その声の主はリクだった。だがフィオ達は決して驚きはしない。何故なら昨日、ソラやクロナから聞いていたからである。
「紫音、よく言った!カイリ、紫音の言う通りだぜ。お前の心が今にも泣きそうだ。だから早く戻ってこい!」
「うるさい!!どうせリクも、みんな私の事なんて見捨てるんだ………孤独なんだよ………私は……!」
「違う!!」
また何処からか声が聞こえる。ナミネだ。何時からここにいたんだよとは突っ込んでは行けない。
「カイリ、貴女は私とは違う!!だからみんながいてくれるんだよ!?それがわからない!?」
「カイリさん!!今ならまだ間に合います!!一緒に戻りましょう!!」
三人の必死の訴え。それにフィオ達は口出しする事が出来ない。いや、そもそもしては行けないのかもしれない。特に、リクとカイリは友達同士、彼らの間に割って入る事など出来る訳がない。
「……うるさい!!うるさいうるさい!!だまれぇ!!」
三人の訴えもヘルツには全く通じず、ヘルツは右手に持っているキーブレードをナミネに向かって投げた。それは見事に命中し、ナミネは倒れた。
「しまった!!」
リクがそう叫んだのも束の間、ナミネの身体がどんどん消えかかっていた。本体とノーバディが近づいたからだろうか。やがて完全に身体が消滅し、ヘルツの中に取り込まれた。
「やっと戻ってきた。私の半分が…………っ!?」
自分の半分であるナミネを自らに取り込んだ時、ヘルツの頭の中にかつての記憶が甦ってきた。
『脅かすなよカイリ。』
『そっちが勝手に驚いたんじゃない!』
一年前、三人で楽しく過ごし、外の世界を夢見ていたあの日々、ヘルツはやっと思い出す事が出来た。楽しかったあの頃の記憶が蘇り、震えるヘルツを見てディアが言った。
「確かに辛い事があったかもしれない、でも……楽しかった記憶だってあるはずだ。それが偽りだったとしても、人はそれを信じた時、本当の自分を見つめる事が出来る……」
「ディア……。」
ディアの言葉が何故か異常に心に深く刻まれた。
「大事なのは、偽りか本当かじゃなくて、それを信じれるか信じられないかだ。」
ディアの言葉にヘルツ以外のここにいる全員が頷いた。どれだけ苦しくても、辛くても、信じる事が何よりも大事なのだ。それをディアは彼から教わっていたからこそ今口に出来たのだ。
「現に、信頼がなければ、俺達はここにいないぞ?なぁ?」
ディアがみんなの顔を一通り見る。いずれも笑顔で頷いてくれた。そしてディアはヘルツの闇に支配された邪悪な目を見て言った。
「ずっとみんな、お前の事を信じている………!」
「………!!」
「その通り!!」
下の方からソラが上がってきた。ソラはヘルツの元に駆け寄り、彼女の手を取り、正面から目を見つめて言った。
「俺は何時でも、お前を信じてるから……だから、戻ってきてくれ………カイリ………!」
「ソラ………!」
その時、ヘルツの目から不意に涙が流れ、目の白黒部分の反転が元に戻った。闇が消えたのだろうか。誰もがその様子を見て喜んだその時、突如としてヘルツの頭に直接謎の声が響く。
《駄目だ…………その者は、お前を信じてなどいない……もしそれでも信ずるのなら、お前の精神を操るまで!!》
ヘルツの目が再び白黒反転し、しかも青色だったのが邪悪な金色に変化し、目の前にいるソラのを腹目掛けて攻撃した。
「ぐはっ……!」
「ソラ!!」
ソラの口から多少の血が飛び出した。ソラは腹を抱え、壁に倒れた。今の一撃で相当ダメージを負ってしまい、息切れまでしている事からかなり疲労している事がわかる。
「カイリ!!何故!?」
リクがヘルツに駆け寄り、問いかけるが、リクもヘルツの攻撃を受け、賢者アンセムのいる場所まで吹っ飛ばされた。
「ぐわぁ!!」
「リクさん!!っ!」
続けて紫音もヘルツの攻撃を受け、その場に倒れた。更に追い討ちを仕掛けるようにして攻撃を仕掛けるヘルツ。しかしその二度目の攻撃はフィオによって阻まれた。
「紫音は……僕が守る……!」
ほぼギリギリの所でヘルツの攻撃を弾き飛ばした。更にヒトミが双剣に闇のオーラを浴びせて攻撃する技、ダークブレイクを使って追い詰めようとするが、全て受け止められた。
「そんな!!っあ!!」
「ヒトミ!!」
ヒトミがヘルツの攻撃によって吹っ飛ばされた所をディアが受け止める。ディアがヒトミの顔を覗き込むようにして見てみると、ヒトミは気絶していた。
「くっ!」
「ヘルツ!一体どうしたのさ!?」
フィオがヘルツに向かって叫ぶと、ヘルツはその邪悪な金色くハイライトの無い目でフィオ達を見て言った。
「《私はもうすでにヘルツではない。》」
「「!?」」
「《この女の身体は乗っ取らせてもらった。》」
明らか
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