の所に凭れ掛かった。
冷たい空気。月と星だけが闇を照らす薄暗さ。静まり返った夜の空間に、ルキルに孤独が芽生える。
「結局、一人か…」
そう呟き、すぐに否定するように頭を振る。
こんなことしなくても、時間を潰す方法はいくらでもあった。けれど、あの場所から逃げたのは他らなぬ自分の意志だ。
自分の正体を知られた事で、近づきたいと思って、そうして距離は縮まった。けれど、どうやらまだまだらしい。
「共に居たいと言った言葉は、嘘じゃないのにな…」
手を広げ、キーブレードを取り出す。
僅かながらに残っていたシオンの想いと力を受け継いだ事で出に入れたもの。彼女が成し得られなかった事が出来るのに…まだ、打ち解けられない。
もう一度溜息を吐いて、ルキルはキーブレードを消す。
「いたいたー!」
「探したぞー、ルキル!」
その時、ツバサとソラの声が聞こえた。見ると、後を追ってきたのだろう。笑顔で近づいてくる。
「お前ら…何で」
「ルキルが心配だからに決まってるだろ?」
「そうだよ。父さんが強いって言っても、こんな時間に一人じゃ危険だよ。だから、ボク達が来たんだよ!」
「別に、来なくても俺は…」
本当は嬉しいのに、つい反対の事を言って遠ざけようとしてしまう。
けれど、二人はまったく気にしておらず、ソラはルキルの隣に座り込んだ。
「なあ、ルキル。折角だからさ、ルキルの事聞かせてよ」
「え?」
「だって俺、まだルキルの事そんなに知らないからさ。リクと同じ…えーと、『パプリカ』だっけ?」
「『レプリカ』だ! それは野菜だろ!」
「あー、それそれ! リクと同じって言うのは聞いたけどさー、でも一緒じゃないだろ?」
「そう、なのか…?」
「んー、少し前の卑屈さはリクと似てるけど、でもこう…うーん、何て言うんだろ…! どっか違うんだよなー。どこが違うかは、上手く言えないけど…!」
「言いたい事は分かるよ、ソラさん。…ね、少しお話しようよ。小さな事でも、ボク達にとってはそれで充分だから」
悩むソラに、ツバサもまた反対側に座って笑顔を見せる。
二人の優しさと興味に、ルキルは照れながらそっぽを向く。
「…少し、だけなら」
たったそれだけの言葉なのに、二人は嬉しそうに輝く満面の笑みを向けてくる。その純粋な輝きに、光みたいだと密かに思った。
「へー、ウィドって家事ダメダメなのかー」
「言っておくが、先生の前でそれを言うなよ? 丸一日説教コースだからな?」
「うっ
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