第六演技「幽谷にて」
「あのー、マスター? ちょっとお聞きしたいんですが…」
まるで後半3回戦でのクーフーリンと同じような目で、玉藻の前はマスターに語り掛ける。
「何なんですか、どうして私が左側にいるんですぅ!?」
玉藻が配置されたのは、前衛の左側。今回はこの配置がギミック対象で、ボスで登場する山の翁によって最初にターゲット集中を付けられる。つまり、1回は必ず攻撃をされる場所となるのだ。
「今回は耐久型。誰が一番耐久あるかで、防御スキルを持つ玉藻ちゃんに任せる予定で」
「相手は早いターンで即死宝具使ってくるんですよ!? 私よりBBさんに任せればいいではありませんか! このカルデアには水着のBBさんもいらっしゃるんですから!」
今回のボスの山の翁は即死系宝具を使ってくる。体力があろうと、回避や無敵があろうと、ガッツが無ければ一発の攻撃で退場となる。
そんな即死を高確率で防ぐのが、ムーンキャンサークラス。このカルデアには配布で貰ったBB以外にも水着BBがいる。この二人を入れるだけで万全なのだが…マスターは口元を引きつらせ横目を向いて頬を掻く。
「それが――最初にBB達ムーンキャンサーを置いて挑戦したんだけど、初手でじいじがクリティカル出してBBちゃんが1ターンで退場しちゃって、しかもその後の水着BBに至っては最初の宝具の即死をモロに喰らって退場なっちゃって、結局ボロ負けしちゃって……死ににくいって話、嘘なの?」
「まさか幸運EXがリバウント起こしてませんよね? と言うか、さっきBBさんが廊下でいじけていたのはこれが原因ですか」
この控室に呼ばれて来る途中で、ダブルBBが廊下で一緒に体育座りしていた光景を思い出す。
マスターは玉藻に向かって頭を下げて両手を合わせる。
「もう特殊耐性は耐久で削っていくしかないから。キャストリアだけじゃなく、即死対策のスカディも置いてる。何かあったらすぐオーダーチェンジで控えの三蔵ちゃんと交換するから。だから玉藻ちゃんお願い! 戦ってくれ!」
「やるしか…ありませんのね…」
完全に耐久戦で挑む作戦のマスターに、玉藻は遠い目を浮かべて腹を括るのだった。
試合が始まる。迎え撃つのは大量のハサンと、特殊耐性が大量にある山の翁だ。
まともに攻撃をしても、ダメージは全く与えられない。とにかく玉藻・スカディ・キャストリアの3人はアーツチェインを組んで宝具による守りと回復に専念する。
そして部下のハサンを犠牲に強化した山の翁の即死宝具が玉藻に襲い掛かる。しかし、スカディの即死無効とキャストリアの耐粛清防御のバフで助かった。
「ま、まずは1回耐え切りましたわ…!」
ぜーぜーと肩で息をする玉藻。もちろん、回復とNPチャージは怠らない。怠ったら即座にやられるからだ。
「ちょ、早く即死無効の補助を!」
「そう焦るな」
相手のチャージが溜まるのを見て急かす玉藻に、スカディは宝具を行う。
次の即死宝具が襲い掛かるが、これも無傷でやり過ごす。
「2回目もどうにか…! まだ削れませんの!?」
「ぬぅん!」
未だにダメージが通らず、とにかくアーツチェインを繋げてNPを溜めまくる3人。
そして、山の翁の3回目の即死が玉藻に襲い掛かる。
「3回目も耐え切りました! それっ!」
「攻撃が段々通るようになってきた!」
相手の特殊耐性も剥がれ出し、ようやく攻撃も通り出す。
あちらは相変わらず即死を放つが、4回目となるとこちらも防御のタイミングが分かるようになる。
「これで、4回目! もう数えるのも嫌になってきましたわ!」
叫びつつも、耐え残る玉藻。
やがて全ての特殊耐性は剥がれ、普通に攻撃が通るように。ここでスカディが声をかける。
「玉藻、そろそろ交代を」
「いいえ、大丈夫です…それに、私気づきましたの」
顔を俯かせたまま、やけに真剣な声で呟き。
「マスターの皆様は、周回のお供、人権で必ずと言っていいほど孔明とかマーリンとかスカディとかキャストリアとかばかりを選んで……そう! 真のキャスターのサポートは誰か! この私の凄さを、この戦いで思い知らせてやりますわ! 私の命、取れるものなら取ってみやがりなさいましー!」
まるで何かに吹っ切れたように、山の翁に指を突き付ける玉藻。
いつもと違うこの様子に、キャストリアはスカディに目を向ける。
「…スカディ、あれは」
「うむ。生と死の狭間を見続けた事で、精神がハイになっていると言う奴だな」
それから数十ターン後――
「うーん、うーん…!」
「玉藻さーん、起きて下さーい。早く起きないと――センパイの唇、奪っちゃいますよ?」
へこたれている狐耳に、囁く小悪魔の声。
床に寝て
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