数体のネオシャドウの相手をし始めてから何分が経過しただろうか。ダーク君達に加勢した事ですでにその数は一体、いよいよ全滅する事が出来る。そしてその一体は自分だけになった時を切っ掛けに全くと言って良いほど動かなくなり、まるで戦意を喪失したようにも見えた。そんなチャンスを当然ウェンヴィスは逃さず、逆手に持った得物を降り下ろす
「……っ、下がれ!」
途端、何かに気付いたホワイトの声が空を裂いた。何事かと立ち止まったウェンヴィスの頬をかするようにして舞い上がった白い光は残ったネオシャドウを包み、やがてその中から先程まで戦っていたものとは正反対の姿が視界に写る。全体的に白く、無機質なボディ。そして手の甲らしき場所からは無色の炎が燃えており、まるで以前自分達が目にしたアンチネスと対になっているようだった
「な、何スかこいつら!?」
「やつらは“ハスク”。文字通りの脱け殻……親しい言葉で言えば、アンチネスの反対だ!」
ギリギリの所で突然の事態を回避したウェンヴィスにホワイトが冷静に返答を返した。私達は、もしかしたら根本的な事を見落としていたのかもしれない。ハートレスの上位たるアンチネスがいるなら、どうしてその反対がいるかもしれないと気が付けなかったのだろう。今思えばネオシャドウ達はハートレスなのに統率が取れていた、だがその対の種族ならどうだろう。あの組織性には見覚えがあった。
「まさか……ノーバディ!」
「そうか、それであんな考えられた動きを!」
ハートレスが変化したのがアンチネスなら、ノーバディはハスク。Husk、即ち脱け殻。ノーバディとキッチリ同じ意味合いとなる。そんな事を知っていると言う事は、やはりホワイトは今回の件に関係していると言うことか。レジェンドマスターに続きハスクの登場、私にはとても無関係には思えない
「……お、おい?クロナ、一体何を!?」
――分からない、気が付けば駆け出していた。ホワイトならハスクの事を知っているようだが、敵かもしれない以上は迂闊に触れるべきではない。ならば私が先行する事で少しでも情報をみんなに託す、最悪の場合ここで自身が倒れても良い、そう思って左手にキーブレードを取った
「さぁね。ただ……
心がそうさせた、そう言うことにしておいて」
心が命じた事は、誰にも止められない。何だか便利な言葉だなと少し違った解釈をしつつ、ネオシャドウから変化したハスク“ダスクプルート”に千の刃サウザンドレイピアを浴びせる。しかしそれらは悉く回避され、その上ゴムのように伸びた手に腕を掴まれ、やつの身体に引き寄せられてしまった
「あぅっ!」
敵であるハスクに背を向け、取り押さえられてしまった。それだけではなくハスクの手が触れている所に尋常ではない痛みを覚え、それが物理ではない事は容易に読み取れた。恐らくは、毒に近い類いだろうか
「クロナちゃん、伏せて!」
その言葉通り唯一自由な頭を1つ分下げ、その上をフィオ君の放った弾丸が通りハスクの胸を撃ち抜いた。その際に私を捕らえていた腕から解放され、再び攻撃を仕掛ける。また捕まらないように数回攻めただけですぐに下がり、距離を取った
「ありがとうフィオ君!」
「どういたしまして。
それよりもあの敵、器用に相手を捕らえるだけじゃなく、触れてるだけでダメージを与えるなんて」
「その通り。やつには、一人では挑まない方がいい」
ホワイトの助言通り、たった一人でハスクに挑んでしまうと先程のように捕まりいずれは毒のようなもので倒れてしまうのがオチなので、出来る限り二人以上で戦うのが望ましいだろう。さっきだってフィオ君がいなければやられていたのだから、こう言うときにフィオ君の遠距離攻撃は有能だと思う
「さっきはクロナが捕まった事で隙が生まれたが、恐らく平常時ではあの防御を崩すのは難しいだろうな」
「白凰にしては正論だね、それっぽいよ。
あの回避能力……2メートルはありそうなのに大したものだよ」
黒凰の毒舌かつ適切な分析、まさに適格。ハスクの大きさは少なくとも2メートル30センチと言った所か。ただその身体自体は細く、多分女子中学生の方が太って見えるレベルである。形は変化前のネオシャドウをベースにしているようだが、あれが彫刻なら真っ先に折れているくらいの細さからあの異様な回避能力が出来上がるのだろう
「僕みたくパワーが高くても、クロナの攻撃速度さえかわすなら攻略は難しいね」
「じ、じゃあどうすんだよ!?」
自分の認識だが、腕を掴まれた時のその腕力も強かった。となればあの回避能力だけでなく純粋な攻撃力も高いのだろう。回避能力に相手を捕らえる技術、そして攻撃力。ハスクと言う未知の敵は私達の想像を遥かに越えていた。
―――この場を攻略するためには――
「ホワイト!」
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