黒須によって意識が遠ざかり、気が付くと全てが真っ暗の空間にいた。
だが、全てが黒に染まっている訳ではない。目の前には、赤い瞳を除けば全てが自分と瓜二つの人物が向かい合わせのように立っている。
直感する。彼が自分の中にいる、戦闘用人格だと。
『――あ』
『やっと会えたな、宿主様よ?』
『あ、あぁ…』
『状況はもう分かってるんだろ? 今の俺はあいつの操り人形だ…あの野郎を倒すどころか、道具と成り果てて何れはジャームと化す。そして…お前は俺の敵だ。洗脳がなかったとしても、お前は邪魔な存在なんだよ』
『そう、だな…』
『…何とも思わないのか、てめぇは? 全てを奪った俺を憎まないのかよ?』
『憎いとは思ってないよ…俺はあの時死んだんだ。存在自体が罪で処分された身だぞ? 誰も助けられなかった俺が生きて何になる? 名前も、存在も、力も、命も…俺が持っていた物全てが、もうあんたの物だ』
『ああ、そうだな…だったら一番障害となるてめぇを消し去ってやるよ宿主ぃ!!』
憎悪を剥き出しにし、赤い大剣を作り出して斬りかかる“空”。
己の身を斬り裂くであろう刃が、すぐそこまで迫り――防がれた。
自分の手の中で作られた、大鎌によって。
『エ――っ!?』
『ったく――それだけの力持っていながら…本来“俺”が持つべき力を奪っておいて、好きに生きろだぁ…!!』
『どうして、俺…!? 体が、力が勝手に…!?』
『それが“俺(戦闘用人格)”と言う力だ!! てめぇが生まれながらにして持っていた力、蓄積されてきた経験、今まで心に刻んだ記憶――それらを糧にしてレネゲイドの作用で生まれたのが俺なんだよ!!』
鍔迫り合いの状況で叫び、“空”が押し返そうとする。まだ心に迷いや葛藤があるのに、その意思とは反対に空の身体は大剣を弾き返そうとする。
『あの日、初めて俺が出て来れた時に俺達の人格は入れ替わった。だから俺はお前の持つ通常の力しか使えず、代わりにてめえが威力を発揮出来てしまってる。
てめえを消して、お前と同じ場所に立った…自由で好きに出来る、そう思ってた。なのに、満たされないんだよ!! どれだけ暴れても!! どれだけ戦っても!! どれだけ壊しても!! 完全に満たされない!!
お前は消えていいって言った…――なのに、どうして抗ってる? 忌むべき力で? 俺の持つべき力で? 消えたいならとっととやられろぉ!!』
『――消えたいのは、嘘じゃない。表に出たいとはもう思わない…だけど、だけど俺は怖いんだっ!! 俺が消えたら、みんなの…《大事な恋人》が人として生きた記憶まで消えてしまう!! だけど、俺が救えなかったのも事実で!! 分からない…どうすればいいか分からないんだ!!』
『人との繋がりなんて意味ねーよ!! どんなに近い存在だろうと、心を許した存在だろうと、どうせ最後には裏切られる!! あの月ってガキも結局俺を殺そうとした――それなら、いっそ何もかも失くせばいいだろ!!』
『…失くしたから、こんなにも痛いんだろ…満たされないんだろ…!! それだけ俺達にとって大事なモノなんだろ!? だったら裏切られてもいい、傷つけられてもいい!! 絶対にこの絆は、人としての心は手放さない!! それが――俺の進むべき道だぁ!!!』
クウ「GM、これらのRPから判定を〈白兵〉で行いたい。出来るか?」
GM「ふっ…海岸で殴り合うこの青春くさいシーン――大好物だっ!! 判定は決闘と言う事で〈白兵〉、ただし相手も本気を出すから難易度は12としよう」
クウ「是が非でも成功させる!!」
《決闘判定》
空12D+3→17 成功
ツバサ「さすがは師匠…戦闘用人格と浸食ボーナス合わさって素のダイスが普通に多いよ」
グラッセ「その分ジャーム化待ったなしだけど」
クウ「エフェクト使わなかっただけでも収穫だろうが」
『――ぁぁぁあああああっ!!』
『っ、ぐっ…!!』
一瞬で互いの武器が振るわれ、それぞれが交差する。
戦闘用人格としての力を本気で出した空に叶うはずもなく、“空”が膝を付いた。
『何で、この俺が…!!』
精神の世界とは言え、切り傷は深い。抵抗は出来ないだろう。
そんな“空”に、空は黙って傍に座り込んだ。
『んだよ…トドメ刺したいならやれよ…! 俺を消したいんだろ…!』
『俺が望むのは、支配でも浸食でもない――
――共存だ』
柔らかい笑みを浮かべ、ゆっくりと“空”に向かって手を差し出した。
『バカか、そんな甘ったれた誘いに乗るほど俺は…!!』
『乗るさ。だってお前は俺だろ? バカで、単純で、足を止めて投げやりになるけど――どんなに裏切られても誰かを信じたい、力になりたいって考えてしまう。俺はお前なん
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