いよいよ待ちに待ったバレンタインデーの前日の夜、俺は不思議な夢を見ていた。そこは何処かの夕日に照らされた上空であり、なんと俺は空中に立っていた。真下には雲があり、上を見上げれば空がすぐそこにある。そんな不思議な空間に疑問を抱いていると、何処からともなく声がした
「あっ、いたいた!おーい!」
その声の主はすぐに姿を現した。なんと言うかよく分からない髪型をしているが、一応サイドテールなのだろう。それにこの少女は見た目よりも動きやすさを重視した服装を好むようで、その勇敢な顔つきからは女性特有の謙虚さは微塵も感じられなかった。それに驚いたのは髪と瞳の色が俺と全く同じと言う事だ。それも似ているでは済まないほどに
「やっと見つけたぜ、兄貴」
「兄貴……?俺が?」
「そう、あたしの兄貴だ。あたしは“マリム・ディアス”、宜しくな」
「同じ苗字……」
この少女、マリムは何故か俺と同じ苗字を持っている。しかも足をよく見てみると俺の物と同様のディアスの紋章があった。これはただの夢ではない、俺は心の何処かでそう感じていた
「まぁ、細かい事は気にすんな。あたしは兄貴に、バレンタイン&バースデープレゼントを渡しに来たんだぜ」
「えっ?」
「だってあたしら、誕生日バレンタインデーだろ?」
そう言えばそうだった。俺の誕生日は2/14、つまりバレンタインデー。我らがクロナからバレンタインチョコをもらう事で頭がいっぱいですっかり忘れていた。それにしても、まさかマリムまで同じとは。それに雰囲気もかなり自身と通じる所があり、もう似ていると言う所の話ではなくなってきた
「でも、夢にしたって何故君が?夢に出てくるならクロナの方が……」
「だってクロナは前回のバレンタイン記念に出たろ?だから今回はあたしが呼ばれた、それだけだ」
「メタい……」
「まぁそんな細かい事は気にすんな!それで、バレンタイン&バースデープレゼントだけどよ……兄貴、あたしはお前に勝負を申し込むぜ」
「勝負?」
「勝負っつっても初撃決着だぜ。あたしは見てみたいんだ。“もう一人”の力ってやつを」
そう言ってマリムは白い片手銃を取り出した。キーチェーンが着いていると言う事はフィオのようにキーブレードの姿を変えているのだろう。それに今のマリムの言葉で確信した。彼女は、別世界の自分自身だと言う事を
「……分かったよ、マリム。全力で行くよ!」
そうして俺もキーブレードを構え、マリムもまた戦闘態勢に入る
「へへっ、そう来なくちゃぁな!」
マリムがいつの間にか投げていたコインが中を三回ほど回り、そして地に落ちた。その瞬間が戦闘開始の合図であり、先手を文字通り撃ったのはマリムだった。片手銃である分こちらは不利である物の、彼女の弾を全て弾き近づいて行った
「ラグナロクRD!」
そして自身の得意技であるラグナロクRDを間近で放つが、やはりマリムもあの技で反撃してきた
「そう来ると思ってたぜ!ラグナロクRD!」
「やはり同じ技を!」
別世界の自分自身であるが故に自分と同じ技が使える事は百も承知だったが、まさか威力まで同等とは思わなかった。敵に回すと自分の技とはこうも厄介なのか
「さぁて、お楽しみはこれからだぜ!ストームショット!」
さらに疾風を纏った弾丸を放つ事でラグナロクRDの威力とスピードが増し、俺のラグナロクRDを撃ち抜きこちらに迫ってくるがそれを辛うじて避け、剣先に風の力を溜めながらマリムに向かって走り出した
「ストームラッシュ!」
「おっ、ストームショットとは違うのか?おらっ!」
俺のストームラッシュとマリムのストームショットと言う異なる世界の同じ技が相殺となり、俺は自身の聖獣“エルシオン”を呼び出した。しかしそれを見たマリムもまた案の定エルシオンを召喚してきた
「やっぱりそこも同じなのか……」
「へへっ、兄貴は流石だぜ……滅茶苦茶強ぇ!」
「フフッ、マリムもね」
「こんな楽しい闘い……終わらせたくねぇけど、この勝負!」
「最高だよマリム。こんなに素晴らしいプレゼントをありがとう!だけどさ……この勝負!」
「「俺(あたし)が勝つ!!」」
その言葉を同時に放つと共にお互いのエルシオンはぶつかり合いこれも相殺、そして俺達はお互いの今持てる最強の技を繰り出した
「秘技“インフィニティ・RD・チャージ”!!」
「友情“マスター・ストーム”ッ!!」
インフィニティ・RD・チャージも充分に強力な技だが、マリムのマスターストームの方が遥かに上だった。何せそのパワーが強すぎるのだ。恐らくこれまで戦った誰よりも圧倒的な迫力かつ破壊力であり、どんな台風でもこの風を越える事は出来ないだろう。間違いない、マリムは俺以上の風属性使いだ
マスターストームによってキーブレードは弾かれ、それは
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