「これって……!」
私はその写真を手に取り、その中に写るベネトナシュの笑顔を見て思わず涙を落とした。その水滴は彼女だけを埋め尽くすように広がり、どんどん涙が溢れて止まらなくなってきた
「νは……ベネトナシュは本当はこれを望んでたんだ」
今なら分かる。ベネトナシュは本当は心の何処かではレイ君を信じている。だがその想いはその身を支配した復讐心に善の意思ごと破棄された、それがνと言う事である。善の意思故に不確かな存在であるため私の夢に幾度も現れ、みんなの前に姿を現した時も半透明だった。そんな彼女は自身の願いを何もできない自身に変わって叶えてもらおうと現れた。分かっている、それは一人の気持ちだと。だが私だってベネトナシュを止めたいのだ。そしてそれはみんなも同じだし、νが再び元に戻りレイ君とまた仲良く暮らす事を望んでいる。そう、一人の気持ちでもみんながそれを望んでいる事だってあるのだ。その証拠に、この写真を見て私が悲しんでいる
「うっ……ううっ……」
「クロナ、泣いているのかい?」
「アディア……ううっ……」
「……ねぇクロナ?僕達には彼女に何があったか分からない。だけど、少なくともレイ君と割れているって事だけは分かってる。だから僕達が今出来るのは悲しむ事じゃなくて、ベネトナシュを止めてνを安心させてあげる事じゃないかな?」
「アディア……」
「その通りだな」
アディアの意見に賛同するようにローグが言うと、辺りを調べつつ言った
「あいつの事情は今お前しか知らない、だがそれを俺は聞いたりしない。何故なら……これはクロナにしか解決出来ない事だからだ」
ローグの言うとおりだった。幾ら夢の世界の存在とは言えベネトナシュもνも全て私、クロナなのだ。だからこれは私にしか解決出来ない事で、みんなは私が消える事を承知の上で着いてきてくれた。自殺さえすればその時点で止められる事になり直接倒すのと特に大差無いのだが、それでは誰も喜ばない為私は全身全霊を持って戦う事にした。この城“クロッシングドリーム”――恐らく5年前に滅びた姫君クロナの城の成れの果て――を突き進み、彼女に善の意思を思い出させる為にも
「よしリーダー、そろそろ行こうぜ?こんな薄気味悪い部屋に留まってる気はねぇんだろ?」
「ダーク君……もちろんよ」
今のこの部屋はベネトナシュと言う悪意の塊の心その物、だがその中で唯一清潔だった写真が彼女が希望を捨てていないと言う証拠となり、今ここに僅かな光を見い出した
「行こう、みんな」
ベネトナシュの部屋を出て先程発見した階段を走りながら登っていくが、それはオリンポスコロシアムにあった物ほどではないがとても長く、道中で襲ってくる空中型ドリームイーターも幾つかいたが、聖獣は基本的に中に浮いているのでそれを利用し難なく倒し進んでいった
長い階段を登った先には入り口前から見上げた玉座がもうすぐそこにあり、それは所謂ゴールを示していた。そしてそこで待ち構える、仮面の少女
「……来たわね」
ベネトナシュは静かに玉座から立ち上がり、私達メンバーの中に彼がいないか見渡した
「……レイ君はどうしたの?」
「相棒は待つってよ。お前の帰りをな」
「ふーん、私とは戦えないって事?」
「いいえ、これはレイ様なりに正しい判断をされたと思います。クロナさんに貴女の事を任せ、自身はレイディアントガーデンの防衛に回りながら大切な人の帰りを待つ……それは大切に思っている人である貴女の為を思っての事なんです!」
「大切な人……ねぇ?」
怒りを含んだ声を挙げるとベネトナシュの左手にキーブレードではなく三メートルはありそうなほど長い赤色の剣が現れ、それを使って凪ぎ払ってきた。それを全員辛うじて避けたが、その一振りだけで階段が落とされてしまった
「だったら何故……だったら何故約束を果たさなかった!大切なら果たしに戻ってくるはずじゃない!私は裏切られたんだ……レイ君に、この世界に。だからもう、こんな世界は要らない」
「“世界が要らない”?」
ベネトナシュが唐突に放った言葉はこの場にいる全員を驚愕させるには充分であり、ベネトナシュはついにその真の計画と目的を暴露した
「私は憎しみに捕らわれて以来、私を裏切ったこの世界が憎かった。裏切った彼がいた世界、そう聞いただけで虫酸が走る。だからまずは手始めにこの夢の世界を破壊する」
「今回の計画が……手始めだっただと!?」
「そして破壊された夢の世界の住人の魂は消え、その肉体を新たなドリームイーターに変化させる。そして、“ある方”に与えられた力で私は現実にすら行く事が出来る!」
「ある方……?それに現実に行く力!?」
「そう、私はこの夢の世界を破壊し……その時に消した人々をドリームイーターに変化させて兵団を作り、その力で現
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