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親友としての思い


 俺達の出会いは、控えめに言っても最悪だった。
 ただでさえ、危険な奴なのに。スーちゃんが気に入ったのかべったりで。その上、師匠に修行までつけて貰う事が決まって。俺の親しい人達が彼によって取られそうになっていた。
 絶対に分かり合えない。隣り合って戦うなんて出来っこない。だから、師匠と一緒に修行していた時期は、先輩面を使って常にキツく当たっていた。
 …あの時の俺は、本当に馬鹿だった。今では黒歴史となったそれを思い出す度に、記憶を忘れたいって後悔するんだ。
 それは…彼が俺達の前からいなくなってからも。
 今こうして、八つ当たりしていても。

「なんでだよ…」

 目の前で殴られているクウを前に、ようやく別の言葉が紡がれる。

「なんで、俺に何も言わずに黙って出て行ったんだよ!!」

 罵る言葉でも、責める言葉でもない。純粋な思いがやっと口から出てきた。
 けれど、まだ怒りは収まらない。

「どれだけ辛かったか分かるか!? どれだけ悲しんだか知ってるか!?」

 ずっと、彼を責めた。自分を責めた。
 いなくなろうとした彼を止めたかった。いなくなった彼を探したかった。
 彼が生んだ後始末は大変だった。スーちゃんと一緒になって、居場所だって守った。

「俺は…!」

 裏切った彼に、怒りを感じている。これは、紛れもない俺の感情。
 その理由は、恨んでいる訳じゃない。悲しい訳でもない。
 ただただ、悔しいのだ。

「俺はぁ!! クーくんの『親友』だろぉっ!!」

 出会いは確かに最悪だった。
 でも、それを乗り越えて俺と彼…クーくんが得た絆は、かけがえのないモノだ。
 だからこそ――力になりたかった。何かを抱えていたら相談して欲しかった。組織から一緒に逃げる事だって出来たのに。どうして…一人で、黙って行ってしまったのか。理解が出来なかった。
 全ての思いを込めて、殴りかかった拳。それは顔面に直撃…する前に、受け止められてしまう。

「ッ…!」

「ははっ…やっと、言ってくれたな…その、あだ名…」

 今まで動こうとしなかったクウが、唯一動かせる左手で拳を受け止めていた。
 すぐに腕を引くが、がっちりと掴まれてしまって固定されている。

「安心、したよ…本当になぁ!!」

 笑ったかと思えば、今度は怒鳴るように叫んで体を引き寄せる。バランスを崩すレクトの頭に、クウの頭突きが決まった。

「ごふっ…!」

 頭に鈍い痛みと振動が直撃し、意識が朦朧となって倒れてしまう。
 視界がぶれる中、分かった事は二つ。一つは、自分とクウの立ち位置が入れ替わった事。
 もう一つは、倒れた自分に向かってクウがキーブレードを振り下ろしているという事だった。



「スズちゃんはドロドロの復讐劇をご所望らしいな…けど、残念だ。そんなのならねーさ」

 クロトスラルは返答し、そっと帽子を被りなおす。その隙間からは、先程までのイライラはなくなって自信ありげに笑っている。

「ふーん、どこにそんな信用があるのか聞かせて貰いたいね?」

「信用も何も、ちょーっと想像しただけで分かる事だろうが」

 やれやれを肩を竦ませるなり、先程スズノヨミが見ていた窓に視線を向ける。
 その先に、弟子である二人を思い浮かべて。

「あのバカ弟子どもの事だ――どうせ昔みたいに下らない事で言い合って、ボロボロになるまで喧嘩して…最後は仲直りするのがオチだ」



「…トドメ、刺さないの?」

「出来る訳ないだろ…そんな、泣きそうな顔して」

「は、はは…なに、言ってんのさ…」

「なんで…急に笑ってんだ…」

「君だって…同じじゃないか…!」

「お前みたいに…ボロボロ、泣いてる訳じゃねーよ…!」

「泣いてるのは…クーくんだろぉ…!」

 トドメを刺す気はなかったのだろう。キーブレードはレクトの顔のすぐ横に刺さっている。
 レクトは地面に横になり、クウはその上に跨って。そんな状態で、子供みたいにお互いに涙を流している。大の大人がこんな事して恥ずかしいのに、止められない。

「クーくんの、せいだ…!」

「…ああ」

「クーくんが…いけないんだ…!」

「わかってる…!」

「おれが、ないてるのも…けんかしたのも…こんな、いやなきもちも…ぜんぶ、ぜんぶぅ…!」

「レクト…ごめん…!」

 やっと聞けたクウからの謝罪に、レクトは泣きながら拳を作る。それは力なく、クウの胸に当てるようにぶつけた。

「おそいんだよぉ…ばかぁ…!! う、うう…うわああああああぁぁ!!」

 我慢の限界だった。堪えていた気持ちを、涙と共にぶつけた。
 怒りや悔しさはもうない。全てをぶつけた事で…やっと、クウを心の底から許せた気がした。



 どうにか喧嘩も一段落し、レクトも泣き止んで落ち着いた。
 二人し
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