「ジーク!!」
バックステップで咄嗟に距離をとったヴェイグが再び呼びかける。
だが今のジークはまるで野獣のように犬歯を剥き出しにし、クラウチングスタートの構えに入る。
「暴走に巻き込まれるのは御免なんでね。どっちが生き残るのか、はたまた全滅するのか高みの見物とさせてもらおうか」
そう言ってユリスは透明感のある薄いピンクの膜にジルバと入ると天高く浮上した。
「待て!!」
ヴェイグは浮上していくユリスに手を伸ばす。
「だから、お前が気にするべきなのは俺様じゃないだろ?」
「ジーク兄さん!正気に戻って!!」
ルルが叫ぶ。
すると、ジークはフォルスにより床を崩壊させながらルルへ向かって瞬時に距離を詰める。
「まずい!」
ヴェイグが気付いた時には既にジークはルルに向かって拳を振りかぶっていた。
「え……嘘……」
ルルが呟く。
だが次の瞬間、ジークの体が見えない力によって床に押し付けられる。
「グラビティ!!」
ジルバによって気絶させられていたブライトが何時の間に詠唱したのか拳銃をこちらに向けていた。
「生徒が暴走したら全力で止める!それが教師ってもんだろ!!」
まるで自分に言い聞かせるようにブライトは吠える。
(とは言ったものの、ジークのフォルスがこれ以上暴走すれば俺でも抑えられなくなる。どこまでもつか……)
ブライトの脳裏に初めてジークのフォルスが暴走した時のことが蘇る。
あの時は重力のフォルスで動きを止めようとしたが、重力場ごと破壊され足止めにもならなかった。
「がぁあああアアあああ!!!」
思い出に浸っている間にもジークがゆっくりと立ち上がる。
「こ、今度は……私も止める!」
ルルは震えながらも如意棒を構える。
「馬鹿野郎!!」
ブライトが怒号を散らすもジークはルルに飛び掛る。
が、ジークの眼前に突然鋼の壁が出現し視界を塞いだのと同時にジンが飛び掛るようにルルを抱きかかえ屋上を転がっていく。
鋼の壁はまるで紙のように簡単にジークに破られはしたがその一瞬の足止めが功を成した。
「ルル、今の兄さんに正面から挑もうとしちゃダメだ!粉々にされるぞ!」
「で、でも!」
ルルとジンは起き上がりながら依然暴走を続ける兄を見る。
「要は視界を塞げば時間を稼げるのね」
ヒルダが詠唱に入る。
「ヒルダ?何をするつもり?」
フィオナは恐る恐る後ろを振り返る。
だがヒルダは詠唱に入っており答えることはない。
その脇をマオが走っていく。
「ジーク、ごめんね」
ジークとマオの距離が縮まり、ジークは掌底破の構えに入る。
「フォルスフレイム!!」
突然マオの体が爆発するとジークとマオが爆炎に包まれる。
「ジーク!!」
フィオナが声を張り上げると爆炎の中から掌底破をまともにくらったマオが弾かれたように飛び出し地面を転がる。
暴走状態のジークに爆発など無意味であり、無傷であるがそれでも目くらましにはなった。
「濁流よ、すべてを吹き飛ばせ!」
そこへヒルダの詠唱が終わる。
「アクアストリーム!」
ジークの正面真下より濁流が噴射される。
しかしまるでジークをよけるかのように濁流は二股に裂ける。
それでも、ジークの視界を塞ぐことはできている。
その隙にジークの背後で力を溜めていたティトレイが地面に手をつく。
すると、立派な大樹がジークの足元からジークを巻き込むようにあっという間に成長し閉じ込めた。
「今だヴェイグ!!」
大樹はミシミシ音を立て分裂しそうになる。
それをティトレイはさらにツタを巻きつけることで阻止する。
「はぁああああ!!!」
ヴェイグは走りながら氷を纏った大剣を振り上げる。
「ちょっ……」
ジークが斬られると思ったフィオナは止めようとするがヴェイグは大樹を通り過ぎ様に一閃の太刀筋を入れた。
すると、巨大なクリスタルのような形をした氷が大樹を包み込んだ。
「これで身動きとれねぇだろ」
ティトレイは腰に手を当て結晶を見上げ、フィオナも胸を撫で下ろす。
「でも、この後どうするんですか?」
マオの回復をしながらアニーが問う。
すると、結晶に亀裂が入った。
「おいおい、頼むから割れないでくれよ〜?」
ティトレイの願いも虚しく、亀裂が結晶全体に入ると大樹諸共粉々に砕け散った。
「うぉおおおおお!!!!」
堅牢な封印を破ったジークが吠える。
「これでもダメなら、やはりやるしかないか……」
「そうですね」
ヴェイグが呟くとアニーが頷いた。
「やるって、何を……?」
フィオナは扇を開いたまま立ち尽くして疑問を口にした。
いや、雰囲気から見当はつく。
だが信じたくなかった。
「みんな!塔が傾いてる!!」
カインに言われて周囲に気を配ってみると塔が地震のよ
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME