敵意を見せて動いていたにゃんタンは糸が切れたように動かず、シキもうめき声を上げて倒れたままだ。
そんな一人と一匹(?)を空は何の感情も浮かべず見下ろすと、そのまま背を向けた。
『…トドメは刺さないぜ、無駄な殺生になるからな』
そう空は呟き、作り出した大剣を再び液状の血に変換すると空気に溶かすように消していく。
こうして戦いが終わると、離れた場所から凍矢が走って近づいた。
『ようやく終わった…それより大丈夫ですか!?』
『おいおい、俺はブラム=ストーカーだぞ? 怪我してなんぼの力だろ…って、お前はそう言う事まだ知らないのか?』
『は、はい…恥ずかしながら』
『ま、その内知るだろ。そん時は忘れないように頭に叩き込んどき、なっ!』
馬鹿にしたように言うと、凍矢の額にデコピンを放つ。容赦なく叩かれた所為か、凍矢は思わず頭を押さえてよろめく。
そんな二人を月は横目でチラ見すると、シキに近付きその場でしゃがみこんだ。
『シキ、俺の話聞くか? 聞かないならこれ以上酷い目に遭うぞ?』
『それ脅しじゃない…分かった、ちゃんと聞くよ…』
『実は今俺達は――』
そうして、月はこれまでの説明を始める。
一方、翼も傷だらけの卯月の元にしゃがみこんだ。
『八代さん、狩谷さん達もすぐに来るから。それまで大人しくしてね?』
『アンタ…何でUGNと一緒に行動してるのよ? あいつら敵でしょ…!』
『ボクらブラックスカル団は、与えられた任務はどんな事をしてでも遂行するんでしょ? だからボクは同じように犯人を追ってるUGNの人と協力してるんだよ。それに月は友達だしね』
『あーもー…! そんなのバレたら、アタシの昇進にも響くじゃない…!』
怪我の所為か、苛立ちを露わにするだけで卯月は手を出そうとしない。そんな卯月に、翼は少しだけ踏み込んでみた。
『八代さん、実は狩谷さんの事好きなの?』
『ハァ!? なな、何でそうなるのよ!! 大体、レネゲイドビーイングのアンタに何が分かるのよ!!』
『あはは…ごめんごめん。でもさ、そんなに無理しないでよ。八代さんの頑張りは分かるけど、それで倒れたりいなくなったりしたら狩谷さん悲しむよ? もちろん、ボク達を含めたみんなもさ』
『…アンタなんかに、何が…』
その時、上書きされるように別のワーディングがその場に張られる。
『これは!?』
『いやはや、そのまま同時打ちしてくれれば良かったのに。先程のUGNとFHのようにさ』
凍矢が驚いていると、知らない少女のような声と共に離れた場所に空間が揺らぐ。
そこに現れたのは二人の黒コートの人物。背丈から判断するに一人は子供で、もう一人は大人のようで、その手にはトランクケースが握られている。
大人の方は四人とも見覚えがある。敵だと分かり、月は警戒態勢に入る。
『お前ら!』
『あまりにもしつこいから上手い具合に対立させたのに、結局邪魔される。醜い感情を露わにし潰れる瞬間が一番面白いって言うのに……君もそう思うだろ、七雲空?』
『お前、誰だ? どうして俺の名前を知っている?』
『“彼女”から聞かせて貰ったのさ。どうだい、“シューテングスター”。久々の再会は?』
そう言うと、子供は背の高い方へと振り向く。
『………』
しかし、声をかけられたにも関わらず、女性は何故か黙ったまま空を見ている。
クウ「GM。俺は彼女と顔見知りのようだが、何か感じる事とか出来るか?」
GM「現段階では出来ないかな。君が知るであろう人物は現在、《失われた隣人》の効果で認識出来ない状態だ」
ツバサ(《失われた隣人》…確か、オルクスのエネミーエフェクト…! オルクスが混じっているとなると支援は確実と言う事は今回の敵は攻撃型と支援型の両方を相手しなければいけないそうなると月と空とボクで一方を早急に倒す作戦で行くべきかいやもう片方はハヌマーン持ちだから行動値を上げるエフェクトで真っ先に攻撃されるだろうしそうなるとこの二人の対策は)
GM「……何だろうね、ツバサからノイマンに負けず劣らずの思考を感じるんだが…?」
『空さん、知り合いですか?』
『分からねぇ…くそ、お前誰だ?』
凍矢の問いに答えられず、睨みつける空。そんな二人の様子を見て、子供の方がせせり笑う。
『ははは…分からないか。まあだが、君もこれで満足しただろ? さあ、これ以上無駄な時間を過ごす訳にはいかない。さっさと準備に取り掛かろうじゃないか』
『ええ…“スター・キラー”』
『逃がすかぁ!!』
逃げようとする二人に、再び空が血を使って大剣を作りだす。
だが、武器を作り終えると同時に二人の姿はその場に溶け込むように掻き消えてしまった。
月「ど、どういう事だ!
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