かつて、万能神に創られた無力な死の女神が収めていた一つの世界があった。
だけど、ある時女神はその世界に引きずり込まれた一人の騎士に奇跡を託し、死んでしまった。
女神のいない世界。彼女を守る騎士も眠りについた世界は、生と死の堺すらも曖昧な混沌に満ち溢れている。
そんな力を使わない手は、ない。
全ては、【あの方】の為に…。
トワイライトタウンの町の外れにある幽霊屋敷。
その屋敷の中にある真っ白な部屋に、一人の少女がベットで横になっていた。
彼女の名前はリズ・ヴァノイス。キーブレード使いの少女であり――存在しない者、ノーバディだ。
「まだ傷も痛い…何より、あんな事分かった後じゃ眠れないか…」
窓から洩れるオレンジの光を見ながら、寂しそうな表情でリズはポツリと呟く。
今の時刻は夜だが、この世界は年中夕日に照らされている。それでも、彼女が眠れないのには訳があった。
一つは数日前に親友に付けられた脇腹の傷が痛む事。そしてもう一つは、自分がノーバディである事だ。
肉体的ならまだ耐えれるが、今では精神も傷ついた状態。リズは全く寝つけず、軽く寝返りを打った。
その時、何処からか微かに鐘の音が聞こえてくる。すると、軽い眩暈が起こると共に目に映る風景が歪んでしまう。
「あ、あれ…? なんか、急に…ねむ――」
急激に襲い掛かる眠気に、リズの意識は眠りに堕ちて言った…。
どこまでも広がる広大な砂漠のワールド。その中を一人の青年が歩いていた。
「リズ…どこにいるんだよ…!!」
彼の名はウラノス。雷使いのトレジャーハンターで、とある世界でリズと知り合ったのをキッカケに仲間として共に旅をしていた。
だが数日前、目の前でリズが黒コートの男に攫われてしまい、彼女を探す為に今では姉達と協力して世界を転々としている。
しかし、幾ら探せどもリズは見つからず時間だけが経過する。何時までも変わらない現状に、思わず悔しそうに呟いた。
その瞬間、急に辺りが暗くなる。それと同時に鐘の音が鳴り響き、ウラノスの背後から巨大な闇が迫ってきた。
「な、何だこの闇は!?」
自分を呑み込もうと迫りくる闇に、ウラノスは必死になって逃げる。
だが、闇の勢いは止まらずに少しもせぬ内にウラノスを呑み込んでしまった。
「う、うわぁああああっ!!?」
闇に呑まれながらも手を伸ばすが空を切るだけに終わり、やがて全てが黒に染まった…。
同時刻―――彼らの世界とは別次元に存在する、一つのセカイ。
異空の回廊と呼ばれる世界と世界を結ぶ道を、ある四人の人物達が歩いていた。
目的はとある世界に行き、重要人物の安否を確認する為である。
「あれ…?」
その時、一人の少年が回廊から聞こえてくる鐘の音に足を止めて振り返る。
彼の名前はシャオ。今いる世界とは異なる世界から家出してきたキーブレード使いの少年だ。
「シャオ、どうした?」
シャオが振り返って見回していると、前を歩いていた青年が声をかける。
青年の名はクウ。彼もまた複雑な事情で異なる世界から今の世界へとやってきた。武器を使わない格闘家だが、今ではキーブレード使いとして目覚めている。
「あ、ううん! 何でもな――」
振り返りながらクウに近づこうとした直後、シャオの周りで突然空間が歪み出した。
「えええっ!?」
「シャオ!!」
黒い靄のような何かがシャオに纏わりつくのを見て、とっさにクウが手を伸ばして腕を掴む。
更に前を歩いていた二人の少年少女―――イオンとペルセフォネも異変に気付いて振り返ると、二人は黒い靄と共に歪んだ空間に巻き込まれていた。
「「うわあああっ!!?」」
「シャオ!!」
「クウさん!?」
イオンとペルセフォネが悲鳴を上げながら手を伸ばすが、二人の姿は空間と共に掻き消えてしまった。
眠っていた意識が、ゆっくりと浮上する。
そうしてリズが目を覚ますと、白い部屋ではなく一面真っ暗な崩れ去った神殿の様な場所で横になっていた。
「あれ…? 私あの部屋で寝てたはずなのに、どうしてこんな所に――?」
ベットではなく地面で寝ていた事に疑問を感じ、リズは起き上がる。
服についた土の汚れを軽く手で払っていると、ある事に気が付いた。
「傷口が痛くない…? それに寝たっきりだったのに身体も怠くないし…」
先日ムーンにつけられた筈の脇腹の傷はどう言う訳か痛みが起きず、身体の調子も好調だ。
さすがのリズも不思議そうに身体を見回していると、遠くで見覚えのある男が仰向けに倒れているのを見つけた。
「あれ…もしかして、ウラノス!?」
意識がなく地面に倒れている仲間に、リズはすぐさま駆け足で近づき、
「ウラノス
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