「ジーク……」
瓦礫の山と化した塔をレムナントの中からフィオナが見下ろす傍らでルルは泣いていた。
逆にジンは窓から空を見上げていた。
「ねぇ、何だか空が明るくない?」
この地方は1年中雪が降っているため晴れる日はない。
そのため明るくなることはないため不審に思った一同は窓から空を見上げる。
すると、ピンクの球体が黒い霧を吸い込みながら発光していた。
「あれはさっきユリスが入ってた球体じゃない!?」
マオの言うとおり、間違いなくユリスの物だ。
その球体は一頻(ひとしき)り黒い霧を吸い込むと、亀裂が入り始めた。
「おいおい、どっかで見たぜ?このパターン」
ティトレイが冷や汗を流す。
球体に亀裂が一周入ると、卵から雛が孵るように球体がバラバラに飛び散った。
「おはよう、劣等種共」
球体の元主は殻を破って早々低音で挨拶をしてきた。
身長は190はあるかという巨漢に白い髪のオールバック、そして白い髭を生やしている。
今までは全裸か半裸であったが今は白いコートを着ている。
だが、周囲にピンクの目玉が二つ浮遊していることから彼がユリスだということは一目瞭然だった。
「今度はえらく成長したものね」
ヒルダが皮肉交じりに言うと、ユリスは視線を斜め下を旋回飛行しているレムナントに向ける。
「安心しろ、これが完全体だ。もうこれ以上は成長しねぇよ」
「ここからの声が聞こえた!?」
カインが驚愕するとユリスは鼻で笑った。
「さっき言ったはずだぜ?俺は108つのフォルスを持ってると。そのうちの1つを使えば造作もない」
「冗談にも程ってものがあんだろ……」
ブライトが呟くがユリスはおもむろにレムナントの下を指差す。
「俺にばっかり気をとられてねぇで下も見みてみろよ」
ユリスに言われて思わず全員下を見る。
すると、空に居て気付かなかったが瓦礫の山が小刻みに揺れており、地上では地震が起きているようだった。
だが地震にしては定期的に揺れが止み、次に振動する度にその揺れ幅は大きくなっていった。
まるで、地下から何かが出てこようとしているようだ。
「何故ここがネレグの塔と呼ばれているか知っているか?」
ユリスは淡々と続ける。
「聖獣王ゲオルギアスに従う6体の聖獣。だが、聖獣になれなかったやつがいた」
振動が激しくなるとついに瓦礫の山が地中の中から打ち上げられる。
「そいつは聖獣には似つかわしくない姿をしていたため迫害され、魔獣へと堕ちた」
ユリスが手を広げるのと同時に地下から巨大なカニの鋏(はさみ)のような物が二本出現した。
そして、左右合計8本の足で地上に出ると尻尾の先端についてる針のような物を天高く突き上げた。
「そう、それがこのネレグだ!」
まるで蠍(さそり)のような姿をした魔獣は雄叫びを上げる。
「この塔は魔獣へ変貌したネレグを封じるためにゲオルギアスが施した封印だったのさ!さすがにこればかりは聖獣でないかぎり解けねぇ!だが、聖獣王は考えなかった!そんなセオリーさえもぶっ壊すヒトが出現するなんてなぁ!!ハッハッハッハ!!間抜けなやつだぜ!!」
「よもや聖獣達への腹いせのためにここに拠点を構え、俺達をおびき出したというのか!?」
ユージーンが訪ねるとユリスは腕を組んだ。
「勿論それだけじゃねぇ。俺様のペットは確かに聖獣にはなれなかったが成り得る存在ではあった。つまり、思念を浄化することが聖獣にできるならその逆も可能ってわけだ!」
突然ネレグの尻尾部分が発光すると広範囲に向かって光が拡散した。
そして、ほんの数秒後には拡散した光とは反対に大量の黒い霧がユリスの元へと集まってきた。
「今の一瞬でこれだけ思念が増幅されたってこと!?」
カイトは霧にコックピッドの視界を遮断されないよう操縦しながら驚く。
「後はこのネレグにカレギア中を歩かせれば恐怖に怯えた心により更に思念は増加する!そうすればお前等はそのうち誰も信じられなくなる!人間共の同士討ちの始まりだぜぇ!!ハーハッハッハッハ!!!」
「そうはさせない」
ユリスの笑い声をヴェイグの冷静な一声が遮断する。
「あ?」
「俺達はここでお前を討つために仲間を犠牲にしたんだ!これ以上貴様の思い通りにはさせない!!」
ヴェイグが言い切るとユリスは驚いたように目を見開くが、直後に吹き出した。
「ハッハッハッハ!これ以上ってお前、さっきも言ったがお前が言ってもギャグにしかならねぇんだって!ヴェイグちゃんよぉ!!」
「カイト、ネレグに向かって急降下できるか?」
「心中するつもり?」
ヴェイグはユリスに構わず首を横に振る。
「すれすれの所で回避してくれればそれで良い。後は俺達でやる」
そう言ってヴェイグは背中の大剣に手をかける。
「分かった
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